何が私を変えたのか?


 ㈱扶桑社の別冊エッセvol.20 『捨て上手、片づけ上手は暮らし上手。』 という真っ赤な表紙のムックです。
 あまり本を買わず、立ち読みをしてから一度うちへ帰ってよく考えて後で買う私でしたが、この本は即決でレジへ持っていきました。その日のうちに一気に全部読み、その後も擦り切れるほど読み返しました。

 その最初の方のページで、大ベストセラー『捨てる!技術』で有名な、辰巳渚さんのご自宅とご本人の写真が載っていました。その時点で、恥ずかしながら、本は知っていましたが読んでおらず、その著者だということも知らなかった私‥。とにかく、自分とほとんど年が同じと思われる日本人、自分と同じく幼い男の子がいる母親、働く女性、多くの共通点を持つ彼女の姿が、私にコペルニクス的回転を与えました。
 庶民を感じさせる、そんなに広くもなく、新しくもない感じの家。現実味の乏しいモデルルームでもなく、「私ね、インテリア好きなのよ、凝ってるでしょ、すごいでしょ」と言わんばかりの気合の入った趣味の家でもない。ガランと何もない、けれども、何とも言えず生活感が漂っており、落ち着いて心地よさそう。
 次のページの冷蔵庫の中身拝見もびっくり。あきれるほどモノがない。しかし、本文を読むととてもお料理好きのようなのです。手作りを大切にし、結構マメ。食べることが好きで楽しんでいる風情が伝わってきます。「料理が好きな人は、食品がいっぱいあって当然」「料理をよくする人は、台所がごちゃごちゃになって当然」という、思い込みによる言い訳を、あっさり打ち砕いてくれました。

 前半が、「いかにして不要なものを持たないか」について。後半は、豊富な事例で「いかにして上手に収納するか」についてページを割いていますが、はっきりいって、後半は不要。「素敵な収納」について書かれたものなら、今までうんざりするほど読んできたんですから。それよりも、ふんだんな写真を使った「実例」の列挙で、「捨てる」ことを徹底的に取り上げた前半が秀逸です。
 「捨てる」については、おもしろおかしい「捨てられない深層心理チェック」チャートで、まずは笑ったりグサっときたり。それから4人の「片づけ上手」なセミプロ女性の日常を紹介しています。4人別々に取材されていますが、「要するにみんな言いたいことは同じなんだな」ということが、熟読するにつれて分かってきました。デキる人は、同じ方法を見出しているのです。

 「捨てる」という観点の強調は、私には新鮮なものでした。私の片づけ方は、(多くの片づけ下手な人と同じだと思いますが、)手持ちのモノをほとんどそのまま、右から左へ移すだけでした。より上手に、よりギッシリ(^^;と、ただ「収納」するだけです。
 「片づける」ということの極意は、「モノを持たない」に尽きます。片づけの下手な人は、実は片づける必要なんかない、ということを気づかされました。大切なことは、毎日毎日マメにコツコツ「片づける(=整頓する)」ことではなく、または、いろんなテクニックや便利な道具を使って賢く「片づける(=収納する)」ことでもない。ある時根本的な改革を行って要らないものを「片づける(=処分する)」ことなのだ、ということを知りました。ある本の中で片づけ名人が言っていましたが、「モノを持たなければ、そもそも片づける必要がない」。今は、私はそのことが痛切に分かります。
 無意識に習慣づけられていた「持つ」という悪癖を、この本は、初めて明るみに出し、叩き潰してくれました。理屈では、分かってましたよ。「余計なもの」を持たなければスッキリするだろう、って。しかし、「片づけが下手な人」というのは、「何が余計なものなのか、わかっていない」というのが特徴です(^^; 余計なモノを持ってしまうメカニズムを暴き出し、余計なモノとは何なのか、ということを教えてくれたのが、この本でした。

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