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第 7 章


<再会>

 すべてが僕の身勝手だった

 勝手に好きになって 勝手に君の前から姿を消して

 何一つ 君に残してあげられなかった

 何一つ 君を幸せにしてあげられなかった

 君に心を残したまま それでも君を忘れようとして

 それでも君のマンションの近くを通るたびに

 君を求めてベランダをいつまでも見上げていた

 携帯電話を握り締めて

 何度も君のアドレスを呼び出して

 結局 ごめんね の一言が送信できなくて

 すべてが僕の身勝手だった


 見覚えのある車のガラス越しに

 君の横顔を見つけた時

 君があわてて目を逸らせたのがわかった

 それから何分も何十分も携帯電話を握り締めて

 元気ですか?変わりはないですか? と入力した文字を

 今日もまた 送信ボタンを押せないまま

 僕はただ身勝手に 君への思いをつのらせています

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