海に魅かれたワケ

sakana


私の出身は群馬県。
言わずと知れた、海なし県。
親戚のお家がうちが近いとか、よく海に行ったとか、そういうのでもない。
夏になったらお父さんが、毎年1度や2度は
大洗の海や新潟の海に遊びに連れて行ってくれた、ごくありふれた環境に居た。

話は、私が幼稚園の頃にさかのぼる。

家には熱帯魚の沢山入った水槽があり、その頃は良く分からなかったが、海水魚や、淡水魚、など色々居たらしい。
小さい時から当たり前のように魚を眺めて暮していたから、その水槽の魚達を眺めながら、
小さいながらにその水の中に入りたい、魚になりたい。なんて、かんがえて、居たのだと思う。

自分でも、中学生の時には淡水魚のグッピーやネオンテトラ、沼えびなんかをちゃんと自分の部屋で世話していたほど。

水の中は本当に落ち着く。

ダイビングを初めて経験したのは、中学2年の時。

母が伊豆に体験ダイビングに連れて行ってくれたのが初ダイブだった。
あの時は市内のダイビングショップのツアーに参加したのだが、母の友人がやってるというだけで、わたしにも、と、声がかかったのだ。

群馬からだと片道3時間以上かかる道のり。全然ダイビングの事も知らなければ、海にもぐるというものがあるなんて、全然知らなかった。
もうただ、母に付いて行く。そういう感覚でやった、ダイビング。

耳が抜けなくてそれ以上は潜れない・・・

ドンドン先を行く母に付いていけず、(母も初めてだったのに)ちょっとだけ、魚を見た!だけでも、私は大満足だった。
それよりも、なんとなく、こういう経験をさせてくれたダイビングのイントラの人がかっこよく見えて、
「大人になったら私もこういうことしたいな~」とぼんやり彼の仕事ぶりを見ていた気がする。

そんな経験から、だんだんと、海や海に住むイルカや魚に興味が向くようになる。

高校時代はイルカが大好きで「イルカになるのが夢・・・」なんて、よく友達に話していたのを覚えている。
じゃあ何で、あんた、理数科に居るのよ。。。って・・・。自分で自分に突っ込んでやりたいくらい、思いっきり理数じゃない頭だったのに。

ここらへんの、選択でも1クラスしかない、理数科コースへの道は「人と同じじゃなくて、ちょっと変わったところへ・・・」なんていう、安易な考えが私をこうさせてしまったのだけど。今となっちゃあ、後悔なし!
ここで、出会った友と、3年間担任をしてくれた先生に出会えたし、理系でない私の頭の中も、ちょっとは違うところで
役立ったというのもあるから。。。かといって、文系でも英文系でもないけれど・・・

で、皆が高校3年の時に大学進学で頭を悩ませて居る間、私は「イルカイルカ~~♪海大好き~~~」なんて、
小躍りしながら、偶然見つけた、ダイビングの専門学校への道をさっさと決め、のほほんと、暮していたのだ。
この辺も、もっと違う環境を自分が作れたら、もっと色々と経験できたのかと思うけれど。その辺はちょこっと後悔。でも、そうさせてくれた両親にはかなり感謝。そこでの2年の生活も、私にとってはかなり重要な部分でもあったから、やっぱり、後悔なし!

で。
東京へ来てオートロック付きのマンションでの一人暮し。学校では、大好きな事ばっかり勉強させてくれるから、もう楽しかったなあ。友達とも色んなところへいけたし、初めての海外も自分で働いたバイト代でハワイに2度行って、潜ったりした。
何の苦労もなく、のほほんと暮していたその裏で、父の気持ちが今となっては、痛いほどに分かり、感謝せずには居られない・・・。それはさておき・・


ある時、私は自分って何。。。にぶつかった・・・。
いや、よくそういうことは考えていた。前から。でもこのときは、ちょっと
大きな壁だったかも。
たいがい、何かあった時で、心の奥のほうがもう我慢しきれなくて、自分でも、良く分からない状態に陥る。
本当に、周りの世界が白黒のモノクロ画像で移るんだから、
おかしな精神状態だった。
え。。。
それ以来1度きり、そういうことがあっただけで、今はそんなことはないから、心配なく。。


そういう時には、小さい時にさかのぼる。母が居て、父が居て、水槽の魚を眺める私。
いつも穏やかで、母が作ってくれた食事があって、父と日曜ごとに出かけて。兄と喧嘩して、泣いて・・・

だんだん、母がそばに居ない事が多くなって、父も帰りが遅くなって、兄は何処かに出かけていてほとんどうちに居なくて。
でも、私はお家で魚を見ながらみんなの帰るのを待っている。

心のどこかに穴が開いたような生活。
周りの友達はすごく私の支えてなってくれていたから、自分が寂しいとはちっとも思っていなかった。
小さいながらに、私は何処か満たされない思いを抱え、それにも気がつかず、育っていったんだと思う。

何処かに、愛情がないかと、いつも心のどこかで探していたんじゃないだろうか・・・と今になって、思う。

海やイルカへの気持ちは、満たされない自分への気持ちがそこなら、安心できる場所として、あったから。

そして、あの時。
「ドウシテ、私、東京まで来て、海に潜ってるんダロウ・・・。」


今までずっと好きな事していたはずなのに、何処かぽかんと、穴が開いた。

憧れの海にも潜ってるし、人に感動を与えたい!そういう気持ちで毎日ちゃんと勉強もしてるし、友達だって楽しいし、バイトだってスポーツジムで人と会話したりするのが面白くて、なにも問題ないはず。

でも、心が寂しかった。
自分に聞いたらその答えが帰って来て、その想いはフッと突然現れる。
長く付き合っていた彼も居たけれど、彼でも埋められないなにか。

あ。私、さみしかったんだ。 ちゃんと気がついたときに、海がドウシテすきなのか、海に還りたいなんて
思うのか、イルカに興味があるのか、ドンドン分かってきて、自分でも面白いように、モノクロの世界がカラーに変わっていった。

母のような海。
潜ると安心出来て、何処か、癒される。
その海を見ていると、幼い頃、家族で行ったあの海を思い出す。
優しく、大きく包んでくれる、あの海は、
母の愛情そのもの、のような気がしていた。

そんな自分に気がつき、気持ちが変わった。

母を求めるだけの、海との付き合いはもう止めて、
心の中の自分の声を聞く、海との付き合い。

もう始めて海に潜った日のように、母に追いつかなくて、寂しく思ったりはしない。

今では私が大事な人の海になれたから。




つづく・・










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