天使の絵本

天使の絵本

KurukuruMawaru


『KurukuruMawaru』

たばこ屋の角を曲がればそこは不思議な国だった。
何て事を考えてしまうのは
やはり子供っぽいかしら。
たばこ屋の角を曲がって、その先のポストを通り過ぎてもまだ不思議な国はやってこない。
「やっぱり夢の様にはいかないものね。」
何て話をすると、隣の席から秋ちゃんが言う。
「あんたの妄想癖もそこまでいくと尊敬するわね。」
「ひどーい。」
妄想じゃないもの。
「せめて夢見がちと言って。」


そう、たぶん、この感じに名前を付けるとしたら夢なんだと思う。
眠っているのとは違う。
目指すべき目標とも違う。
時折というか、たまにというか、ふらっと現れては消える私にしか見えないそれは、きっと夢というのだ。
私にしか見えない非現実。
淡い甘い白昼夢。
でも…例え私にしか見えなかったとしても、私に知覚できたならそれは実在することになるんじゃないかしら。
今日もまた、目の前を二本足の兎が通り過ぎて行く。
ひらひらと手を振って挨拶をすると、左前の席の和樹君が笑った。他の皆には気付かれない様な小さな笑みだったけれど、私の頬は少し赤くなって兎が宙返りをした。


夢がおかしくなったのはそれからだった。
右から左へ。下から上へ。
四六時中、いつでも気が付くと私のそばにいるようになった。
クルクルクルクル回りながら、私の周りを通り過ぎて行く。
「どうしたの?」
と聞いてもダメ。
それはいつも通り無声映画の様に口をただぱくぱくさせる。
ダメようさぎさん
私読唇術なんて使えないもの。
そうしてまた兎は通り過ぎて行く。
後に続くのは速足な亀と、豚の貯金箱。

理科の高居先生が授業を始める。
月と地球と太陽のお話。

クルクル回る。
月と地球が。
クルクル回る。
太陽の回りを。
クルクル回る。
兎さんが、亀さんが。
クルクル回る。
私も一緒に?
誰の周りを?


なーんだ。
そうだったのか。
なんて。

クルクル回る。
クルクル回る。

あんまり兎さんが楽しそうに回るから、私もつられて回ってみることにした。



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