ソフトに感じる時代

 『物欲日記』を書き始めてから、もう2週間目が経った。(そう、週末はお休みです。ごめんなさい。)読んでくれている方々は気付いているだろうか、私はトップページの看板下に小さい字でこんなことを書いている。


「気に入ったデザインってなかなか見つからない」よくそう思っていたのですが
それは、見た目のことではなく感性に訴えかけてくるストーリーを
それが背負っているかいないかで決まることが最近判りました。


いまさらなのだが、これが、このページに書くことの一貫したテーマだ。しかし、これまでこの言葉についてちゃんと説明をしたことはなかった…。
 「デザイナーとは、色や形を整える人のことだ」よくそう思われている。その通り、間違っていない。デザイナーとは、まずその辺りのバランス感覚に秀でていなければならない。しかし、世界一「デザイナー」という肩書きを簡単に手にできる、この日本で起こっていることは何だったのだろうか。それは「色や形しか整えていないもの」の氾濫だ。景気がどうと言われようと、年々加速度を増して進化し続ける科学・技術。それに同調して、これまた目まぐるしくデザインという名のパッケージングが生み出され続けている。そこには、モノが世に誕生する以前、母の「胎内」で長い時間を掛けて形成・育まれるはずの「何か」が見当たらない。これがその未熟さの所以なのだ。そして現在、その状況はそのままに、デザイナーの関心事は「性格の形成」に移行しつつある。つまり「ソフトウェア」のデザインである。
 今年の3月にモデルチェンジされた、日産『March』というクルマがある。パッと見、まずディズニーのキャラクターのような可愛いエクステリア(外観の)デザインが目に飛び込んでくるが、実は、今回のモデルチェンジで最も注目すべきところは、このクルマのエクステリアデザインでもインテリアデザインでもない。『インナー(内面的な)デザイン』である。ショウルームやウェブサイトでのプレゼンテーションを見ていると、最小回転半径に始まって、動力・安全・環境性能…と、クルマ屋さんにはお決まりの退屈な?説明が一通り終わった後、『インナーデザイン』に関する説明がある。『March』のそれは、「ただポケットに入れておくだけで、ドア・ロックの開け閉めから、エンジンのOn/Offまでしてくれる“気が利く”鍵」だったり、「届いたメールを読み上げてくれる、“おしゃべりな”カーステ」だったりする。そう、デザイナーの遺伝子操作によって、モノが我々のパートナーとして真摯なキャラクター(人格)を持って生まれ始めたのである。


March


『March』 (マーチ)
目玉がキョロキョロするTVコマーシャルが楽しかった3代目。このクルマのモデルチェンジサイクルは10年!なので、他の工業製品と違って満を期して生まれてきた感がありますね。

『インナーデザイン』
著者が、いまの時代の気分にあわせて考えた新語。モノの人格形成から考えた、内面のデザイン。

※都合によりアップが遅くなりました。ゴメンナサイ!


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