EISUKKE~野球~音楽~娯楽~

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短編小説第2弾~この唄は誰のために~


「こっち向いてぇー!!」
「握手して!!」
ライブ
ここはライブホール。
ライブが行われている。

オレの名前は「タツヒコ」
音楽業界上、「Tatsu」(タツ)
と、登録してある。

黄色い声援も、もう馴れた。
サインも何万回もせびられた。
応援メールも何百万通もきた。
CDも出せば独占状態だった。

今日はボーカルの「Groun」(グラウン)の誕生日記念ライブだ。
メンバーは
ドラムの「Ken.G」(ケン・ジー)
と、オレの三人グループだ。
ちなみにオレはギターをやらせてもらっている。

きっかけは高校の時だった。
もてない三人組が
「バンドやればもてるって!」
と始めたのがきっかけだった。
その三人組とは…そう、今の俺たちだ。

たまたま応募した作品がスカウトの目にとまって…
「目」っつうか、耳か?
まぁとにかくそれで受かって
まぁその作品はぶっちゃけ
ほかの作品のパクリだった。

そして現在にいたる。

ファンの子を家に連れ込んでは、
遊びまくっている。

そんな最悪なバンドだ。

まぁそんなの表には出ない。
それがこの今の現状だ。
ファンの子だって、遊びまわっているって
知ったって別に構わない。
自分も、自分も・・・!!
とせがるのだ。

まったくいい時代なんだか、悪い時代なんだか…

特に遊びまわってんのはボーカルだな。
「Groun」はライブ終わっては家に連れ込んでいるらしい。
ひどいときは、楽屋で堂々と俺たちの前で…

オレはあんまりしてない。
前はしてたが自分が自分でいなくなってしまそうで
もうそんなことはしていない。
今はちゃんと彼女だっている。
遊びじゃないお付き合いをしている。

自分で言うのもなんだけど…上手くいっているほうだ。

ドラムの「Ken.G」は
このメンバーで一番もてないやつで、
チョビデブでめがねでホントさえなかった。
だがこのバンドが売れてくるに連れ、
周りを見習ってやり始めたら、これがどうにか
楽しいようで、目覚めてしまったのだ。
いつもはホントおとなしいが、
そのときだけ性格が変わる恐ろしい奴だ。

ホント夢が無い希望の無いふてくされたバンドだった。

今日、ライブが終わって、オレはすぐさま彼女の待つ、
家へと帰った。
「ただいま。」
「おかえり!!」
満面の笑みで迎えてくれた。
彼女の名は「由奈」
「疲れたでしょ?フロ入って早く…ねたら…?」
優しいことばで気遣ってくれた・
「ああ、そうするよ。」
いつもフロでシャワー浴びながらその日一日の反省をする。
心も体も洗い流された気分になるからだ。
なんか…おっさんっぽいなとはおもっているが
これは欠かせない。

フロからあがるとすぐさまベッドの中へ入った。
隣にいる彼女は電気を消した。

「ねぇ…?」
「なんだ…?」
「私、結構淋しいんだよ?」
「…」
「ねぇ…タツヒコ…私を置いてどっか行かないでよ。」
「…ああ、由奈を置いてったらどこにもいけねえよ」
「…フフッ…ありがとう。」

たくさんの愛で由奈を包んだ。

日が変わって今日はドームライブ最後の日だった。
Groun「えーつぎはラストで、等身大のライクソング…」
「キャー!!うぎゃー!!」
観客の黄色い声援が、一気に悲鳴へと変わった。

デビューにして、最大の大ヒットの曲だった。
俺たちのファンじゃなくても
その曲を聴きにくる人も少なくはなかった

最後のサビだった。

「すきでーすきでーたまらないーほどー」

「お前を愛してい…ジャジャガン…ッツッるよー」

ギターをミスってしまった。
だが、あまりの観客の盛り上がりでミスは打ち消された。

少しオレはホッとした。

ライブ終了後、家に帰ろうとしたら、

「…おい!待てこらァ!」
…Grounだ。
「な、なんだよ??」
「お前ミスっただろ?」
「…」
「てめぇミスっただろうが!!って聞いてんだよ!!」
「…」
その瞬間コブシがオレに飛んできた。
「バシイイイ!!」
そして吹っ飛んだ。

「ごめんの一言もねぇのかへたくそギタリストが!!
センスのねぇやつがでしゃばってんじゃねぇ!!クズ!!」
大声で信じられないようなヤジを飛ばしてきた。

Grounだって、ミスるときもあった、
Ken.Gだって、ミスった日もあった、
なのにオレはなぜ??

「てめぇ・・・お前だってミスるときが・・・!!」

「おおっと、オレはこのバンドの作詞、作曲もしちゃってんのよ?
しかもボーカルで、一番人気、一番実力だってあるのよ??
オレ、前に一流アーティストの元へスカウトされたことだってあるのよ?
だけど、オレは、お前らを選んだんだよ??
今、お前が着てるTシャツはだれのおかげで買えた?
お前がはいてるパンツだってオレのおかげだろ??
なにいっちゃってんの?
今、君捨てたってうちらは一円として失うこともないんだよ?
それで君が頭が先走った言葉を吐くなんて・・・
謝んないとしんないよ…?」

その場で殺してやりたいという気持ちもあったが
確かに、最近はやつもちゃんと自分で曲を作っている。
そして何より、オレはメンバーの中では一番センスがない。
ドラムのKen.Gだって、プロのライセンスを持っていた。

オレはメンバーにとって、溝鼠(どぶねずみ)みたいな
存在だった。

「すいませんでした。もう、こんなバカなことはしません。」

「ホント、ホント、あっとととと、」

バキイ!!

オレの大切なギターが折れた。
「ごめんね!ちょっと足が引っかかっちゃって…
まぁ、オレの怪我と君のボロクソギターだったら
オレの方が大切だよな??」

ぜったいわざとだった。
やつが背中を見せた瞬間俺のコブシが上がった。

バシイ!!

「うがぁぁぁ!!」

ガッシャアン…



ものすごく騒がしい音が楽屋内で音響した。
オレは目の前を疑った。
殴ったのは紛れもなく、
いつもはおとなしい
Ken.Gだったのだ。

「へ…下手くそは黙ってろ」

言い分は酷かったが、なにかとなんか、
おどおどしたような言い方だった。
さっきから目も、合わせやしない。
「…反省して今日は買えるわ」
オレははその場を立ち去った。
「帰れ、帰れ!!」
Grounはオレのことをけなした。

Ken.Gはもの言わず。
立ち尽くしていた。
「ザコが帰ってせいせいしたわなぁ・・・?
なぁ…?Ken.G?」
「う…んそうだな!!へへへ…」
苦笑いしている。
「コン、コン」
楽屋のドアに誰かが、ノックしたようだ。
「はん…あいつもう帰ってきたのかよ!!」
と、Grounはドアをものすごい勢いで開けた。
それは客を出迎えるような強さとはかけ離れていた。

「はぁ~い…Groun~!」
若い女性で少しケバい人が来た。
それに反応したGrounはいきなり抱き付いて、体を寄せあった。
さすがに気まずいと思ったKen.Gはさよならをせずに楽屋を出た。

オレはスタジオを出て、バスで帰ろうと、
乗り込もうとしてた時だった。
「ま、まってぇ~!!」
息が荒く、トーンが高い声はなんとKen.Gだった。
すぐさま、オレはKen.Gの元へ行った。

「…今日、なんなんだよ」
オレはKen.Gを問い質す。
「…。」
「なんか、言ってくれ」
「…」
「じゃあ、なんで惨めな俺が帰るとこを止めた??
え!?なんか言うことあんだろ!?」
オレはその時慰めの言葉が欲しかったのかもしれない。
それになんとか答えようと、Ken.Gは
「え…と、さ、あんま…無駄なこと…考え…ない…方が…いいよ??
へへへ…下手に反発すると…ほほほっ本当なにもかもが…うう失うことになるよ…?
ん゛ん゛っあ゛あ゛…えっと
Grounの言う事はむかつくよ…そりゃぁねぇ…
だけど
言ってる事に間違いがないわけだよ。
俺らさ、唄も大してうまくない、楽器だって大してうまくない、俺のライセンスはほんと偶然。少し裏でお金も動いたよ…あとさ、ルックスもない、センスもない、ほんとだめだよ…
だけどさ、俺たちは俺たちで頑張ってきたじゃん?
なんかさ、こう、頑張れる環境を作ってくれたのは、紛れもなくGrounだよ?
音楽が楽しいと思えたのもきっとGrounのおかげだよ?なのに」

「奇麗事言うんじゃねぇ!てめぇは女遊びしてんだろうが!
このバンド始めたのも、元々、モテたいって気持ちからだろ!?所詮はそうなんだよ!やましい気持ちから始まって、やましい気持ちで崩れるんだよ!そんなもんなんだよ!」
冷静にKen.Gは答えを出した。
図星には違いないが、自分が勝っているような言い方で、

「俺が殴った意味分かるか?」
オレはすこしひるんだ。

「俺は、Tatsuがもう少しこのバンドにいて欲しいと思ったからだよ。それで、Tatsuを止めたっていうわけ。少し反省しといて。」

「…」





その晩、オレは深く考え込んだ。


そして、一週間がたったころだった。
「え…と重大ニュースがあります。」
会社の広報担当の人だ。
メンバーは全員そっぽ向きながら聞いていた。

「なんと、全国ツアーが決定!!しました!!(ぱちぱち~)」

「で?何、成功したら?」

「名実共に、このレコードの看板アーティストになり、そして…アメリカでライブです!!」

「ほほう…いいねぇ…ま、成功すんのは目に見えてますが、一つ問題点があってねぇ…ま、いいでしょ。やりましょう。」

Grounがオレの方をチラチラみながら言った。

むかついたが別に気にはしなかった。

逆にこれをチャンスだと、理解したためであった。


~ツアー6ヶ月前~


その日からオレはギターを今までの10倍、20倍は練習した。
ギターは由奈が無理して買ってくれた。
以前よりもギターには執着心があった。
今度、壊そうとした奴はほんとに殺してしまいそうなほどだった。
「このコードチェンジが…きつい!!」
これは自分との戦いだった。
今までは「空演奏」でごまかしていたが、
そうはいかなかった。
ツアー中「空演奏」に頼ることができるが、
自分のためにならないと判断し、
「実演奏」で見返そうと思ったからだった。
そんな日々がしばらく続いた。





~ツアー3ヶ月前~

チケットはとうに売り切れ、チケットに
プレミアまでがつき始めた頃だった。
オレはだいぶ上手くなってきた。
一日10時間以上は練習している。
仕事はツアーが始まるまで休止中だ。
なので余計、ファンは楽しみにしていた。
普通、音あわせしてもいい時期なのだが、
このバンドはそんなことはしない。
ぶっつけ本番に近い状態だったのだ。
だがオレは黙々とギターと戦っていた。

~ツアー1ヶ月前~
かなりボルテージは上がっていた。
あまりにもギターに集中しているので
由奈が心配した。

「ねぇ…少しは休んだら?」
「いや、俺はやすまねぇ…!!」
ギターの練習真っ只中だった。
いつも家で練習していた。


「…気をつけてね。」
「わかってるよそんなの。
…ツアー、必ず成功させてやるから!」
「…がんばって」


~ツアー一週間前~

さすがに音あわせしないとまずいので、
ツアー会場の近くのスタジオで練習していた。
メンバーは個人個人で練習して、
一言も声を掛け合わなかった。
練習していて、たまに始まりの部分がかぶると
一緒に演奏した。
Ken.Gとは目が合うが、
Grounとは一切目が合わなかった。
だが、曲としては息がぴったりだった。





そしてツアー前日。

会場は東京アリーナ。
3万人は入る、大会場だった。
それで地方各地をまわり、
各会場のチケットが売り切れというから驚きだ。
「みかえすぞぉ…自分のため、ファンのため、そして
由奈のために…!!」
由奈はオレがメンバーの中で一番いらないということは
知らなかった。
明日は由奈もくる!!



そしてツアー当日…

「きゃぁぁぁぁぁぁl!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「Gさま~~~~~~!!」
「こっちむいてぇ~!!」
観客の声の嵐、フラッシュの嵐だった。
これ以上の快感はないだろう。
そしてライブが始まった。





「えーラストは、等身大のライクソング」

「キャーーー!!」

「すきで すきですきでー」


「お前を愛しているよー(ジャジャーンピロピロリ~)」




みごと成功した。
ミスもなく、もう、完璧だった。
ライブ終了後、
「…てめぇ…やればできるじゃん。」
Grounからは思ってもみなかった一言だった。
「…ごめんね、殴って…」
Ken.Gもオレの変わりように驚きを隠せない様子だった。

ーこれで成功じゃあない。

 こんなとこで満足していたら

 B級、C級の奴らと一緒だ。

 俺らが目指しているのは、

 ファンの人の心に響くサウンドを

 これからも、ずっと送り続けることだ。-



オレはそう、心に誓い、成功記念みたいなかんじで、
打ち上げをした。

が、長居はしなかった。

酒を少し飲んで、車に乗り、

由奈の元へ行くためである。
オレは車を急がせた。
「♪~♪」

と、その瞬間だった。
少しふらっと、してしまい、緩やかなカーブさえ曲がりきれなかった。

気づいたときはもう手遅れだった。












悪夢が襲った。俺は二度とギターを演奏できなくなってしまった。

え、どんな症状だって?

こんな重症がになった原因が…

…フ、笑える話さ、飲酒運転をしていたら、

電柱に、バコーンって…。

それで、脊髄を傷つけ、体の右半分の自由が利かなくなった。

幸い、飲酒は見つかっていなかった。

それで、聞いてくれよ…??

ツアーは続行、オレが事故にあった次のひ、普通にライブしてた。

代理に、「Matsu」という、アメリカで修行を

つんだ、移植のギタリストだ。

もちろん腕は、ハンパなく上手く、オレとじゃぁ比べ物にならない。

しかも、イケメン、曲作れる、歌える。

まさに、音楽のために生まれたような人だった。

ファンはオレをすぐに捨てて、早くもMatsuは

オレの人気より上回っていた。

レコードもオレをすぐに捨てて、

やめると一言も言ってないのに勝手にやめさせた。

もう、何もかもを失った。

しかし、不自由なオレを一時も見捨てず、

そばにいてくれる一番のたからもの、

「由奈」がいた。

容態が少し収まって、話せる程度になった。
病院のベッドの上にいる俺にずっと話しかけてくれた。
「ねぇ…?寒くない?」
「病院内だから…別に。」
「…疲れてる?」
「疲れるわけがねぇよ…暇だけどな。」
「ねぇ…私、邪魔?」
「…」
「なんかいってよ」
「…。」
「もう、私、必要ない?」
「。」
「じゃあね…今までありがとう。」
由奈が病室から出て行こうと、背中を見せた。
頭が真っ白になる前に声を出した。
「ま、待ってくれ!!
行かないで、行かないでくれ!!
今、由奈がいなくなったら、オレには何もなくなる!
失うものさえ…無くなってしまうんだ!!」
必死にできる限りの声を出した。
俺にとって駅のホームで向かい側の人にしゃべるくらいだ。
だが多分、普通の人がしゃべると同じくらいの声の大きさだった。
少ししてからだった。由奈が語り始めた。

「…ありがとう。私、その言葉が一番聞きたかった。
私のこと必要としてくれたのは、タツが初めて…」
しんみりとした雰囲気だった。
いつもだったら無言で抱きしめていた。
だけど今は由奈に一言伝える程度のパワーしかなかった。
情けなささえ、なくなっていた。
「ねぇ…私さ…前の彼氏の時、凄いショックを受けたの…
前3年間ぐらい付き合っていて、私は勝手に
彼氏も私のこと本気で思っていてくれるはず。
と思い込んでいたの。
で、いきなり別れよう…って
当然聞いた「なんで?」と…そしたらあっけなく、
「お前はつなぎの女!別に?お前のこと好きになったことなんて
一度も無いよ。じゃ、他の女のとこ行くから。じゃぁね!」
「ぁっ…」
言い返す言葉さえ見つからなかった。
それから相手のこと信じられなくなって、
恋愛に怯えていた。だから今日Tatsuに聞いてみたの。」

涙がぽろぽろ落ちていた。病院のベッドは一部分だけ湿っていた。
「どこにも行かないでくれ、お願い…だ…」
由奈は涙を拭って、
「うん。いつまでもここにいてあげるから。」

由奈との絆を確かめ合ったオレは
次の日から由奈とともにリハビリを始めた。
立ち上がる練習、歩く練習、握力…
どれもつらかったが、一番つらかったのはトイレだった。
普通、看護婦がやってくれるものを、
由奈が進んでやってくれた。
その熱意はすごかった。
「がんばって!!」
「ぐぅ・・・」
「あと少し!!」
「むりむり!!ぁ~ダメだわ!!」
「ダメ!!諦めないで!!
タツが諦めたら私の夢も途絶えるから!!
一緒にまた散歩しよ?また、遊園地でも行こう?」
「ぐぁぁぁっと!!…ふう・・・できた。」
「よし!!OK!!OK!!フフッ!」
どんなときも由奈は笑顔を絶やさなかった。
本当にオレに尽くしててくれた。
オレも由奈の期待に応えようと頑張った。
いつか、由奈に、由奈のための、
最高の一つしかないLoveソングをうたいたい!
そう、心に決めていた。


1年の月日がたった。
周りが信じられないような感じだった。
オレはとうとう、歩けるようになり、普通の人と、
同じようなことができるようになったのだ。

一方、オレに対する悪いうわさがたえなかった。
「麻薬中毒でいかれた」、「本当は元々いらなかった」
「女遊びに明け暮れている」、「実は亡くなっていた!!」
など、どれもマスコミがおもしろおかしく
適当に書いていたのであった。

そしてGrounたちはツアーも無事、成功し、
アメリカ行きも検討されているとか…
オレは後悔とか、嫉妬とか無い。
だって、何よりも由奈と一緒にいた時間がこの上ない
最高の時間だった。

3日後、退院することが決定した。
もちろん由奈も喜んでくれた。
実は、こっそりと、由奈には内緒で曲を作り、ギターも練習していた。
三日後、オレの自宅で待ち合わせだ。
そして、告白する。
「結婚しよう」と。
仕事は祖父が経営してる、魚屋をつげばいいことだし、
三日後、静かな生活が始まる、
そう願っていた。


三日後。

オレはたくさんの人に別れを告げ、無事、退院した。

スキップしながら、ギターもって、一番のLoveソングを

歌いに行く。由奈が待ってる、オレの家で…

帰る間は、ルンルン気分と、不安でもいっぱいだった。
どっちも釣り合ってくれたおかげで逃げることなど、
1%も考えやしなかった。
自宅のアパートの前で立ち止まった。
だが、失うことなんてないさ、と開き直って
一本の指で一つのボタンを押した。今までで一番重いピンポンだった。
「ピンポヌゥ…ン」
壊れていたことに気づいた。
まぁいっかと中で待っているはずの由奈を想像して
早く、早くと心が焦った。


カギを使って一年ぶりの我が家に帰った。

空気が違った。

こう、なんか新鮮な気持ちだった。

ある異変に気づいた。

…由奈がいない。探しても、探しても、いない。

まぁ、待ってれば来るだろうと、勝手に思い込み、

久しぶりの家を楽しんでいた。



夜になった。が、一方に由奈が帰ってこない。

さすがに心配したオレは、ケータイに電話をかけた。

…が、出ない。

そしてオレは由奈がいなくてものすごい不安になった。

考えも無しで家を出た。

「由奈ー!!由奈ー!!」
呼んでも出てくるがないのもわかっていたが、
これしか方法が無かった。

思い当たる場所を探した。

が、いない。
散歩道??いや、でもそこはさっき通った。

遊園地??いや、今日は休園日だし…

ケータイが通じない…はっ!まさか…??

オレはなれていない体で走った。

ケータイが通じない場所、

病院へと。

オレが退院したってことはとうに知っているはず。

だから何らかの事故に巻き込まれて…!!

必死に走った。他人と肩がぶつかろうが、

道端に1万円落ちていようが、関係なく、

ただ、病院へと走った。

息も荒くなり、呼吸が困難な状態になってもなお、

走り続けた。

「由奈ぁー!!」


と、病院近くの公園のブランコに座っている

女性がいた。

とりあえず問いただしてみた。

「…すぅすいませぇん…はぁ…こちらで…由奈という…」

「由奈…?さぁ・・・ねぇ…」


「…?由奈!!」

「あ、ばれちた。」

その瞬間初めて由奈に拳を挙げた。

ベシン!

「あ…ぅ…」

「ふざけんな!!オレがどう心配したか!!
 家にいろっつっただろが!!
 で、必死に探して、いきなり、「あ、ばれちた。」
 とか…ふざけんなよぉ!!おい!!」

オレは由奈の体を揺さぶった。
由奈は下を向いたままだった。

「怖かったの…。」

「え・・・?」

「私、一人になるのが怖かったの…

 このまま、タツが、消えちゃうんじゃないかって…」

「そんな…」

「私だって、タツから離れようとした。

 けど、私のこと本気で必要とする姿に…心打たれて…」

「じゃあなんで…オレが、お前から離れるなんて思ったんだよ?」

「だって、もうタツが自由になったらタツはまた、
 いろんなことに挑戦するじゃない?
 体が不自由だったときのタツは確実に私のもの…
 だけど…今はもう、他の女の人とだって出会えるし、
 いろんなことができる…
 タツのためにできたことは介護することと、
 そばにいることだけだった…
 今はタツはいろんなことを求めてくるだろうし…
 だからそれが怖くて…逃げ出しちゃった…」

「バカやロ!!
 オレが求めるのは完璧な女性とかじゃねぇ!!
 あの…その…ゆ、由奈が欲しいんだ!!
 求めるのは…由奈…だけなんだ!!」

「…ありがとう・・・。」

オレは必死に担いで持ってきたギターをその場で弾いた。

ヘタクソな唄、その晩ずっと公園中にばらまいた。

だけど、この唄は誰のために?

この唄は…由奈のために。






今は幸せに暮らしている。
まぁ聞いた話なんだが、
Grounたちは今はなんとアメリカだけじゃなく世界を
回って活躍してるらしい。

まぁ、嬉しいな。

オレは元ミュージシャン

だけど今は魚屋と、

たった一人のために唄う、立派なミュージシャンだ。












感想、など待ってます!!









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