ラジェンダ エリコムリ            L'agenda d'erikomri

パリ・スウィーツ1



マカロン La Duree 21 rue Bonaparte 75006


彼と待ち合わせなんてするんじゃなかった。
お互いの出張が重なったなんて、ウソ。
わたしは、もう働いてない。
ちょっとした嘘だけど、もう動かせない。

仕事を終える彼を待って、わたしは寒い石畳に置かれた椅子に座りつづける。
カフェを二回おかわりして、だけど、わたしの身体は寒いまま。
リストラなんて言葉は使いたくないけれど、現実なんだよねえ。
よかったね、ちょっとだけだけど、退職金が出てね。
そんな慰めをくれる同僚の目は、すこし意地悪に見えた。

サンジェルマンの教会で待ち合わせ。
ありがちだけど、彼とはいつもここで会う。
前にきたときは夏だったし、けっこう忙しかった。
いまは、ここで、待っているのが仕事。

日が沈みかける。
わたしは、また、さみしくなる。
そして、甘いものが、食べたくなる。

ナポレオンの通りに入って、うすいグリーンの角の店。
ショーウィンドーには、あわい色のマカロンが並ぶ。
いつか、友達がいっていたスミレの香りのマカロン。
優雅な香りなのに、こんなに甘いのに、どうしてこんなに切ないんだろう。

携帯電話をもっていなくてよかった。
外国でよかった。彼を待つのは、もうやめよう。

マカロンの入った箱を大事にかかえて、
メトロに乗り込んだ。

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