まど・みちお



         びわは
         やさしい きのみだから
         だっこ しあって うれている
         うすい 虹ある
         ろばさんの
         お耳みたいな 葉のかげに

         びわは
         しずかな きのみだから
         お日に ぬるんで うれている
         ママと いただく
         やぎさんの
         おちちよりかも まだ あまく








              カ ニ

          カニがカニッとしているのは嬉しい
          カニがそれを気づいていないらしいので
          なおさら しみじみと...

          ああ こんな私も私っとしていることで
          だらかを喜ばせているのかもしれない
          私がまるで気づかないでいるとき
          いっそう しみじみと...

          そう思うこともできるんかなぁ
          と私は私を胸あつくさせた









もうすんだとすれば これからなのだ
あんらくなことが 苦しいのだ
暗いからこそ 明るいのだ
なんにも無いから すべてが有るのだ
見ているのは 見ていないのだ
分かっているのは 分かっていないのだ
押されているので 押しているのだ
落ちていきながら、昇っていくのだ
遅れすぎて 進んでいるのだ
一緒にいるときは ひとりぽっちなのだ
やかましいから 静かなのだ
黙っている方が しゃべっているのだ
笑っているだけ 泣いているのだ
ほめていたら けなしているのだ
うそつきは まあ正直者だ
おくびょう者はど 勇ましいのだ
利口にかぎって バカなのだ
生まれてくることは 死んでいくことだ
なんでもないことが 大変なことなのだ


© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: