天使の絵本

天使の絵本

『More』


ずっと、君の悲鳴(こえ)が聞こえていたから。









「More」










人類はすでに進化を終えていた。
3570年8月。
人類の最終進化宣言がされてから、3000と570年。
言語は統一され、科学は極みへと達し、
あらゆる病気を克服し、全ての不可思議は消えてなくなった。
そんな人類が最後に至った進化は

『求めない事』

精神面も、肉体面も、求めなくても手に入る。
全てのモノで、満たされる。
そこに例外はありえない。
だから、求める必要が無い。
最後の進化はそういう進化だった。

満たされるから、求めない。
求めないから、争わない。
世界から戦争は姿を消し、年号も意味の無いものになった。
在るままに在って、生きて、死ぬ。
それすらも終わりではなく、また新しい生の始まり。

そんな繰り返しの中でやってきた、3000と570年目。
世界中が祭りで浮かれるその瞬間も、僕はひとり考え続けていた。

わからない事があるんだ。
求めれば与えられるはずの世界で、そこに無いモノがあるんだ。
恋、愛、友情、努力。
どれでもない。
例えようの無い、この感じ。
冷たいのに痛いような、なのに愛おしいような。
言葉に出来ないこの感じ。

ずっと聞こえてるこの声を。
表す言葉がわからない。

他の誰にも聞こえない。
この声を、
表す言葉が僕は 『欲しい』。



考えて、つぐむ。
思い出して、言葉を飲み込んだ。
昔々、小学生の頃。
欲しいと言って捕まった。

進化が足りないと、不完全な人間だと呼ばれた。
誰も求めない世界で、僕は一人ぼっちだった。





だから。





君に会いたいと思った。
ずっと、君の悲鳴(こえ)が聞こえていたから。


だから、
もう少し待っていて欲しい。
小さな星の舟に乗って、今から君に会いに行こう。

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