月の耀き

月の耀き

アメリカ(1)


ロスの空港のレンタカー駐車場に用意されていたのは、左ハンドルのプリメーラ。
外車に乗ってみたかった私は、がっかりする。
慣れない右側通行、左ハンドル。何度も何度もワイパーとウィンカーを間違いつつも、順調にスタート。
海岸線を北上する。この旅では、安全第一に夜中に移動するのはなしにした。夜は早めにホテルにインして、朝早く出発するというプラン。
天気もよく、ラジオを聴きながら海沿いの道をドライブするのはとても気持ちが良かった。
途中ちょっとした観光地のスゥエーデン風の村(街?)がありそこで一泊。
ホテルは飛び込みや、その日泊ると決めた街のフリーペーパーを見て電話予約していたので、夜が近くなると毎回ちょっと焦り気味だった。
食事に関して この旅で大変お世話になったのが 「タコベル」「ベルタコ」(紛らわしいが別々のチェーン店)というタコス屋だった。
タコスは比較的さっぱりしていて ハンバーガーよりはずっといい。
とにかくひたすら海を見ながらのドライブ。断崖絶壁の島の頂上に一件だけ
ある 素晴らしく豪華な別荘風の建物を眺めて金持ちの考えることは・・・
どうやって行くんだろ?と彼と笑う。
そうしてたどりついたのは、ぺブルビーチ。全米オープンが行われる有名な美しいゴルフ場がある。
ここで海が真っ赤に染まるような夕日をみた。
しばらくそこから動けなかった。

この旅の一番の目的は、ヨセミテに行くこと。
次は海を離れて内陸にむかい 山を登っていく。
ヨセミテの素晴らしい景観は 氷河が作ったものだ。
たどり着いてみると、想像以上にスケールがデカイ。とてもとても体験しつくせない。何本ものトレッキングツアーが組まれており、二泊三日のものまである。とりあえず歩き回る。
小川にかかる橋は木が自然に倒れたもの。私が子供の頃にやっていた、ティモテというシャンプーのCM(古!!!)が撮影された草原をみる。
残念ながら初秋だったので枯れかけた雰囲気だった。
ヨセミテには雪どけ水が溢れ出す六月限定で すごい規模の滝が現れるらしい。私が行ったときはもちろんなかったが、あそこに滝が出来るんだといわれても、にわかに信じられない。写真で見る限りそれが六月だけで消えるというのが、もっと信じられなかった。

ヨセミテのバンガローに泊る。周りには、ものすごい数のキャンピングカーが停まっており、テントを張ってキャンプしている人も大勢いた。
ヨセミテの夜の冷え込みは厳しく、持っていたありったけの服を着込む。
寒さに震える私の横で、半袖短パンのアメリカ人が日本ではファミリーサイズのアイスを食べていた。
唯一ある管理棟の売店で いい大人がチョコバーを買って噛り付いている。アメリカ人 恐るべし。

ヨセミテのシンボルはハーフドームという岩(山?)。
ここから昇る朝日を見るために、暗いうちにバンガローを出た。
真っ暗な道を車で進んで行くと 暗闇にたくさんの赤く光るものが!
鹿の目だった。大量の鹿が道路周辺におり、鹿をよけつつ進む。
ハーフドームを眺める展望場所には 先客がいた。
北欧系と思われる若い夫婦だった。聞けばご主人はプロのカメラマン。
フリースのつなぎに包まれた赤ちゃんを連れていた。
北欧系の人種の子供というのは べらぼうに可愛い。本当にお人形みたいだ。ご主人は言った。「自分に子供が出来たら ここで朝日を見せようと決めていたんだ。」と。
当時の私は「こんな小さな赤ちゃんにみせても、記憶にも残んないよ」と思い、こんなに寒いのにかわいそうとまで思った。
でも 今ならあの人の気持ちがわかる。
朝日が昇っていくとき、ハーフドームは光り輝いた。
ハーフドームの美しさだけではなくて、光があんなに美しいものだということをそのとき初めてしった。




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