FANG OF EDEN

D.o.G 第1話



   /0 : 『序』


 誰かに尋ねたことがあった。
――――『ココロ』って、何?
 誰かは答えた。
――――それは、人の意思だよ。

 誰かに尋ねたことがあった。
――――どうして、人は他人を嫌うの?
 誰かは答えた。
――――『ココロ』がすれ違うからだよ。

 誰かに尋ねたことがあった。
――――どうして、『ココロ』はバラバラなの?
 誰かは答えた。
――――人自体がひとつじゃないからだよ。

 誰かに尋ねたことがあった。
――――どうして、ひとつじゃないの?
 誰かは答えなかった。
 そこで初めて気がついた。


 人は違うが故に誰かを愛することが出来るのだと。
 そして、違うが故に戦ってしまうということにも。

・・・・・・何だ、簡単じゃないか。
 だから人は哀れなんだ。



 かちり、、かちり、、かちり、、
――――時を刻む音がする。
 かちり、、かちり、、かちり、、
――――生が死ぬ音がする。

 そうやって世界は死んでいく。
 無限に続く螺旋は死を生み出し、同時に生を生み出す。
 慟哭のリフレインは止まらない。

・・・・・・何故なら、それが人の性だから。



   第1話 「鼓(いのち)動」/1(VALKYRIE side)



 瞼をこじ開けるようにして、光が網膜を刺激した。朝日にしては鋭いその明かりは、人工的なものに違いない・・・・・・そんなことを寝起きの胡乱な意識の中で考える。
「なんだ、まだ寝てたのか」
 溜息混じりの声が耳朶を打つ。呆れた、と肩をすくめる気配が空気越しに伝わる。首だけを動かして傍らに置かれた電子時計を見れば、時刻は既に午前一○時を回っていた。
「睡眠の取りすぎは生活リズムを狂わすぞ。ここのエースヴァルキリーともあろう奴が、そんなんでどうする」
「余計なお世話だ」
 お節介な幼馴染に短く返して、ラウディス・フリストは目を覚ました。
 俺の寝起きの悪さを知っているからなのか、ネレイユは「まったく」と呟いただけで退散していった。機嫌が優れないまま、のろのろとベッドから腰を上げて着替えを探す。寝る時は上半身裸というのが、俺の昔からの寝方だ。別に意味はなく、ただ邪魔なだけだ。
 お目当ての上着は、散乱する新聞紙の下に埋もれていた。消えない頭痛にイライラを感じながら、新聞を蹴散らしつつ上着を羽織る。
 どうやら、昨日の出撃から帰還した後、すぐに寝てしまったらしい。この頭痛は、その寝すぎによるものなのだろう。
「・・・・・・・」
 洗面台に備えられた鏡に映る自分の顔は、ひどく不機嫌そうな仏頂面だ。こめかみに疼く鈍い痛みに奥歯を噛み締めて、俺は部屋を後にする。
 今日は政府からひとりのヴァルキリーが派遣されてくるので、そいつを出迎えなければならない。面倒なことこの上ないが、これも仕事なのでやらなければならない。噂によれば、そいつは機甲軍の中尉だという。
 そいつがどのような奴なのかを話す前に、今の世界の現状を説明するべきだろう。
 想暦一九九○年、世界規模で起きた大恐慌は、経済対策を導入してどうにかなるようなものではなかった。自分たちの力でどうにもならないのなら、他から奪うしかない。そうやって戦火は拡大していき、どこの歴史書にも載っている『第三次世界大戦』は起こった。だが、元々少ない国家資産が枯渇するのは時間の問題であり、終戦へと落ち着くのに大した時間は要さなかった。
 終戦後、大戦がもたらした影響は凄まじく、世界から国境は消えていた。これを境に、新しく世界を創造する運動が各地で見られるようになる。
――――大戦前と同じ世界の復興を謳う“再建派”。
――――全く新しい新世界の構築を謳う“改革派”。
 この二大派閥は日に日に巨大化していき、二○○八年にはそれぞれ“アトラティア”・“ラピュテリス”と名を変えて、世界を二分する対立国家が誕生した。
 時が過ぎ、二一五○年現在。両国の争いは熾烈を極め、急成長した文明による戦争が繰り広げられているというわけだ。
 俺が所属する【機甲傭兵団メルセゲル】はラピュテリスに雇われていて、機甲軍隊に配属されている。
 機甲軍隊というのは、歩兵に代わる新兵力《人型戦術決戦機・メルトマキナ》で構成された軍隊のことだ。メルトマキナとは、高機動で敵陣を駆け、圧倒的な火力を以って相手を攻撃出来る人類の新兵器で、書類上では「M.M.」と表記し、これに搭乗する人間を「ヴァルキリー」と呼ぶ。そして、M.M.を所持する傭兵団を機甲傭兵団というのである。

 欠伸を我慢してスライドドアを抜ければ、そこはメルセゲルが牙城、巨大飛空戦艦アルファスクエアのブリッジだ。コックピットとオペレータルームが一緒になったここでは、休むことなく一般クルーたちが勤務している。が、ヴァルキリーである俺には関係がないことだ。堪え切れずに出た欠伸に涙目になりつつ、ブリッジの入り口とは団長席を挟んで対称の位置にあるミーティングルームへと足を運んだ。


   ・・・


「―――――というわけで、今日からメルセゲルにヴァルキリーとして編入されるヴェイル・ハートレッド中尉だ」
 ラピュテリス機甲軍作戦指揮補佐官であるネレイユの長い紹介を経て、ヴェイルとかいう奴が一歩前に出て敬礼する。
「本日より、機甲傭兵団メルセゲルのM.M.部隊に編入するヴェイル・ハートレッドだ。詳しいことは、指揮補佐官のおっしゃった通りだが、何か質問はあるか?」
 何回目か解らない欠伸を噛み殺していると、俺の相棒が脇腹を突付いて耳打ちしてきた。
「・・・・・・なんか、変な奴が来ましたね」
 俺はそれに首肯で返答し、再び欠伸を噛み殺すことに専念した。
 何故なら、人の身の上話などに興味の欠片もなかったからだ。



 メルセゲルは現在、ラピュテリス機甲軍本部の大空母ロンギヌスに着艦している。ただでさえ巨大な全長を誇るアルファスクエアも、この大空母には適わない。火力も充実しており、大規模な都市コミュニティのひとつは軽々と吹き飛ばせるらしい。
 そもそも、幾つも存在する機甲傭兵団の中で何故メルセゲルが雇われたのかというと、その恵まれた戦力だけが理由ではない。たとえどんなに不利な戦況にあっても、必ず突破口を切り開き、契約を果たして帰還してくる信頼性。軍の機甲開発チームに引けを取らない兵装部門の技術力。これらを同時に持つからこそ、メルセゲルは雇われたのだ。いい意味で評価がつけられない傭兵団と言えるだろう。

 強烈な白い電光が等間隔に並べられた兵器庫に、取引先と兵装部門が共同開発した新しいM.M.が搬送されてきた。試作機第六六六号目であるこの黒い機体は《EMPEROR-type.666:ZAMIEL》といい、俺が搭乗している愛機《EMPEROR-type.0:LEGiNLEiF》を基に開発された兄弟機である。
 レギンレイヴは、M.M.の生みの親のレイニー・スターク名誉博士が製造した世界最古のM.M.であり、現存するM.M.の中で最強の名を冠する機体だ。それの兄弟機というだけはあるらしく、性能もレギンレイヴに劣らないものを持っている・・・・・と書類には記してあるのだが、まぁ、要するに、結局はヴァルキリーの腕次第で強さの良し悪しは決まるのだ。機体の性能など、その後に付属してくるのであって、機体が高性能=最強なんていう式は子供の考えることである。
 俺は本日数十回目の欠伸を漏らしながら(我慢するのはやめた)、電光に照らされる黒く堅牢そうな機体を眺めた。
 ザミエルのフォルムは凹凸が多く、滑らかさがない。それはまるで、神話に出てくる悪魔の如く風貌だ。
「この新型機は、<PROJECT-666>で製造された中近距離型のM.M.だ。主な動作方法は一般のものと同じだが、動力機構をバージョンアップしてあるからピーキーな動きをする。
 ヴァルキリーはハートレッド中尉で登録されてあるんで、彼以外は乗れないぞ」
 兵装部門主任のディックが、頼まれてもいないのに解説をし始めた。整備班の連中は、本当に機械が好きなようだ。俺が今まで生きてきた中で、彼らが幸せそうにしているのは機械をいじっている時だけな気がする。
「軽装甲に特殊合金を加えることで、耐久性を上げてあるんだ。基本的には接近戦で使うのがいいだろうな! そうしなかったら、この機動力が無駄ってもんよ!」
 ガハハハ、なんて笑ってやがるディックに欠伸をくれてやり、直立不動の姿勢で傭兵団の面々を見やるネレイユを横目で流し見る。
 彼女は、ラピュテリス機甲軍の中で七番目に発言権のある階級に僅か二十歳でなった才女だ。なんでも、父親が元ヴァルキリーだったらしく、それに影響されてラピュテリスのヴァルキリー養成学校に進学、首席で卒業。機甲軍にヘットハンティングされてから数年を経て、今の作戦指揮補佐官の地位を得た。
 俺とは昔、通っていた孤児院が同じで幼馴染だった。いじめられてビービー泣いていた彼女が、よくここまで頑張ったと思う。俺がメルセゲルに入団した頃から連絡を取っていなかったため、ロンギヌスに着艦してから廊下ですれ違った時、声を掛けられるまで全く気づかなかった。
 俺の視線に感づいたのか、目線をこっちに向けて「余所見をしないで、気をつけ!」とアイコンタクトを送ってくるので、片手をひらひらと振って了解の意を示す。ネレイユはむっとした顔で俺を睨んでいたが、諦めたように未だに解説を続けるディックに視線を向けた。
 大声で朗らかに笑っているディック。
 ・・・・・・全く、飽きない奴だ。


   ◇


「・・・・・・で? どうして俺なんだ」
『仕方がないでしょ? あなた、うちのエースなんだから』
 レギンレイヴのコックピット内。モニター端に移る映像回線では、専属オペレーターのミシェルが苦笑いをしている。
 搬送されたザミエルの動作テストが終了した後、ヴェイルの要望で模擬戦闘が行われることになったのだが、運が悪いことに俺が抜擢されてしまった。断ろうと思ったのだが、ネレイユの眼力に負け、この始末である。
『ほら、元気出して。本気でやっていいんでしょ? だったら、エースの実力見せつけちゃいなさいよ』
「・・・・・・了解」
 バレないように舌打ちを一回(バレたらネレイユに何を言われるのか解ったもんじゃない)、溜息をしながら「起動」と呟く。
<おはようございます BSEEIからの遺伝子構造情報を確認 ・・・・・・主と断定しました>
 電子音声は女性のものだ。彼女はレギンレイヴの自律戦闘支援ユニット(=戦闘支援AI)、【HILDR】である。
「システムの起動を確認」
<全関節部の稼動状況、良好 火器管制システム、オールグリーン 動力機構、正常 全システムの起動を確認>
 前面のモニターが外の景色を映し出す。カメラアイから送信された映像は、夕焼けに染まる森林地帯を鮮明に映していた。
「・・・・・・面倒くせぇ」
<機体前方にRV反応 映像回線をキャッチ、開きますか?>
「あぁ、頼む」
 モニター端に映像が開く。相手は言うまでもなく、ヴェイル・ハートレッド中尉だ。
『協力、感謝する。だが、手加減は無用。本気で来い』
「勿論、そのつもりです。・・・・・・どうして、俺を?」
 露骨に嫌そうな顔で訊いてみる。
『ここで一番腕の立つヴァルキリーを指名しただけだ』
「・・・・・・そりゃあ、どうも」
 一方的に回線を切って、俺は操縦悍を握る。幾度となく死地を共に潜り抜けてきた愛機のそれは、体を延長したかの如く手に馴染んでいた。
 一度瞑目してから、深呼吸をする。体内に溜まった異物を呼気と一緒に吐き出すように深く、深く。
 その全てが済んでから、ゆっくりと顔を上げる。頭と視界はクリアに澄み渡り、まるで初めてこの世に生まれたかのようだ。・・・・・・いや、この操縦悍を握っている時間だけは、“本当の俺”が目覚めるのを実感出来る。
「誰であろうと、容赦はしない」
 呟きは虚空に消えるが、燻る闘志は燃え盛っていく。
 モニターに映る黒の機体に据えられた目は、彼の貌を完全に戦士のものへと塗り替えていた。

――――始まりは、刹那。
 模擬戦闘であるため、互いに射程のある武器は持っていない。あるのは、接近戦用のものだけだ。
 力強く地を蹴ったザミエルが、僅かな残像を残して疾駆する。本来ならば、優秀なレーダーでさえ感知出来ないほどの速さであろう。しかし、
「――――なッ!?」
 レギンレイヴの両腕はしっかりと振るわれた拳を受け止めていた。常人には見えなくても、ラウディスには視えていたのである。
「くッ! 出来る・・・・・・ッ」
 ヴェイルは毒づきながら、操縦悍を握り直す。どうやら、本気でいかなければ負けそうだ。
 素早くザミエルを後退させ、腰から一対の剣を抜く。徒手空拳で仕留められないのであれば、本職の武器で攻めればいい。
「次も同じと思うなよ」
 久々の強敵に、ヴェイルは高揚していた。


「ツイストソード、か」
 近距離戦に長けた武器を抜いたということは、手加減をしないで来るつもりらしい。
 ツイストソードは刃が鋸状になっており、それを高速で往来させることによって切れ味を高めている武器だ。イメージ的にはチェーンソーが近い。
 いくらレギンレイヴが防刃仕様だからといって、あの刃で斬られればひとたまりもないだろう。・・・・・・ディックのニヤニヤした笑顔が脳裏を過ぎる。彼ならきっと、「おや? こりゃまた派手に食らったなぁ。気分でも悪かったのか? ガハハハハ」なんて茶化してくるに違いない。それだけは、どうしても避けたい。
 ラウディスは、意地と面子にかけてこの相手を撃破することにした。本当は模擬戦闘なのであるが、最早そんなことなど頭には欠片も存在していない。
 売られた喧嘩は必ず勝つ!
 それが、戦場での生き方だ。
「そっちがそのつもりなら、こっちもそのつもりで行くぜ」
 ラウディスの思考が、BSEEI(脳信号簡易暗号化機器)によって【HILDR】に転送される。彼女はそれを瞬時に理解し、機体の動作に反映させた。
<ヴァーニアブレード、機動>
 音声の後、左腕に装備された無骨な大型のEN兵器が唸りを上げた。内部から発せられるヴァーニアの粒子が収束され、熱エネルギーの刀身を形作る。その温度は実に、摂氏五○○度は超えている。
 灼熱の蒼い刀身が、レギンレイヴの胸元まで上げられた。黄色く光る眼光が、陽炎にゆらめく。
 双刀を交差させて構えるザミエルに、視界とリンクした照準を合わせる。モニターに、「LOCK」の表示。青い照準が赤へと変わり、攻撃範囲内であることを示す。
 長い、静寂。
 動力機構から生み出されたヴァーニアが、ブースターから放出されて緑色に輝く。
 互いの集中がピークに達したその瞬間、両機は弾けるようにして駆け出した。
 ザミエルが振るった左刀を半身開いて避けると、開いている右手でザミエルの左腕を掴む。隙を与えずに蒼き灼熱の刀身を胸部へ穿とうと突き出すが、逆手に持った右刀の刃で遮られてしまう。
「・・・・・・ちッ」
 地面を蹴って急速後退し、己の左腕を確かめる。・・・・・・なんて切れ味だ、掠った程度のくせに大部分を削られているではないか。もし判断が遅れてあのまま鍔迫り合っていたら、間違いなく左腕はもっていかれたであろう。
「上等だぜ、おい」
 ラウディスの闘気が膨れ上がり、口角を不適に吊り上げる。それはまるで、獲物を定めた猛禽類のようだ。
 損傷した左腕は、もう使わない方がいい。
 経験からそう判断し、右肘に装備してあるエッジを起こす。
「次は、ねぇぞ」
 腰を落として新たに構えるレギンレイヴは、闇をも殺す魔帝の姿を連想させた。


 戦闘AIが、敵武器を確認した。
「傷が浅かったか」
 右腕を不吉に掲げる相手の武器は、エッジと呼ばれる新兵器である。普段は剣尖を肘後方へ向けて収納し、使用する際は刀身を起こして装備する。刃上を薄くヴァーニアの粒子が流れていて、これにより物理的切れ味に特化している。その切れ味は、自分が持つツイストソードに並ぶと聞く。
「受け太刀が出来るというわけか。・・・・・・だがッ!」
 ザミエルの残像が、レギンレイヴを取り巻く。高速移動による影分身。全方位一斉の刺突。
「いくらエースと言えど、これは避けられまい!」
 繰り出された刺突が、レギンレイヴの姿を隠す。
 手ごたえは、確かにあった。
 しかし、それは受け止められた方のものだ。
「――――なにッ!?」
 ツイストソードの刀身は、レギンレイヴに見事に防がれていた。
 鋸状の刃がエッジにしっかりと受け止められ、回転不良を引き起こしている。それは威力の相殺どころでなく、完全に武器破壊の域である。
 破壊され、回転しなくなった刃は使い物にならない。しかし、ヴェイルの驚愕は他にあった。
「まさか・・・・・・」
 そう。まさか。
 視認出来るはずのない速度で回転する刃を、この男は見切ったというのだ――――。
「・・・・・・信じられん」
 かなり腕の立つヴァルキリーであることは噂に聞いていたが、これは完全に予想を遥かに上回っている。いや、異常な操縦術と言うべきか。この技量、簡単に例えれば機甲軍一個中隊は軽いだろう。もしかしたら、それ以上かもしれない。
 夕焼けに照らされる森林の中、自分を睨む黄色い眼光に戦慄を覚えた。
 まずい。
 相手はこちらを壊す気でいるッ!
「―――――ッ」
 距離を取ろうと図るが、遅い。恐怖に染められた精神は、身体の反応を遅らせてしまう。
 再び唸りを上げたヴァーニアブレードに、ツイストソードが切断される。レギンレイヴは振りぬいた左腕を後方に引き、刺突の構えを取った。


 狙うのは、M.M.のコアである胸部。
 レギンレイヴが一歩踏み出し、ザミエルを穿とうとした刹那。
<アルファスクエアより入電 最優先事項と認識>
 【HILDR】の音声で動きを止めたブレードは、ザミエルの胸部までほんの数メートルであった。
 いくらラウディスとて、本部からの回線は無視出来ない。
「・・・・・・繋いでくれ」
 横のモニターに映像回線が開く。そこに映っているのはメルセゲルの女団長、イリーナである。
『そこまでだ、ラウディス。至急帰還してくれ、緊急事態だ』
 イリーナのいつになく真剣な面持ちから察するに、敵襲だろうか。どちらにせよ、取り合えず戻った方がよさそうだ。
「了解」
 操縦悍を捻り、レギンレイヴを百八○度旋回させる。全ての武器に制御を掛けてセーフティにした後、命拾いしたヴェイルに事の報告をする。
「アルファスクエアから帰還命令が出ています。恐らく、敵襲かと」
『・・・・・・了解した』
 返事を聞いて回線を切る。
 早く帰らねばいけない。何故なら・・・・・・

 ・・・・・・イリーナの横に立ったネレイユが鬼の形相だったからだ。

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: