アイテムなぞ使ってんじゃねぇ!

アイテムなぞ使ってんじゃねぇ!

超家出:2



俺の名前は遠間光。18歳。

俺の夢はプロのベーシストになること!

高校でバンドを組んで、ギターを弾くのが楽しかった。

でも、長くは続かなかった。

3年になるとどうしても大学受験があって、バンドは解散しなきゃならなくなった。

俺はもっとギターを弾きたいと言う気持ちが強かった。

それと同時に、プロのギタリストを目指すという進路も浮かび上がってきた。

ギターに出会ったのはもう8年も前になる。

父さんに買ってもらったエレキギターをずっと弾いていて、楽しかった。

その頃はギターの話なんかできる友だちはいなかったから、一人で弾いていた。

好きなバンドの曲のソロを自分で弾いてみたりした。

高校に入ったら、ロック同好会というクラブがあった。そこで俺はバンドを組んだ。

ベーシストとして今まで、楽しい時間はあっという間に過ぎた。

俺は、プロになりたいと言うことを父さんに打ち明けた。

俺の父さんは警察で一番偉い――警視総監という役職に就いている――人間だ。

父さんは俺を警察官にさせたかったらしい。

確かに親の名もあるし、出世は簡単だろう。

だがそれは俺の望んでいる物ではない。

父さんは激怒して反対した。その反応があまりに浅はかであったため、親子喧嘩をした。

言い分にも決して納得できるような物ではなく、俺を苛立たせるには十分だった。

交渉は決裂した。

家を出た。

とりあえず今日は友だちの家に泊めてもらうことにした。

俺は、父さんが許してくれるまで絶対に帰らない。

金庫にあった金で一人暮らしも不可能ではない。

そしていざとなったら コレ ・・ に助けてもらおう。





友だちの灰道拓はバンドでドラムをやっていた。

身体は小柄だが、パワフルなバスドラを踏み連打の技術も高い。

親友の一人だ。

「いいんかよ?お前の父さんに従ってたほうが絶対楽だぜ?後々」

ベッドに寝転がり携帯をいじっている灰道が尋ねる。

「俺は警察官なんて仕事つく気はねーんだよ。お前だってプロになれると思うぜ?」

「俺はプロなんて全然考えなかったなぁ……」

ダラダラと会話を続ける中で光は部屋を見回していた。散らかっている様子はなく、整頓されている。

バンドの中ではそんな印象はうけなかったが実は几帳面なのかもしれない。

その後、俺たちは馬鹿な会話を続けていた。

――父さんの手が近くに来ていることも知らずに。




「あいつめ!!」

遠間玄悟郎は憤怒している。手が震え、空っぽになった金庫を見つめる。

「今度という今度は絶対にゆるさんぞ……わが息子といえども!」

遠間幸子は玄悟郎の妻であり、光の母であるが故に、この事態をどう理解していいかわからなかった。

我が子が家の金を盗み、家出した、という明白な事実を。

玄悟郎は外へ出た。

「どこへ行くんです?」

尋ねた妻に返答する。

「決まっているだろう。逮捕状を出す」

幸子は愕然とした。





「……でさ……あいつったら教室間違えてみんな大爆笑だったぜ!」

「はははっ!あいつでもそんなことやるんだな!」

担任の笑い話をしながら盛り上がる。

もう夜になった。飯をご馳走になるわけにはいかないからそこは自費――正確には家の金だが――で賄

った。

会話の途中、拓の母が部屋に入ってきた。

「こんにちは」

光は行儀良くしている。まあ、このくらいは当たり前だ。

「さっきね、光君のお父さんから電話が入ったのよ」

その言葉を聞いたとたん、光は顔をしかめる。

「僕はあの家に帰るつもりはないんです」

「そういうことじゃなくて」

間をおいて深刻な表情で話す友だちの母。

「光君のお父さんは警視総監なんでしょ?やっぱりけじめって言うのがあるのね……」

「え……それってどういうことですか?」

「光君に被害届を出したわ」

!何……?そこまでするのか……

「家の金庫からお金取ったでしょ?窃盗罪にあたるとか言ってたわ」

光はしばらく黙り込んだ後、荷物を肩に背負った。

「おばさん、お世話になりました」

俺はもう犯罪者扱いだ。そういうやつなんだ、父さんっていうのは。

正義感あふれる男なんだ。俺は違う。少なくとも。

父さんの血は半分流れているけど。俺は卑怯者なんだ。

逆に言えば捕まらなければいいんだ。

捕まればベーシストになんてなれない。当たり前だ。

俺はこれを宣戦布告と受け取った!

このまま拓の家にいれば迷惑をかける。

「待てよ」

拓は机からワイヤがついた腕につける何かを光に渡した。

「逃げるんだろ?コレがあれば建物の窓から外に逃げられる」

多分アクロバットの用品だが、使えるかもしれない。

腕につけるものようだ。いつでも出せるように腕につけた。

「……サンキュ」

俺は家を出た。

少なくともこの市内から逃げ出さないと必ず捕まる。

今日の電車で県外に出ることも可能なはずだ。

俺は絶対に捕まらない。父さんのしがらみから逃れるんだ。

仲間たちに協力してもらおう。

オンラインゲームの「ディアーズ」で。

ディアーズはコミュニティを中心としたオンラインゲームサイト。

登録してるやつらとチャットをしたり日記を書けたりする。

そこで俺はたくさんの交友を広げた。

少なくとも120人は「友だちリスト」に乗ってるはずだ。

漫画喫茶で日記に書き込んだ。

――5月8日。僕は家出をします。住んでいる場所は問わない。協力者求む。








5分後、警察が拓の家に来た。


つづく

© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: