雫の水音

雫の水音

13章~船旅~


寝付けなかった・・・

シャララァン

部屋の外から音楽が聞こえてくる

翔は音に誘われるように外に出た。

「おや?翔君起きたのか?」
シェイクは船先で海を見つけながらいった

「シェイクさんも起きてたんですね。」

「こんな静かな満月の夜。波の音。素晴らしい曲が作れそうだと思ってね」

「ふ~ん。そうですか」
翔は興味がなさそうに言った

「ところで、シェイクさんは異世界から来たみたいですが
どうやって来たんですか?」

「色々な理由があってね。旅って所かな。君達とは違って自由に旅が出来る。」

「自分の意思で異世界を旅できるんですか?」
翔はメルディアの魔法を思い出した

「僕には、詠唱なんかを使った魔法はできないんだ。
ただ、全ての者が出来る魔法を人よりも使えて
コントロール出来るだけだ。」

「よく分からないんですけど」
翔は独自の世界に入りつつあるシェイクに
変な目を向けた

「音を使った魔法さ。
歌を歌えば、励まされるし、悲しくなる。
うるさい騒音を聞けば、気分が悪くなる。
悪口を言えば、相手の気分を悪く出来る。
魔法の中でも初歩過ぎて忘れられているのさ。」

「音ですか。シェイクさんって意外とすごい人なのかも」

「ただの、音楽家だよ。」
シェイクは笑いながら言った

「あと1つ聞いていいですか?」

「構わないよ」

「シェイクさんは、世界を旅してるようですけど
何のためにこの世界に来たんですか?
ただの音楽家には見えないし」

「いやー。鋭いね翔君は。まぁ、簡単に言うと
世界の奏でる音を記録しに来たのさ。
僕は、吟遊詩人もやってるんだよ。」

「はぁ~あ」
翔はおもわず欠伸をしてしまった

「今日はもう寝るか」
シェイクは笑いながら言った



~レーヤルネイト~

「アーニー様、炎神の山で奇妙なことが起こったと
火と土の国【サラマカラン】から情報が…」

「アーニー様、水の国【リュビース】でも
異変が…」

「皆、情報を細かく纏めて、共通する部分を探してちょうだい!」
アーニーは資料の中で声を張り上げた

〈竜…2500年前に滅びたとされている…
目撃情報は私を含め5件・・・〉
アーニーは腕の傷を見つめていた

ガチャガチャ

〈地震?!〉

ドサァー
山積みにされた資料がアーニーに倒れた。

「大丈夫ですか?アーニー様」
執事のレイモンドがアーニーを庇った

「ありがとう、レイモンド。私なら大丈夫です。
それにしても、地震なんて」



翔たちは船に乗って3日が過ぎた。
遥か前方から、一筋の光が立ち昇っていた。

「あれは・・・?」
翔は呟いた。

風がシェイクの長い髪を靡かせている。
「あそこが水の国【リビュース】だよ。」

「もう着くでしゅか?」
ナナムーはカモメとじゃれながら言った。

「確かに、あと4日は掛かるんじゃ」

「そうだよ。近くて遠いそれがリビュース…
この国は、中立国で戦争を好まない国なんだ。
ただ、国は分裂し大陸を跨いで北にも大きな町がある。
【スノーリアス】って呼ばれてるんだけどね。
ただ、この国は外から攻撃がされた事がないんだよ。
まず、海の真ん中にある。
この世界には、戦闘機などは使われないからね。
船からしか攻撃できないわけさ。
ただ、その船も、複雑に絡み合う海流の影響で
まともに進めない。一箇所は除いてね。
もっぱら、内部でテロなんかが起きるぐらいらしいよ」
シェイクの頭にカモメがちょこんと座った。

「その1箇所使えば、4日も掛からないだろ。」

「それが、毎日、場所が変わるんだよ。
だから7日ぐらいで着くんだよ。まぁ遅くなるときも
早くなる時もあるんだけどね。」

「へぇ~。そうなんでしゅか」

「まぁ、リビュースに着いてから、色々と調べてみるといい。」

「ほう、兄さんそんな事も知っているのか、
兄さんには感心しっぱなしだ。
只者じゃないだろ~。」
船長のクラークスが話しかけた。
まだ30歳で3日の間で仲良くなった人だ。

「クラークスさん、お褒めの言葉ありがとうございます。」
シェイクはお辞儀をした。

その時、カモメが一斉に翼を広げ
船から飛び立った。

「おかしいですね。クラークスさん」

「カモメさん達何処かに、行ったでしゅ。」
ナナムーは残念そうに言った。

「穏やかじゃね-な。こりゃ、何か来るな。」
クラークスは煙草を吹かしながらぼやいた。

「嵐が来るんですか?」
翔は尋ねた

「はっ、坊主!そんな生温いもんじゃねーぞ。
海の化け物だ!」
クラークスは胸を張って笑いながら言った

「そうですね、クラークスさん。風の動き自体は、嵐の気配はない
しかし、カモメが一斉に飛び立った事を考えると
何かが襲ってくる可能性が高い」

「わぁーすごいでしゅ!」
ナナムーは船から顔を乗り出していた。

「何がすごいんだ?ナナムー」
翔はナナムーと一緒に船から顔を出して下を見た

「ほらー。あそこでしゅ。」

シェイク、クラークスも一緒に乗り出した。

「何にも見えないぞ。小僧」

「何も気配がないです… ?!」
シェイクが何かに気づいたようだ。

「僕たちは此処で御仕舞いかもしれないですよ。
今、船のある場所は、巨大な魔物の上みたいです。」

バシャーン!!!

巨大な尻尾が現れて海面を激しく叩き付けた。

「カァー!見たことないぞ!こんな魔物」

「こんな魔物に武器は効かない!ナナムー、魔法だ!」
翔は、今使える最高の技を放つ準備をしはじめた

「ぼきゅもいくでしゅ!」

『劫火でこの世を燃え尽きんとす 天を覆いつくす槍炎(そうえん)よ
我が敵に降り注がん フレアニングスピア』
翔の周りを赤く光る陣が現れ周りを赤く照らし
幾本もの火柱が、海から少し出ている背中部分に
命中した。

「翔くん、スゴーイ!」
シェイクがからかいを混ぜながら言った。

だが、魔物には焦げ後一つすら残っていなかった。

『深遠、奥深くからいでし、恐怖よ。しゅべてを飲み込み喰らい尽くせ
フィアーダークネス』

ナナムーの全身から怨霊の顔をした影が出てきて
魔物に喰らい付いたが、変化は見られなかった。」

「そんなぁ…もう疲れたでしゅ…」
2人とも最大の魔法を使って
一気に疲労した。


その時、背後から気配が…

「あかんな~。飯の邪魔したら。どいつや?」
船の乗客の一人、真紅の髪をしたレイドが出てきた。

「レイドか…魔物が現れたんだ」
クラークスがタバコを吹かしながらいった

レイドは魔物の巨大な背中を見て
手に持っている旗を片手で回した。

「あいつか、相手にとって不足はねーな」
船の床を蹴り上げ、驚異的な脚力で
海に乗り出した。

「不足はねーなって、レイドさん大丈夫なんですか?しかも旗で…」
翔は、何故、旗で繰り出した意味が分からなかった。

それを察知したのか、シェイクが説明をしてくれた。
「僕も始めてみるが、旗が武器なんだろう。
布の硬さを自由に変えられるんだよ。
魔力の宿った布で作られた旗は、魔力を流すことで
一瞬にして凄い強度になる。」

シェイクが説明している間に
レイドは、魔物の背中に乗った、
そして、背中でジャンプをすると
風に波打っていた旗の動きが止まった。
その旗を斧を振りかざすように背中に切りつけた

ブシュッ!

魔物の背中に切れ目が入り
血が船まで飛び散った。
魔物は、初めて海上に顔を出した
そして、レイドを丸呑みした。

「レイドさん!!」
翔は体を船から乗り出して叫んだ。

「呼んだか?」
声と共に、魔物の顔から布を円錐状にして巻いて固めた旗が突き出て
布が一瞬で開いて魔物の顔を裂いた。

「レイド兄凄いでしゅ!」

「強固な鱗を諸共しないとは」
シェイクも感心していた。


レイドは魔物を倒し船に戻った


船員の人が、レイドに礼を言おうと近寄った瞬間
「ヴッ!」
魔物の異臭を放つ唾液によって船員は倒れてしまった。

「ホンマ、台無しやわぁ。裸でオレっちゅうんかい!!!」
体の唾液を払いながら言った。

「ぼきゅ、あっちで遊んでくるでしゅね」
ナナムーはソソクサと逃げていった。

「僕も、新しい歌を作ることにしよう。」
シェイクも逃げていった。

「風の様子がおかしくなった気が…」
と言ってクラークスも立ち去ろうとした

「ちょ!」
翔はクラークスの腕をつかんだ

「まぁ、頑張るんだ坊主!」
小声で翔に言って船内に入っていった。

「翔~!!ありがとなー。お前さんだけが…皆、薄情なやっちゃ」
レイドは翔に近づき肩をポンと叩いた。
手を離すとき肩に唾液がネヴァーと付着した

このとき翔は、船員と一緒に気絶したかったと思ったのだった。







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