5


その声は見た目より若々しかった。
いや、若者の声そのものだった。少女は光を宿した瞳をその男に向けた。
まるで射貫くように。その男は細くため息をついた。
もう、何も言わぬというように・・・。その男は少女の瞳を真すぐ見た。
『つらいぞ?』
淡々としたその声にも、少女は怖じけずかなかった。
そして、瞳で訴えたのだ。「分かっています。」と・・・。
その瞳はもはや少女のものではない。

(・・・朝・・・)
稜はゆっくり瞼を開けた。その表情はとても重々しい。
(また・・・あの時の夢・・・)
窓から射し込む光を遮るように手をかざす。
稜の過去を吹き飛ばすように今日も晴れ晴れとしていた。
これで少しは気持ちが晴れるというものだ。
ベットの中で背伸びをして、時計を捜した。次の瞬間、言葉を失った。
いや、声になっておらず、本人さえも何て言ったのか分からずにいる。
時間は9時。転入して1週間もたたず、大遅刻である。

橘川充は学校中に響き渡るんじゃないかというぐらいに笑っていた。
「・・・そろそろ、笑うのやめたらどうだ?」
彼・・・稜の綺麗に整った眉がきゅっと寄り、青筋が通った。
充は、そんなことなど気にしていないというように笑い続けた。
そして、当たり前のように隣に座るのだった。
充が言葉を発するまでには、まだ時間がかかりそうだ。

稜は、いかにも不機嫌そうにほお杖をついた。
その様子を見ていた、周りの者たちは、背筋が凍えている状態だった。
知らぬのは稜と充ばかり。
まっあくこの二人は今からこんな状態で大丈夫なのだろうか・・・?
作者の私までもが不安である。

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