時は解決しない

 「コミュニケーションデザイン」だと思う。
 人と人はもちろん、人と物、人と事、物と物、物と事…、そのすべてにおいて、相互に影響し合い、いかにより良い関係性をデザインすることが出来るか。それを、私は「コミュニケーションデザイン」として捉え、いまの自分の中でのテーマにもなっている。つまり、その対局にある「誰かの一方的なエゴから生まれるデザイン」は、懐かしい過去の思い出でしかないのだ。いや、もちろん、それがアートのたぐいならば、話は別。これは「デザイン」の話なのである。
 少し前から「Interaction」(インタラクション)という言葉が、我々の間で流行っている。初めてこの言葉を耳にする人のために補足すると、それは、まさに「相互に影響し合う」を意味するもの。そんな時代の流れとリンクして、今では、このコンセプトに取り組んだデザイナーとその作品が多く現れて、業界を賑わせている。しかし、これがまだアートの次元を抜けきっていないことも確か。彼らの作品は、まだ、日常生活からは遠いところにあって、美しいが実験的な様相をしている。
 その一方で、ここ「楽天市場」のような、雑多なコミュニティは、むしろ、身近な「Interaction」空間を実現させていると言える。それは、時にして混沌さも隠せないが、そこには、デザイナーの造形的な意図などは通用しない。そこに集う人や物や事のコミュニケーション的意図が、個々に強力で集約的な流れを生みだし、その空間とデザインを成長させる。
 ところで、「時が解決してくれる」という表現を使う人がいる。しかし、時間は何も解決してくれない。たとえ、そのように感じたとしても、それは、誰かと誰かの記憶が互いに薄れたというだけ。言い方を変えれば、それは「コミュニケーションデザインの放置」にしか過ぎない。どちらにしても、問題は自らで解決するもの。だと、私は思っている。
 …とは言え、多忙ゆえに連絡が疎遠になっている皆さま、本当にごめんなさいね。

Maru-Bldg.
画像:丸ビルのエントランスに設けられたBloombergのインスタレーション


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