ガラス越しに

 昨日の『亡霊』は、重た~い話&長~い文章だったので、ちょっとここらで一休み。「ふぃ~っ。」土曜日だけど更新。「やっ!」
 旅の3日目、列車でローマからフィレンツェへ移動した時、2等で座席指定をしなかったら、なんと、どこの席も一杯!席を探すことは諦め、廊下の壁に仕込まれている補助椅子を開いて腰掛けた。すると、向かいのコンパートメントに座っていた、ちょっと恐そうな表情のご婦人が、ちらっとこっちをにらんだ後、ガラス越しのカーテンをシャーッと閉めた。「なんか、感じ悪~い。」私は、目の前の景色が黄色いカーテンだけになってしまって、とっても退屈だったので、仕方なく上半身をねじりながら、窓の外を眺めていた。
 あるとき、ふと視線を感じて振り向いてみると、さっきのコンパートメントの中で、ご婦人に連れられていた男の子が、さっきのカーテンの隙間から、ジーッとこちらを覗いている。なかなか目をそらさないので、私は声を出さずに、口まねで「ブォンジョルノ(こんにちは)」とか「チャオ!(やあ!)」と言ってみる。男の子はニコッと笑った後、カーテンの向こうへ引っ込む。そして、また顔を出す。誰かに真似してみせているようだ。それを何度か繰り返しているうちに、今度は、反対側から女の子が顔を出した。それからというもの、2人のテンションは上昇の一途で、シートの上で飛び跳ねたり、大声を出したりして大はしゃぎ。私は、さすがにヤバイと思って「しっー。」と合図を送った。しかし、それも真似されるだけ。ついに、男の子によって「ドラゴンボール」の人形が登場。女の子は、鼻やくちびるをガラスに押しつけて思いっきり変な顔をしてみせている。可愛い顔が台無し。でも、いつまで経っても続けている。とうとう、さっきのご婦人がひっぱたいて2人を叱って、再びカーテンが閉められる。「ほ~ら、ね。」しばし、沈黙…。しかし、その沈黙は、3分と続かない。叱られても一向に懲りない子供達のようだ。そんなことが2時間くらい続いて、すっかり、こちらは疲れてきた頃、ようやく列車は、フィレンツェS.M.N.駅のホームに滑り込んだ。

Roma-Firenze
写真:「クアンティ・アンニ・アイ?(何歳?)」「セッテ(7)」
とっても可愛いかった、この女の子も、いつか、逞しいイタリア女性に成長してしまうのだろうか…


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