勿忘草~戯曲集~

勿忘草~戯曲集~

第3場 確保~


和人    いや、最近物騒だから、護身用に……。
桐子    男なら素手で戦いなさいよ!
和人    相手が素手ならいいけどさあ、なにか武器を持ってるかも知れないだろ?念の為だよ。
桐子    男なら相手が武器を持っていても素手で立ち向かうの。
和人    そんな、映画や漫画じゃないんだから、相手が男で武器を持ってたら、こっちが素手で勝てる訳がないじゃん。
桐子    勝てるわよ。
和人    勝てないよ。
桐子    勝てるって、現にお父さんは勝ってるし。
和人    ・・・ん?
桐子    どうしたの?
和人    ちょっともう1回言ってもらっていい?
桐子    だから、お父さんは武器を持った相手にも勝ってるわよ。
和人    んっと・・・経験として勝ったことがあるとかじゃなくて?
桐子    ううん。いつも勝ってる。
和人    あ・・・そうなんだ・・・いつもなんだね・・・そりゃあ凄いなあ・・・。


 和人 静かに離れようとする


桐子    何処に行くの?
和人    いや、なんかあっちで音が聞こえた気がして・・・なんだろ?。おーい誰かいるのかー!?
桐子    なんか、その言い訳さっきも聞いた。
和人    俺?俺はしてないよ!
桐子    ううん。和人じゃない。さっき飲んでたとき、隣に来た男が「私、婚約者いる」って言ったら、同じようなコト言って逃げた。
和人    俺は逃げないよ!
桐子    そうよね。
和人    ああ。
桐子    大丈夫よ。お父さんだって耳はあるもの、きっと言えば分かってくれるよ。
和人    そうかなあ・・・。
桐子    多分。


 そこへ廉治の声が響き、戻ってくる


廉治    全く、何処に隠れてるんだ!?あ!!


 廉治 二人を見つけ詰め寄る


廉治    みつけたぞ!!
桐子    あ!!
和人    うわっ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・・
廉治    さあ、帰るぞ!


 廉治 桐子に近づいてくる
 和人 桐子を抱え、ナイフを廉治にかざす


和人    近寄るな!!
桐子    え!?
廉治    おい!やめろ!!
和人    近づくな!それ以上近づいたら、俺が死んで、桐子も殺すぞ!!
廉治    まあ、落ち着けって!
桐子    本気?
廉治    ああ。桐子と結婚できないのならココで死んで桐子も殺す!!


 そこへぜーぜーと息を切らしながら雅史 やってくる


雅史    お父さん、早いですよ・・・。


 雅史 桐子を見つける


雅史    あ!いた!いたじゃないですか!よかったぁ!じゃあ早く戻りましょう、お母様が待ってますから!!
桐子    あんたは、状況ってのが目に入ってないの!?
雅史    状況??


 雅史 和人のナイフに気付き腰をぬかす


雅史    あわわわわわ・・・・な、何ですか?そいつは!?
和人    俺が本当の婚約者だ!!
雅史    え?な、何言ってるんですか?桐子さんは私と・・・ですよねえ?お父さん。
廉治    ああ、そうだ。間違いない。
和人    でも、それを桐子さんは認めてないじゃないか!!だろ!?
桐子    ええ、そんな人と結婚するくらいなら、私もここで死ぬわ!
廉治    何を馬鹿なコトを・・・。おまえ自分で何言ってるか分かってるのか?
桐子    分かってるわよ!
廉治    何で、急にそんなコト言い出すんだ!
桐子    急にじゃないわよ!お父さんがいつも私の話を聞いてなかっただけでしょ!
廉治    親の言うコトは、ただ黙って「はい」って言ってりゃいいんだ!
桐子    いつの時代よ!今は平成よ!頭の中、昭和初期で止まっちゃってるんじゃないの!?
廉治    じゃあ聞くがな、おまえ貯金はいくら持ってる?


 廉治 和人の方を向いて聞く


和人    え?えっとまだ使ってない今月の給料が通帳には3万くらいあるけど・・・月末には使い切る予定。
廉治    0な。雅史君は?
雅史    えー現金は1000万くらいですが、あとは株やら土地やらで・・・5000万くらいですかね。


 廉治 強引に雅史を起こし抱きつく


廉治    我が息子よ。
雅史    ありがとうございます!
桐子    0は無いんじゃないの?
和人    なんだよ!金はないけど、俺には愛があるんだ!!
廉治    愛?愛って言ったか?
和人    ああ!
廉治    じゃあ、聞くが・・・もし、桐子があと1ヶ月の命って言われたらどうする?
和人    え?そしたら・・・好きなトコに連れてってやりたいこと全部やらせて・・・
廉治    金無いのに?
和人    う゛・・・金なら何処かから借りる!
廉治    雅史君は?
雅史    世界中の名医を日本に集結させて最高の医療チームを結成させて、絶対に助けます!!
桐子    素敵。
和人    おい!


 廉治 雅史の手をとり


廉治    我が息子よ!
雅史    当然です!
廉治    まあ・・・と言うように以上の条件を鑑みても、君に勝ち目はない!
和人    だったら、俺が死んで桐子も殺す!!
廉治    さっきから・・・思ってたんだが・・・ま、いいや。どうぞ。
和人    え?本当に本気だぞ!
廉治    ああ。いいよ、どうぞやってくれ。その代わり一言一句、間違いなくやってくれよ。
和人    どういう意味だ!
廉治    いいからいいから、こういうのは衝動的な行動だからいいんだよ。深く考えたら駄目。
和人    本当に本気だぞ!
廉治    分かってるって!だから早くやれよ!


 和人 桐子にそっと耳打ちをする


和人    実は格闘技やってたりする?
桐子    するわけ無いじゃん。
和人    だよな・・・じゃあ、なんであんなに落ち着いてるの?あの人。
桐子    さあ・・・?


 廉治 一際大声で


廉治    早くやれって!
和人    じゃあ、やってやる!
廉治    一言一句間違えるなよ!
和人    分かってる!!うわーっ!!!!


 和人 自分の腹にナイフを突き立てる


和人    痛っ!!!!!


 廉治 和人がひるんだ隙に桐子を奪う


和人    あ!
廉治    おまえは偉い!けど馬鹿だ。
桐子    話してよ!!
和人    なんで・・・
廉治    だって、おまえが死んで桐子を殺すんだろ?おまえが死んだあとじゃ桐子は殺せねぇじゃん。
和人    あ・・・
桐子    和人、大丈夫!?
和人    桐子・・・君が・・・霞んで見える・・・
桐子    和人!!!!
廉治    さ、行くぞ!


 廉治 桐子の腕を強引に引っ張り連れて行こうとする


雅史    彼はほっといていいんですか?
廉治    自殺だろ?別にいいんじゃないの?あとから警察でも呼べば。それとも、雅史君のトコで最高の医療チームでも呼ぶ?
雅史    いえ、それは・・・
廉治    だろ?なら行こう!お母様が待ってらっしゃるぞ!
雅史    あ、そうでした!急ぎましょう!
桐子    なんなのよ!あんた達!!
廉治    うっさい!行くぞ!!
桐子    和人っ!!


 桐子 二人に強引に引っ張られて行ってしまう


 おっさんとぼうず やってくる


ぼうず   なんかココさっきの公園に見えるんだけど・・・
おっさん  だったら、さっきの公園なんじゃないか?
ぼうず   ・・・まっすぐ公園を背に歩いて、どうやったらまた戻って来れるんだよ!
おっさん  逃亡者の心理ってヤツだ!右へ右へ・・・って。
ぼうず   おっさん誰に追われてるの?
おっさん  追いかける側も追いかけられてる心理を考えながら行動しなきゃ駄目だろ!それに、今の今まで黙ってついて来て、見慣れた場所に着いた途端に指摘するってのはずるいだろ!
ぼうず   まあ・・・そうなんだけどもね。ん?


 ぼうず 倒れこんでる和人を見つける


おっさん  どうした?
ぼうず   あれ・・・何?
おっさん  何だ?・・・人か?
ぼうず   やっぱり、そう見える?
おっさん  いや、見えない。きっとゴミだ。不法投棄かなんかの。いやー悪いやつもいたもんだね。こんなトコに堂々とゴミを捨てるなんて。
ぼうず   でも、あれ1つだけだよ。
おっさん  いやー運がいいのか悪いのか。あれが最初の1個ってコトだろ?どんなにゴミだらけのトコでも、発端は1個のゴミから始まるってコトだな、うん。
ぼうず   おっさん。現実を見ろ。アレは人だ。
おっさん  そうか・・・?
ぼうず   自分で言ったんだろ?人だって。
おっさん  俺は・・・人か?って聞いただけだよ。
ぼうず   とにかく、行こう!
おっさん  しょうがねえなあ・・・。


 おっさんとぼうず 和人に近づく


ぼうず   やっぱり人だ・・・。生きてる?


 おっさん 空を見ている


ぼうず   おい!おっさん!
おっさん  何だよ!
ぼうず   聞いてるんだろ?生きてるか?って。
おっさん  誰に?
ぼうず   おっさんにだよ!
おっさん  何で?俺に?自分で確認すればいいじゃねえか!
ぼうず   嫌だよ。
おっさん  俺だって嫌だよ。
ぼうず   おっさんの方が長く生きてるんだから、こう言う時は率先して行動してくれよ。
おっさん  こういう時だけ年上扱いするなよ。そんなに変わらねえんだから。
ぼうず   倍以上違うだろうがよ!
おっさん  もう・・・しょうがねえなあ・・・。


 おっさん 屈みこんで和人を見る


おっさん  あ・・・
ぼうず   死んでるの?
おっさん  ナイフが落ちてる。
ぼうず   え!?じゃあ殺されたのか!?マジかよー・・・。
おっさん  ん?
ぼうず   今度は何?
おっさん  んんー・・・。
ぼうず   何だよ!
おっさん  何処かで見たことあるような気が・・・。
ぼうず   え?知り合い?マジかよー。


 おっさん ぼうずを見上げると
 ぼうず 遠くを見て喋っている


おっさん  おまえもちょっと顔見てくれよ!
ぼうず   えー


 ぼうず ちらっと見てまた目を反らす


ぼうず   俺は知らない。
おっさん  もっとちゃんと見ろよ!
ぼうず   分かったよ・・・。


 ぼうず 渋々、和人の顔を覗き込む


ぼうず   ん?この人・・・。
おっさん  な?見たことあるだろ?そう思ったんだよ。なんだ、俺、男の顔も記憶できんじゃん!!
ぼうず   この人・・・さっきの女の人と逃げた奴じゃない?
おっさん  ええー?1人で逃げたんじゃなかったっけ?
ぼうず   ほら、あとから追いかけるように出てったさあ・・・
おっさん  あの時は・・・あの子の残り香を楽しんでたから知らない!
ぼうず   変態!!とにかく、きっとそうだよ。で、生きてるの?
おっさん  ちょっと待て。


 おっさん 和人を揺り起こす
 和人 意識を取り戻す


和人    ん、んんー。
ぼうず   あ、生きてた!
おっさん  どうした!
和人    騙されて・・・
おっさん  騙されて?で、あの子はどうした!?
和人    ・・・あ・・の子・・?
おっさん  ああ、おまえと一緒に逃げた。
和人    捕まった・・・。
おっさん  捕まっただと!?あの親父にか!?
和人    いや・・・あれは・・・
おっさん  あれは・・・なんだ!?
和人    あれは・・・うっ!
ぼうず   もう、喋らせない方がいいんじゃないの?
おっさん  いや、大丈夫だ!言え!誰に捕まった!
ぼうず   おっさん!もうやばいって!死んじゃうよ!
おっさん  それはない。
ぼうず   どうして!
おっさん  だってこいつ刺されてないもん。
和人    ええー!?


 和人 驚いて自分の腹をさすっている


おっさん  血だって出てないし。
ぼうず   はぁ?じゃあなんで倒れてるんだよ!?
和人    さあ?てっきり死んだモノだとばっかり・・・
おっさん  おまえ、誰にやられたんだ?
和人    いや、誰に?っていうか・・・
おっさん  ていうか何だよ?・・・ん?さては、物凄く弱っちそうな奴にやられたな?おまえ、弱そうだし。
和人    そんな事無い!俺だってやる時はやるよ!こう見えても空手やってたんだからな!
おっさん  マジ?
和人    ああ!
おっさん  じゃあ、どんな奴だよ。おまえを気絶させて、彼女を連れ去ったのは!
和人    あれは・・・
おっさん  あれは?
和人    身長・・・2メーター・・・?
おっさん  2メーター!?
ぼうず   そんなキャラ何処にも出てきてないじゃんよ!
和人    体もがっちりしてて・・・
おっさん  がっちり?
ぼうず   ってことは、あの親父さんとは正反対だな。
おっさん  だな。あの人はどう見ても口ばっかり達者で腕っぷしはからっきしってタイプだもんな。
ぼうず   そうそう。
和人    え!?
おっさん  知らなかったの?
和人    ええ。全然。
ぼうず   まあ、ああいうタイプはさあ、酒飲むと強気になってナイフ持った暴漢相手に戦って倒したとか言いたがるんだよ。
おっさん  そうそう。
ぼうず   でも何でか女の子は、そういう嘘を信じちゃうんだよねえ。
おっさん  そうそう!俺たちの方が強いっての!
ぼうず   そうそう。
和人    お二人は何かやってらっしゃるんですか?
ぼうず   俺たち?いや、特別何もやってないけど・・・仕事でね。
和人    お仕事?
ぼうず   そうそう。血の気の多い現場作業員を取りまとめてる。
おっさん  毎日喧嘩ばっかりだよ。ウチの現場監督が、また腰抜けだからさあ・・・俺たちのトコにとばっちりが来て、なあ?
ぼうず   そうそれに、このおっさんは1トン近いユンボを支えるからね。一人で。
おっさん  あったな、そんなコト。
和人    1トン!?
ぼうず   そう。
おっさん  あれはビビッたね、流石に。地盤がゆるくてさ、動かそうとしたら俺の方に倒れてきやがるから・・・
和人    はあ・・・
おっさん  でも、俺は空手とかやってた訳じゃないから、おまえには敵わないよ、きっと。
和人    そ、そんな・・・
おっさん  で?どんな奴にやられたって?
和人    え?えっと・・・と、とにかく、化け物のような奴でした!


 おっさん 考えて


おっさん  それは・・・あの婚約者とか言ってた奴とは・・・
和人    全然違います!全く、ちっとも!あんなのは吹いたら飛んでっちゃいますから。
おっさん  ってことは・・・
ぼうず   おっさん・・・ライバル増えたみたいだね。


 和人 つぶやく


和人    ライバル?


 が、2人とも聞いてない


おっさん  らしいな・・・。とにかく、探すしかないだろ。
ぼうず   だね。
おっさん  そいつはどっちへ行った!?
和人    え?あ・・・さあ?な、殴られて気を失ってしまったので・・・
ぼうず   殴られた?何処を?
和人    あ、大丈夫です。もう。
おっさん  待て?でも、おまえ空手やってるんだろ?
和人    ええ・・・まあ、たしなむ程度に・・・。
おっさん  そんな奴を、痕跡も残さず気絶させられるってことは・・・
ぼうず   プロ!
和人    ええ!?
おっさん  ああ・・・その可能性が高いな。人体の構造を熟知してやがる。
和人    そ、そうなんですか?
おっさん  間違いない。あるんだよ、幾つかポイントが。
ぼうず   となると・・・。
おっさん  俺たちと同等か・・・それ以上かも。こりゃ気合入れなおさないと。
ぼうず   ああ。


 おっさん 和人を見て


おっさん  ところで、おまえは彼女とどういう関係なんだ?
和人    桐子のことですか?
おっさん  桐子?それっておまえと逃げた子?
和人    そうですけど・・・。
おっさん  じゃあ・・・その子。
和人    えっと・・・お付き合いをさせていただいているつもりなんですが。
おっさん  お付き合い?
和人    ええ。
おっさん  おまえが?
和人    ええ。
おっさん  一発でのされちゃったのに?
和人    ええ・・・そのつもりですけど。
おっさん  何だよ、つもりって?
和人    だってですね・・・婚約者はいるし、お父さんは怖いし・・・。
おっさん  お父さんって、口だけ野郎の?
和人    実際、違うんですって!
おっさん  空手の達人が言うんならそうなのか?・・・でも、なあ?
ぼうず   でも、本当の達人は普段、弱く見えるらしいよ。
おっさん  なるほどね・・・。
和人    それに、俺嫌われてるみたいですし・・・。
おっさん  ふーん・・・だから?
和人    だからって?
おっさん  だから、何?おまえ、そのお父さんと付き合ってんの?
和人    いえ・・・
おっさん  なんだよ!俺、そういうのが一番嫌いなんだよ。なーんか、やる前からあきらめてるって言うか、ウジウジ考えるだけ考えて、結局自分の中で終わらせちまう奴って。
ぼうず   俺としては、何かやる前にちょっとは考えて欲しいけどね。
おっさん  俺が考えたら、俺じゃなくなるだろ?
ぼうず   まあ・・・そだね。
おっさん  とにかく、おまえは戦線離脱ってことだな。
和人    え?
おっさん  ま、しょうがないわな。俺の運命の人だからな。それに敵は1人でも少ない方がいい。
ぼうず   そうだね。ま、彼女の気持ちを完全に無視してるけど。
和人    ええ!?
おっさん  そういうわけだから、俺達は、その化け物からお姫様を救出に行くとするか!
ぼうず   そだね。


 おっさん 立ち上がり和人を見る


おっさん  おまえ、本当に大丈夫か?
和人    ええ・・・もう平気です。
おっさん  よし!じゃあ、ぼうず!行くぞ!!
ぼうず   おう!
おっさん  じゃあな!
和人    あ、はい・・・。


おっさんとぼうず 立ち去る


和人    ・・・運命の人。


 和人 地面を叩く


第4場 勘違い

 公園の片隅で数人が集まって何やら話している
 どうやら芝居の稽古をしているらしい


女A     ねえ、まだやるの?
男A     だって、シーンが固まってないんだからさあ・・・。
女A     そうだけど・・・もう夜だよ。
男B     確かに夜だ。
男C     確かに暗い。
女A     でしょ?
男A     大丈夫だろ?外灯の灯りもあるし。
女A     そういうことじゃなくて、近所迷惑になるでしょ?
男B     確かに迷惑だ。
男C     確かにウルサイ。
男A     お前らは黙ってろ。分かったよ、じゃあ、コレが最後。あとは明日やろう。
女A     分かった。
男A     そしたら、女性が二人組みの男に絡まれてるシーンから・・・よーい、スタート!


   夜、街の中
   女性が2人組の男にからまれている
   女性(以後・女A)
   男性2人(以後・男A、男B)


男B いいじゃねえかよ、遊ぼうぜ!
女A やめて下さい!!
男C どうせ暇なんだろ?だったらいいじゃん!
女A やめてって!!


   男B 強引に女の腕をつかみ引っ張る


男B いいから、こいよ!


   激しい音楽と共に健介が現れる


男A やめろ~!!!


   男2人、声に驚き振り返る
   同時に女 男Aの手を振り切り、健介の方へ走り寄る


女A 助けて下さい!お願いします!
男B 誰だ!貴様~!!
男A ここは俺に任せて、あなたは早く逃げなさい。
女A でも・・・。
男A 早く!


   女 頷いて走って逃げる
   男2人 健介に向かってくる


男B お前、なにしやがんだよ!
男A 嫌がるレディを強引にってのは、紳士じゃないな、
男B は!?


   男B 健介の胸ぐらをつかむ


男B 何、格好つけてんだよ!


   男B 健介に殴りかかる
   男A 捕まれている手を取り力を入れる

   バキバキッ!!

   音と共に男B 叫び声をあげる
   それを見て男C 向かってくる


男C お前!何をした!!
男A いや、友情の証に握手をしただけだが・・・?
男C 何だと!


   男C 殴りかかってくる


 劇団員達 走りこんでくる
 外灯がなくかなり暗い
 中央には大きな、よく分からないモニュメントのようなものが立っている


女A     ちょっと!こっちに逃げたら出口ないでしょ!?
男A     フェンス乗り越えればいいだろ?
女A     私も?
男A     ああ。
女A     こんなに高いのに!?
男B     確かに高い。
男C     確かに3メートル近くある。
男A     なんで、そんなにあるんだよ!
女A     あ!来たんじゃない!?
男A     しょうがない。この暗闇に乗じて逃げよう。
女A     そんなにうまく行く?
男B     確かに難しい。
男C     確かに厳しい。
男A     大丈夫だって!向こうは2人だぞ!とりあえず、いいからこの銅像の裏に隠れよう。


 劇団員達 男Aに促されてモニュメントの裏に隠れる

 おっさんとぼうず やってくる


おっさん   おーい!もう逃げられないぞー!!あきらめて出てこーい!!


 何処からも返事がない


おっさん   反応がないぞ。逃げたんじゃないの?もしかして。
こぞう    そのくらいで、出てくる逃亡犯はいないぞ。
おっさん   そうか?・・・でも暗くて良く見えないな・・・。
こぞう    でも、こっちからは逃げられないんだから。


 おっさん ため息をつく


こぞう    なんだよ、ため息なんてついて。
おっさん   だってよー化け物だぜ?2メートルとか言ってたじゃん・・・。
こぞう    実際にいると思う?
おっさん   どうだろうなあ・・・疑わしいとは思うけども・・・。
こぞう    ま、実際にいたとしても、おっさんなら大丈夫だよ。
おっさん   なんで?
こぞう    だって強いじゃん。
おっさん   いや、確かに力はあると思うよ。でも2メートルって言ったらチェ・ホンマンみたいな感じだろ?勝てると思うか?
こぞう    ホンマンか・・・確かに厳しいかも・・・。
おっさん   だろ?
こぞう    でも、ここまで来たらやるしかないだろ?
おっさん   そうなんだけどさあ・・・。
こぞう    その時は、俺も微力ながら加勢するし!
おっさん   おまえ先に行ってみない?
こぞう    なんで俺が?
おっさん   いいじゃん。
こぞう    良くないよ。


 おっさんとこぞう 譲り合いをはじめる

 モニュメントの裏では劇団員達がやきもきし始める


女A     どうするのよ!見つかっちゃうわよ、こんなとこじゃ!
男A     そうだな・・・とりあえず、相手の戦闘力を知りたいなぁ・・・ちょっと二人で行ってこいよ。
男B     なんで俺たちが?
男C     なんで二人で!?
男A     じゃあ、おまえ行ってくる?
女A     なんで、私なのよ!女よ、私!!
男A     ほら、向こうも女ならそんなに荒っぽいことをしないだろ、きっと。
女A     いやよ。そんな言うなら自分で行ったらいいじゃない!
男A     馬鹿だなあ。俺が行ったら司令塔がいなくなっちゃうじゃないか!
女A     大丈夫、みんなあなたを司令塔だと思ってないから。ほら、行っといで!!


 女A 男Aの背中を強く押し、モニュメントの影から押し出す


男A     おい!やめろよ!!あ!?


 男A 飛び出したところをおっさんとこぞうに見つかる



おっさん   うわっ出た!行け!こぞう!!
こぞう    だから何で俺が!?
おっさん   大丈夫だ、あいつは小さい。
こぞう    小さくたって、山本KIDは強いだろ!
おっさん   そりゃそうだけど、とりあえず今は、ホンマンをどうしようかって話だろ!?
こぞう    だって、あいつを倒したらホンマンが出てくるんだろ?
おっさん   それは、分からないぞ。
男A     あのー・・・。
おっさん   なんだよ、うるさいなあ!
こぞう    とにかく、一番手はおっさんだろ!?動機から考えたってさ。
おっさん   動機ってなんだよ。
こぞう    おっさんの運命の人を救出するんだろ!?
おっさん   じゃあ、おまえは何の為にココにいるんだ?俺を手伝うためじゃないのか!?
こぞう    それは、そうだよ。でも、手伝うってのはあくまで、おっさんがやってることを補助するってコトだろ?
おっさん   いいか?今回の最大の目的はなんだ?
こぞう    だから・・・桐子さんだっけ?の救出。
おっさん   だろ?ていうコトは桐子さんを救出するのが俺の仕事だ。で、それをサポートするのが・・・ぼうず!おまえの仕事だ!!
男A     あのー・・・。
こぞう    うっさいっての!!なんで、一番危険なトコが俺の担当なんだよ!!
おっさん   おまえが救出担当だったら困るだろ?
こぞう    困らないよ、別に。
おっさん   だってさあ、最初に見たものを親だと思っちゃうんだぞ!
こぞう    なんで、ヒヨコの話が出てくるんだ?
おっさん   それだけ、印象的だっていう例えだよ!
こぞう    それは分かるけどさあ・・・。
男A     あのーお取り込み中申し訳ないんですが・・・。
ふたり    なんだよ!
男A     あーすいません・・・。


 おっさんとこぞう 改めてよく男Aを見ると隣にモニュメントがあるコトに気付く


こぞう    お、おっさん・・・?あれって・・・。
おっさん   あ、ああ・・・。でかいな・・・。


 男A そのままモニュメントの裏の劇団員に話しかける


男A     俺の話、聞いてくれないんだけど・・・。


 おっさんとこぞう それを見てモニュメントに話しかけてると勘違いする


おっさん   おい!青年!!
男A     は、はい!俺?・・・ですか?
おっさん   おお、そうだ。
男A     はい、何でしょうか?
おっさん   おまえの隣の奴は、どのくらいあるんだ?
男A     コレ?
おっさん   コレって!良いのかそんな言い方して・・・
こぞう    ホンマンは日本人じゃないから!
おっさん   おお、そうか!そうだ!ソレだ!!
男A     どのくらいって、大きさ?
おっさん   ああ。
男A     さあ?2メートル3、40ってトコかなあ・・・。
おっさん   2メートル40・・・。でかいな。
こぞう    行け!おっさん!!
おっさん   え?ええ!?俺!?
こぞう    今なら油断してるからイケルって!
おっさん   そうか?
こぞう    ああ、行け!!


 おっさん 覚悟を決めてモニュメントに突進していく


おっさん   うぉー!!!


 男A 横に飛びのいて


男A     何!何だよ!!


 おっさん モニュメントと組み合っている


おっさん   か、硬ぇー!!それにビクとも動かない!!
男A     そりゃあ、そうだと思うけど。
こぞう    くっそー!俺も行ってやる!!


 こぞう モニュメントに突進し組み付く


こぞう    うおぉー!!!!!


 男A    横で二人を見ながら


男A     な、何なんだよ!おまえ等!!
こぞう    なんだよ、この硬さ・・・。
おっさん   だろ?


 男A その隙に裏にいた劇団員たちを呼び寄せる


男A     なんだか良く分からないけど、今のうちに逃げるぞ。


 劇団員達 静かに頷き立ち去る

 和人 きょろきょろと何かを探すように入ってくると、2人を見つける


おっさん   くっそー2対1だぞ!こっちは!
こぞう    なんだよ、おっさんの良いとこは諦めないトコだろ!?何、弱音吐いてんだよ!
おっさん   弱音なんて吐いてねえよ・・・。
こぞう    なら、良いけど。いい加減、本気出せよ!。
おっさん   なんだよ、これでも結構本気なんだぞ!!
こぞう    じゃあ、桐子さんはどうなっても良いって言うんだな!このまま、誰かと結婚しちゃっても良いんだな!?なんだよ!俺を巻き込んでおいて、そんなモンかよ!!!
おっさん   何だと!!うぉー!!!!!


 おっさん 更に力を入れる
 和人 それに呼応したかのように突っ込んでくる


和人     うわぁー!!!!


 和人 そのまま、ふたりの背中に体当たりをするとモニュメントが倒れこむ
 横になったまま動かないモニュメントと3人

 和人 気がつく


和人     ん、んんー。


 しかし二人は起き上がらない


和人     あの!ねえ!ねえ!!!


 和人 必死で二人を揺り起こそうとするが動かない



第5場 夢

 暗闇の中、女性の声が聞こえる


女      ねえ!ねえ!大丈夫!?ねえ!!


 おっさん 静かに目を覚ます


おっさん   あれ?なんだ?・・・ここは?
女      あ、気がついた?


 おっさん 改めて女性の顔を見る
 女性は桐子だった


おっさん   君は・・・。
桐子     何で、こんなトコで倒れてるの?
おっさん   ・・・なんでだったっけ?んー・・・。
桐子     思い出せないの?
おっさん   いや、そんなコトはないんだけど・・・たしか、君を探してたんだよ。
桐子     私を?
おっさん   ああ。ぼうずと一緒に。
桐子     ぼうず?
おっさん   あれ?ぼうずがいない・・・あいつ何処行った?
桐子     いないの?どんな人?
おっさん   ほら、あれ・・・飲み屋で・・・
桐子     あーお父さんと言い合いしてた?
おっさん   そうそう。あれがぼうず。あいつと君を探してたんだ。
桐子     どうして?
おっさん   あの後、君のお父さんが君を追いかけて出て行ったから・・・。
桐子     そうだったんだ。
おっさん   ああ・・・そうだ、君・・・捕まってなかったの?
桐子     ・・・どうして?
おっさん   ん?
桐子     なんで、そんなに私のコトを気にかけてくれるの?飲み屋さんでも助けてくれたし・・・。
おっさん   それは・・・。
桐子     それは?
おっさん   それは・・・!
桐子     それは?
おっさん   運命の人だからです!
桐子     運命の人?
おっさん   はい!
桐子     誰が?
おっさん   あなたがです!
桐子     ・・・は?
おっさん   いや、だから・・・
桐子     えっと・・・私が忘れてるだけなのかな・・・私、あなたと会うの今日が初めてだと思うんですけど・・・。
おっさん   はい、初めてです!!
桐子     だよね・・・。
おっさん   はい!!
桐子     それが、どうして運命の人とかに急になっちゃう訳?
おっさん   それは・・・
桐子     それは?
おっさん   それは・・・!
桐子     それは?
おっさん   お告げです!!!
桐子     お告げ!?
おっさん   はい!
桐子     もう、全く訳が分からないんだけど・・・。ただでさえ、変な奴と婚約はさせられそうって言うかさせられたって言うか・・・大変だって言うのに、今度は何?お告げ!?一体何?何なの?私が何をしたって言うの!?好きな人と一緒にいるってだけの事がどうしてこんなに大変なの!?


 桐子 頭を抱えて座り込んでしまう


桐子     はぁーもう嫌だ・・・。
おっさん   あのー・・・。
桐子     ・・・何よ?
おっさん   その好きな人って言うのは・・・、・・・俺?
桐子     ・・・そうだとしたら、なんで私は今、こんなに苦しまなけりゃならないの?今日はじめて会った人に運命の人だとか言われて、何?あなたは何をして欲しいの?あなたも私と結婚したいの!?
おっさん   ・・・あの!
桐子     何よ!
おっさん   あの・・・大体、いつもこういう難しい気持ちを代わりに説明してくれてたのが、ぼうずだったんだけど、あいつは今いないから、うまく説明できるかは分からないんだけど・・・
桐子     だから何よ!?
おっさん   俺は!・・・いや、その・・・お告げって言うのは、夢だったんだけど・・・その夢の中で、女の人が、困った顔をしてこっちを見ていたので、「こりゃいかん、助けねば!」と咄嗟に思った訳で・・・更にちょうど、その日に「自分は恋に生きる!」と決めたまさにそのタイミングだったので、「これこそまさに運命の人!」と思ったんだけども・・・それだけで運命の人なのか?と聞かれれば確かに、そうなんだけども・・・。
桐子     ・・・で、それが私だったんだ・・・。
おっさん   ・・・
桐子     ん?
おっさん   ・・・
桐子     何?
おっさん   ・・・
桐子     なんで、沈黙なの?
おっさん   どうだろ?
桐子     何が?
おっさん   そもそも、夢というもの自体、そんなにはっきりと覚えていられるモノじゃないから・・・。
桐子     じゃあ、何で私だと思ったの?
おっさん   雰囲気?
桐子     雰囲気・・・って何?
おっさん   ほら、この辺にモヤモヤーっと出てて、美輪さんとかには見える奴。


 おっさん 背中の上あたりを指しながら答える


桐子     まあ、何でも良いけど、それが私と同じだったんだ。
おっさん   ・・・いや。
桐子     は?
おっさん   ほら、俺の夢って白黒だからさ・・・。
桐子     ほらって言われても知らないわよ、私には。じゃあ、なんで私だと思ったのよ!
おっさん   ・・・えっとだな・・・。俺は今言ったような夢を見たので、会社も辞めて、この運命の人を探そうツアーへの参加を決めたんだけども・・・。
桐子     会社辞めたの?
おっさん   え?ああ。
桐子     なんで?
おっさん   ウチの会社は土木系だから、出会いが全くないんだよ・・・。
桐子     そんな理由で!?
おっさん   ・・・君はねえ、常に周りに男がいるから、そんなコトが言えるんだ。全くいないんだぞ!事務員さんは社長の奥さんだし・・・奥さんって言っても若ければ、なんとか目の保養・・・なんてコトにもなるかもしれないけど、もういい歳だし。そんな環境にずっといてみろ、発狂するぞ!
桐子     ま、まあ、そうかもしれなわね・・・。
おっさん   だろ?だから、俺は旅に出た!会社も辞めて!こぞうも連れて!!
桐子     なんで・・・そのこぞうって言う人は連れてきたの?
おっさん   ・・・寂しいから?
桐子     そんな理由で!?
おっさん   しょうがないだろ!?いつ終わるとも知れない旅路を1人で過ごせと?この上、男友達もいなくなったら俺は寂しくて死ぬぞ!!


 おっさん 大げさにうなだれる


桐子     大丈夫よ・・・うさぎは寂しくても死なないから。
おっさん   え!?死なないの!?
桐子     ええ、死なない。
おっさん   そうだったのか・・・。まぁ・・・そうは言っても俺もちょっとだけ悪いなって思ってるんだ、ぼうずにはさ。俺のわがままに付き合わせてるわけだから・・・。
桐子     本当にそうね。災難だわ。よく断らないわね。
おっさん   ああ、抱えて連れてきたから。
桐子     拉致!?
おっさん   ・・・まあ、そういった事情もあって、いつ終わるとも知れない旅ではあるんだけど、少しでも早く終わらせたいっていう親心もあるんだよ。
桐子     色々、突っ込み所はあるけど、黙っててあげるわ。よく分かるから、その気持ち。
おっさん   だろ?だから君を見たときに、運命の人だ!っと・・・。
桐子     言っちゃったの?
おっさん   ほら、雰囲気は似てたしね。
桐子     白黒だったのにね。
おっさん   モヤモヤーの出方とかさ。
桐子     で、言っちゃったんだ。
おっさん   あ、ああ・・・。
桐子     じゃあ、私じゃないんだ。
おっさん   んー違うとは言い切れない・・・
桐子     けど、そうだという確証もない、と。
おっさん   まあ・・・。
桐子     じゃあ、勘違いってことで。
おっさん   ええ!!
桐子     何?
おっさん   だって・・・。
桐子     大丈夫よ。
おっさん   え?
桐子     この先、何年経っても私が、あなたを好きになることはないから。
おっさん   ええ!!?
桐子     ってコトは、私は運命の人じゃないってコトよ。
おっさん   ・・・なんで?
桐子     だって運命の人だよ!会った瞬間に、お互い気付くでしょ?
おっさん   そういうもの?
桐子     だって、運命の人だよ!!
おっさん   そっか・・・
桐子     あなただって、別に私を見たとき何も感じなかったでしょ?
おっさん   いや・・・
桐子     感じなかったでしょ!?


 おっさん たじろぐ


おっさん   あ、ああ・・・。
桐子     とにかくね、私は、あなたに構ってる暇はないの。今は、特にね。なんとかして、あのマザコン野郎との結婚を阻止して、和人と付き合うのを認めさせないと!
おっさん   和人?
桐子     そうよ。
おっさん   それって、さっき一緒に逃げてった?
桐子     そうそう。
おっさん   ひょろひょろーっとした?
桐子     そうそう。
おっさん   ・・・えっと、あいつとは初めて会った時、何か感じたの?
桐子     当たり前よ。ビンビンよ!!
おっさん   そっか・・・そうなんだ・・・。


 おっさん 寂しそうにつぶやく

 そこへぼうずの声


ぼうず    おっさん!おっさーん!!!
おっさん   あ、ぼうずだ!おーい何処だー!!
ぼうず    おっさーん!おっさーーーん!!!
おっさん   だからココだって!!


 気付くと桐子 いなくなっている


おっさん   あれ?桐子さん?


 暗闇に包まれる

 周りは明るくなっている
 おっさん 倒れている
 ぼうず おっさんを揺り起こしている
 和人 少し離れて、それを見ている


ぼうず    おっさん!しっかりしろよ!おっさん!!
おっさん   ん?んんー・・・。


 おっさん 気付き起き上がる


おっさん   ん?ここは・・・
ぼうず    良かったー。やっと気付いたよ。
おっさん   あ、ああ・・・。


 おっさん あたりを見渡し倒れているモニュメントを見つける


おっさん   これは?
ぼうず    あ?ああ・・・多分、ホンマン。
おっさん   は?
ぼうず    暗くて勘違いしたみたいだね。
おっさん   何で倒れてるの、コレ?
ぼうず    おっさんが倒したんだろ?
おっさん   俺が?
ぼうず    ああ。
おっさん   流石に俺もそんなに馬鹿力じゃないだろ。
ぼうず    だって実際、倒れてるじゃん。
おっさん   だったら、おまえだってやっただろ!?
ぼうず    俺の力なんて微々たるモノだよ、とてもとてもこんなモノを倒す力は・・・。
おっさん   待て?
ぼうず    ん?
おっさん   誰かが押したんだよ!
ぼうず    は?
おっさん   だから、誰かが後ろからさあ!で、これが倒れたの!
ぼうず    あ!ああ!
おっさん   だろ?
ぼうず    ああ・・・確かに・・・でも・・・。
おっさん   ああ、誰が押したんだ?


 おっさん 立っている和人に気付く


おっさん   おまえ・・・おまえか?俺たちを押したの!?
和人     え?俺?違う違う。


和人 大きく首を振る


おっさん   違うの?
和人     ・・・
おっさん   違うのか!?


 和人 おっさんの前に駆け寄り土下座をする


和人     すいません!!
おっさん   おまえが・・・
和人     本当にすいません!!
おっさん   何で・・・
和人     桐子さんが・・・誰かと・・・って言うか、あのマザコン野郎と結婚させられるんじゃないかって考えたら、もう無我夢中で・・・
おっさん   で?
和人     で・・・お二人の対峙していたこの物体に突っ込んでしまったと・・・
ぼうず    何してんの!?何もなかったから良かったようなモノを、俺たち、大怪我してたかもしれないんだぞ!分かってんのか!?
和人     すいません、すいません!本当に無我夢中で・・・
ぼうず    だとしても!っていうか、おまえは戦線離脱したはずだろ!?
和人     本当にすいません!!
ぼうず    だから!
おっさん   ぼうず・・・もういいだろ・・・。
ぼうず    何でだよ、おっさん!おっさんが一番の被害者じゃないのかよ!
おっさん   まあ、別になんともなかった訳だし・・・な。
ぼうず    おっさん・・・。
和人     ・・・本当にすいませんでした・・・。
おっさん   で?桐子さんは何処行った?
和人     ・・・桐子のお父さんと婚約者ってのに無理矢理連れてかれて・・・。
おっさん   いや、その後だよ。
和人     その後・・・?
おっさん   だって、いただろ?今さっきまで、ここに。
和人     ・・・いえ。
おっさん   は?
こぞう    だって、おっさん。今まで気絶してたんだぞ!
おっさん   でも、俺話したぞ。
こぞう    桐子さんと?
おっさん   ああ。
こぞう    そりゃ夢だよ。
おっさん   夢・・・?
和人     ええ、僕、ずっとここにいましたから。
おっさん   じゃあ、桐子さんは・・・
和人     お父さんと婚約者に連れてかれたまま・・・
おっさん   おまえは何やってたんだ!?
和人     え?
おっさん   目の前で桐子さんが連れてかれようとしてる時、おまえは何をやってたんだ!
和人     俺だって・・・なんとか連れてかれないようにしたかったんだけど・・・俺、馬鹿だし・・・力も無いから・・・。結局、やられて・・・。
おっさん   ・・・そんなコトないだろ。
和人     え?
おっさん   俺はおまえの事をよく知らないから、おまえが馬鹿だって理由も力が無いって理由も分からないけど、俺の知ってるおまえはスゲー勇気があると思うよ。
和人     え・・・?
おっさん   だろ?だっておまえだって、この変な銅像が人だと思って突っ込んできたわけだから。俺みたいにぼうずにけしかけられた訳でもないのに。
和人     それは・・・。
ぼうず    おっさん、何が言いたいんだ?
おっさん   ん?いやーほら、何だ?俺の運命の人?あれ、桐子さんじゃなかったみたいなんだ。
ぼうず    は?
おっさん   参った、参った。俺の勘違い?
ぼうず    何、言ってるの?
おっさん   夢は所詮夢でさ、よくよく思い出してみたら微妙に違ってるっていうか・・・。
ぼうず    間違い!?今更、何言ってるんだよ!
おっさん   しょうがないじゃないかよ!間違いは誰にでもあるだろ!?
ぼうず    それに巻き込まれてる俺の身にもなれ!


 おっさん 深々と頭を下げる


おっさん   申し訳ない!
ぼうず    ・・・おっさん・・・。
おっさん   ま、そういう訳だから、桐子さんのことは頼んだ。
和人     え?
おっさん   ほら、俺が助け出そうと思ってたけど、その動機が無くなっちゃったからさ。
和人     でも、俺じゃあ・・・。
おっさん   はあ?今更何言ってるの?このわけ分かんない銅像に突っ込んできた時の勇気は何処に行っちゃった訳?
ぼうず    ・・・あの~わけ分かんない銅像って、あんまり言ってほしくないんだけど・・・なんか胸の奥―の方が切なくなる・・・。
おっさん   だって、実際に分けわかんない銅像なんだから仕方無いだろ!?じゃあ、おまえにコレがなんだか分かんのかよ!
ぼうず    いや、分かんないけど・・・。せめてホンマンもどきとでも言ってくれれば・・・。
おっさん   もう、何でもいいよ。ホンマンもどきな、ホンマンもどき。
ぼうず    うん・・・。


 おっさん 和人の方を向き


おっさん   だから、おまえは行け。桐子さんもおまえと結婚したいと思ってるはずだよ。
和人     本当に・・・本当にそうでしょうか?
おっさん   ああ、間違いない。
和人     はい・・・分かりました。どうもありがとうございます。俺やってみます!
おっさん   ああ。
和人     じゃあ・・・。
おっさん   おう、行ってこい!
和人     はい!


 和人 立ち上がり、ふたりに頭を下げ立ち去る
 ふたり それを見送って


ぼうず    まあ、そうは言っても無理だろうね・・・。
おっさん   やっぱり、そう思う?
ぼうず    うん。世の中、勇気だけではどうにもならないからね。
おっさん   だよなあ・・・。



つづく

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