桃源記 番外編 上

文机 白



俺は、これまで因果を信じた事などなかった。ないはずだった・・・・。














「霧双がいなくなった?」

宇美は聞き返した。

「ええ、まだ詳しい理由は知りませんが、有力だった霧双がいなくなった・・・・・いや、宵月を裏切ったとでも言うところでしょうか」


寿真は茶を飲みながらそう言った。

「宵月を裏切ったということはつまり・・・」





『極刑に値する』





「見つかったらまず、宵月の誰かに消されてしまうでしょうね。」


------宵月を裏切る事は、物の怪に魂までも売ってしまったという事。





「失礼しますよ」

カラカラという音と共に、叔父さんが入ってきた。

いそいそと畳に座り、じっと二人を見つめる。



「単刀直入に言わせてもらいます。二人とも、霧双の話は聞いていますね?」

「ええ。」

「はい。」

同時に返事をする。

「総会で決まったことなのですが、今回、二人が霧双を・・・消さなければならなくなりました。」


「あの、霧双を?」

『そんな事が出来るのかな?霧双はわずか十六歳にして、宵月の幹部を任された実力者だし。』










「消さなければ、そのうち霧双は力を使って暴走しはじめるでしょう。」

「父さん、一体、霧双は何をしようとしてそんな事を。」

「宵月も詳しい事は分かっていません。だから、それを二人で見極めて来るのです。もし、暴走を始めようとしていれば、情など捨て、けりをつけてあげなさい。」


「それは分かったんですが、あの霧双にどうやって対抗しろと?」


「時には、祝詞や呪符よりも効くものがあるでしょう?気づきなさい。そして掛けてあげるのです。そのコトバを。」




「コトバ・・・ですか?」

「ええ、コトバです。」



『コトバ・・・って、どっちのコトバなんだろう?言葉?それとも、他の詞?』







寿真にも、意味を聞いてみたが、コトバの意味は分からないまま、霧双が向かったとされる離れ小島へ、寿真と二人で向かった。









島はしん、と静まり返っていた。携帯も役に立たない。

それもそうだ。ここは無人島のはず。何十年か前までは、人が住んでいたようだった。

無残にも、崩れた壁や屋根、雨戸などがあちらこちらに散らばっていた。

浜辺には、最近燃やしたと思われる、花火の跡。




「本当にこんな所に居るのでしょうか?明らかに、人が住む場所とは思えないのですが。」





「・・・」






無言のまま、林の奥にある一軒の廃屋に入っていく。




廃屋の周りには棘。昔、薔薇でも植えていたんだろう。昔話に出てくる城みたいだ。見た目はそれ程大きくは無いのだが。



バリッ、とガラスの軋む音。割れた窓からは棘が中へと入り込んでいる。いや、此処全体が棘に覆われているのかもしれない。




「ここは・・病院?」

「の、ようです。足元に注意して下さい。それに、この島の何処に霧双が潜んでいるのか分かりませんからね。」

診療台やシーツ、ガラスの破片が散乱している。


「とにかく、何か手掛かりになるようなものがあるか、探してみましょう。」





最初に探した部屋は、一般病棟の一室だったらしいが、之といって収穫は無かった。




二つ目に入った部屋にぽつんとボロボロになった事務机が一つ。






「ん・・?これは?」



寿真は机の引き出しから、埃にまみれていた、一枚の写真を見つけた。埃を払うと二人の男女が写っていた。


女の方は患者らしくベッドに横になっている。

顔は卵形で髪の長い、眼差しがとても優しい感じの人だ。

男は医者、という感じでその女性の隣に腰掛けている。







男の顔には、見覚えがあった。











                          下に続く........

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