第1章 第一節「はじまり」


「SOUL LINK」

第1章
第1節「はじまり」

「はじめに言葉ありき…」

この宇宙は、いずれかの魂が目覚め
その宇宙自体を認識したことから始まったといっても良い
それまでは、単なる大きな空間じゃ。

無論…
命はそこいらじゅうにあった。
その材料も…。
いずれ命になるであろうと確約されておる材料も
いくらでもあった。

しかし、宇宙はあったとは…。
“存在していた”とは言えなかった。

大きな海に、巨大な“無”が漂っているようなものじゃ

無論、儂より先に、宇宙を感じた者はいくらでもいたじゃろう
しかし、これも奇妙なる縁じゃと感じて許して欲しいのう。

やはり儂も孤独な者のひとりである。
儂の見てきた“ホラ話”を聞いて欲しいんじゃ…。

そうじゃホラ話じゃ

“真実”を語るとき
人は照れる。
または大いなる脚色もしてしまう
それは、罪なことでもあるが、
しかし逆に…
時としてユーモアにもつながり
人の心にも伝わりや安くもなるんじゃ…。

キッチリ、几帳面に、正確に話すことだけが
真実を伝える手段ではない…。

そう、じゃから
「ホラ話」が、一番好きじゃな。
こんな話をするときにも一番いい手段じゃとも思っておる…。

聞く方のおぬしらも、この儂の話を、半分ホラじゃと聞くスタンスが
結局はいいじゃろうと思うしのう…。

そう…
話をはじめようかのう…。

儂は最初は“小さな音”じゃった。
しかし、只の“音”ではない。
儂が留まろうと思えば、いかなる物のなかにも
生き物の中にも留まれた…。

儂は踊ること
風に乗ること
物に何かを伝えることができた。
無論、どこまでも飛べた。

星の海を越えるときは噴火して飛ぶ石に乗り
彗星に乗り
流星にに乗り換えた…。

多くの星を旅した。

それが楽しかった。

しかし
それはそれは長い旅じゃった。
50億の中で一番長い旅じゃったと言ってもよい

幾つもの星の海を超え
様々な大地にも降り立ち
ただ長い時を彷徨った。

真の孤独でもあった。
今思えば、そうじゃったんじゃろう。

そして、ある時、遂に…。
ひとつの星を愛していることに気づいたんじゃ

なんども
なんども
来たくなる星じゃったんだ。

そう、じゃから儂はまず
その言葉を作った。
なんとかその想いを表現したかったんじゃな…。
そして、音じゃった儂は自信の言葉でそう言った。
「愛」
無論、いまでは社会も国も違うから
全く違う発音じゃが
意味は同じじゃ…。

儂はこれからの儂自身をこの星に捧げようと思った。
その“想い”を言葉にしたんじゃ。

その時…。
初めて奇跡的な事が起きた。

その時…。
初めて儂は、「宇宙」を知ったんじゃ。
そして「儂自身」を知った。

「儂」の居場所はここであった。

空には光が溢れ
海は輝き
大地には命が芽生えようとしていた。
この星は命の宝庫じゃった。

いくらでも命が生まれる力があった。

太陽の光は大地と海を照らし

風はどこまでも命達を運んでいた…。
無数の命を。
そして、今思えば無数の“魂”達も…。

そして儂は風に乗った。

誰かに出逢いたくなったからのう…。
そして、儂はその時、一つ目の“死”を味わった。

しかし、それは幸福なる死じゃった…。
なぜなら、儂はその時に初めて生まれたと言っても良いから…。

儂は海に消えた。

第1章 第1節 終わり

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
(2)終わり、(3)に続く。




© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: