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ruka126053のブログ
第19章―まるで予感なのラウシュント、
マリエルが驚いたように部屋を訪れたゴットヴァルトを出迎える。
「どうなされたんですか、その頬!?」
ゴットヴァルトの頬は赤くはれ上がっている。
「少し殿下のご機嫌を損ねただけだよ」
あわててマリエルが駆け寄ってくる。
そしてスカートの裾からハンカチを取り出し、血がついた口元に当てる。
「大変、口の中が切れていますわ、すぐにお医者様を」
「いいよ、これくらい」
「でも」
燃え立たれた孤児院後には、がれきや焼けた花瓶、そう言った微かなものしかなかった。周辺の人間にあの事件当時やその関係者も聞いた。
―彼ら、凶行に及んだ村人には先導した人物がいた。
そのものは男で、銀の十字架のような派手なデザインの司祭服を着ていたという。
そして、村の片隅にまるで忘れ去られるように、こじんまりとした孤児たちの墓があった。
後に調べてわかったが、その墓を作ったのは国の使いだという男。
記録では、貧困による暴行事件と火の不始末。そして院長が経営難を苦にして子供たちを心中に巻き込んだと事件にもかかわらず書き換えられていた。当初は警察や地方の要職の人間もまじめに捜査していた。
なのに、急に上からストップがかかったと打ち切りにされた。
そんな真似が出来たのは、自分がいた薔薇と剣の紋章の持つ家と、羽の生えた龍を紋章に持つ家。
彼らが命令を聞く存在と言えば。
証拠はない。
「これは当然のことだから」
目が覚めた時、ディートリヒの世界は崩壊していた。事件はたった一夜。けれどなんだかもう何百年もたったような、異世界に連れてこられたような。
世界はいつも大切なものを奪い去る。公爵邸の事件で、妹は目と足を失った。跡継ぎがほしい両親のために男として育てられた。
正義や国、家族のためと思った。けれど、世界は女性には戻してくれた。
軍が、反逆者が。家族を奪った。
部屋を。使用人を。
「全て、あの偽物が家に入り込み、名誉のために仕組んだこと」
けれど、価値観や正義は崩壊した。
「チェックメイト」
この緊張感のないのんびりした、のほほんとした男のどこにこんな手を思いつく頭脳があったのか、ジ―クヴァルトは驚きを隠せなかった。
「おやおや、これで40回目でヴォルフリートさまの勝利が連続で置きましたね」
「貴様・・・っ」
「いや、君も結構手ごわかったよ、伯爵」
スローペースで少年は行った。
皇太子殿下の自分への感情はケンカ友達、臣下、ギ―ぜらの私的な友人、家族愛に似たシンアイが中心だったと思う。口が達者で成績もいい。その点が環境の差があっても似ていたと。それでは、自分より先に連れてきた弟への感情は?
「僕は父上の子だ」
「お前達は好きにいえばいい」
プライドも高く素直になれない性格の生意気な王子様。でも、それは彼の精いっぱいの強がりだった。
なんて、誇り高い方かしら、とアリスは謁見の間から出てきたルドルフの横顔に感激の涙を浮かべた。
「・・・・ふう。・・・ねえ、どうだったかな?・・・・・・え?」
ヴォルフリートは振り返って、ぎくりとなった。
・・・・・・なんで、皆、浄化されたような表情になっているんだ?
ギルバートがヴォルフリートの肩をつかんだ。
「すばらしい、すばらしいよ、ヴァるべるぐらお・・いや、ヴォルフリート、君にこんな才能があるなんて!!」
「え・・・ええ??何?」
何、こいつ・・・え?
「つまらねえの。行こうぜ」
3人組みは去っていった。
「あ、ちょっと」
「・・・お前、今の曲、ギルバートの楽譜でも見たのか?」
「ギルバート?」
ヴォルフリートがギルバートに向かい合う。ディーターが手下を連れてきていた。
「・・・あ、そうだね。ねえ。いつ、あの曲を知ったの?」
好奇心むき出しの目で、真っ直ぐヴォルフリートを見つめてくる。
「もしかして、僕が前にここで引いた時、見つけてくれたのが君とか?」
ジプシーか、・・・・あの馬術の事故の時の。
何となく、嫌な気分になり、ヴォルフリートは手を離そうとした。差別主義はいけないことだろう。姉ならそういう。
なるべく、穏やかな声で言った。
「そうだね、変わったテンポだったから記憶に残ったかな」
「あれ、でも、お前、すぐに返したんだろう」
ディーターがそういった。
「見る時間なんか会ったか、見つけて15分で返したと聞いたけど」
「一瞬見ただけだよ」
「ダリル、ごめんなさい」
「主人の私がこんな頼りなくちゃ、あなたの立場がないわよね」
「べっつにー」
「人が素直に謝っているのに」
「姉さんに手を出したら、シェノルの兄弟ならわかるよね?」
にっこり。
「人の急所って、どこだと思う?」
持っているのが包丁に見えるんですが。
「お、おお」
廊下の片隅で、ヴォルフリートは懐中時計を開き、窓辺に背中を預けた。沈痛な、それでいて懐かしむような表情だ。
「お前はどこにいるんだ・・・帰って来い」
二重蓋になっており、下のパネルをめくる。そこには焼け焦げた写真と血がついたに初の銃弾がある。
・・・・憎みきり、割り切れればいいのに。
胸の切り傷はもう薄くなって、消えつつある。全ては過去のこと、そう思えばいいのに。
「・・・・兄弟、なんだろ、俺と・・・・君は」
ぎゅっ、と懐中時計を握る。
時間は、あの事件の惨劇に戻る。
4
パァァァ・・・ン。
部屋中に血が飛び散った。
ガタン、とかつてデュドネと呼ばれたウェーブへあの少年兵士が銃で穴だらけになって、現れる。
「・・・・お前」
焼けるような瞳。鋭い眼光。
「・・・・ベルクウェイン、君が何故・・・」
「-ヴォルフリートは逃げさせた、アーディアディトともうすぐ遭遇するはずだ」
同じ部隊の紋章を黒髪の少年はしていた。野生的な雰囲気ながらどこか上品さや気品差を感じさせる少年だった。
2つの剣を構えて、エドガーに立ち向かう。
「君は誰に剣を迎えているのか、わかっているのか、上司に抜刀した罪で罰され、軍を辞めさせられるだけではなく、君は帝国の、いや、人類の敵の命を助けようとしているのだよ。君の母親や妹を殺したバケモノに何故、味方するんだい?」
「・・・それは、アイツが俺のライバルで、・・・・仲間だからだ」
「君は優しい子だからね、いつか、あのおぞましいバケモノに条を持ってしまうと思っていたよ。彼が今までしてきた、人の道に外れた所業・・・君もずっと、嫌がって、嫌悪してきた。血も涙もない化け物、悪、君のほうがわかってるだろう。
悪が嫌いな君が何故、肩入れする必要が?」
別れる前、ヴォルフリートは肩をつかんで、頼んだ。
「・・・・君に頼みごとするなんて、ものすごくイヤで自分らしくないが、屋敷の生き残っている人間たちを助けてやってくれ」
ベルクウェインも驚いたような表情だ。
「・・・敵は力で弱いものを踏みにじり、オーストリアを変えようとしている・・・だから、君がエドガーやテロリストたちから、無意味に殺される今ここにいる人間を助けてくれ」
「・・・お前」
「カイザー・クラウド、シーザー・クラウドはオーストリアにとって大事な駒だ、君が生かして、君が好きに使えばいい、軍の最高司令官の第3男、ベルクウェイン・フォン・ドゥルク」
緊張がベルクウェインに走る。
「お前・・・っ」
「だから、僕を使え」
「え?」
「僕がこの混乱の原因をねじ伏せ、破壊する。君は君の信念で、兵器として僕を使え。犠牲を少なくするんだ」
全く、正義の味方ごっこのようで吐き気がする。
・・・・でも、キャラの一体化していない、僕にも原因はあるか。
「力なき弱いものを力があるものが一方的に奪うのは許せないんだろう?僕は理解できないが、利用する考えとしていい考えだ、僕も君を利用する―だから」
そうだな、殺して破壊より君の薄ら寒い皆仲良しの方が。
「ベルクウェイン、生きて僕のところに戻れ」
「・・・お前は、ヴォルフリート」
何をパクパクしている。
「早く行け、・・・ああ、でもエドガーを殺そうとか君の今の戦力で思うなよ。仲間になる不利をするなり、ひれ伏すくらいの演技力は見せてくれ」
「その二人を助ける方法は?」
「自分で考えろ、今から屋敷から外への脱出経路、敵の武器や思考や目的、連絡先を言うから1分で覚えろ」
「・・・お前、ヴィルフリートが入っていないか?・・・怒っているのか?」
ヴォルフリートはベルクウェインの頬を叩いた。
「なっ」
キッ、とベルクウェインが睨む。
「そんなこと、君に教えるか、君の答えはイエスか、僕に一方的な虐殺されるか、踏まれるかどれかだ」
「・・・回答権がないんだが」
だが、笑みを浮かべた。
「俺、行くよ・・・!」
マゾか、やっぱり。
5
地位がある人間で、こんな派手なパフォーマンスする人間ならば、異能者の力を一時的に封じる特殊な鉱石を異能者を知る人間によって貰い受けることは、考えられる。今のオーストリアの兵器よりは武力主義の人間には、頼りになるものに思えるのも共感はしないものの、考え方としてはありだと思う。けれど、自分の直接の部下や親衛隊を使わず、動きが鈍いアマチュアに任せた上、他力本願ナ作戦。
「異能者の女王だ・・・・、蒼い・・・光のバラが・・・・・」
アンネローゼならば、こんな自分の正体を人間にさらすマネをするだろうか。彼女は影から人を操り、自分の手は汚さず、自分のかいらくのときのみに動く主義で、人間嫌いの引きこもりの女王で、女王としての誇りがあるから、こんな人間を使わないだろう。姉さんが目的なら、どこか目立たない所に呼び出し殺すか、部下を使い、指輪を奪うとかそういった手段を使うはずで、こんなご親切に自分の正体を飽かすような優しさはない。
ローゼンバルツァーに恨みを持つ異能者や裏の世界の人間の仕業、レジスタンスの仕業、どの可能性を考えても無計画だ。
「何で、今日は外に出ているんだ?」
シスターに扮したテロリストの少女の首下から牙を抜き取り、口元の手をふき取ると、疑問を口に出した。
「・・・・僕が、彼女に怪我をさせた・・・姉さんのために」
他の僕がアンネローゼに危害を?
「う~ん・・・」
「・・・・エルフリーデ・・・・」
炎と壊れた屋敷の壁の一部がヴォルフリートを阻んだ。
くらり、とする。・・・・・不死になっているようだが、肝心の中身はそんなに変わっていない。
「血が・・血がまだ、必要だ」
それにここまで来るのにかなりの運動量を浸かったから足元がふらついて。
「普通の食事は無理だよな」
きゃああああ、と少女や少年の悲鳴が、ダンスホールから聞こえてきたので、駆けつけると、子殺し―いや、異能者に目覚めたばかりの青く光る目の黒髪の妹と兄が、血まみれの金髪の少年を囲んで、両親や司祭たちに殺されようとしていた。今、食べたシスターと同じ紋章。
耳障りなこの音に反応して、今、能力が途絶えたようだ。
ベルクウェインが梳きそうなシチュエーションだな・・・ああ、何だ、普通に起きることか。
「・・何だぁ、良かった・・・普通のことじゃないか」
扉を開けた。
もうすぐ、姉さんに会う前に服に着替えて、栄養補給して、なるべく数秒で済ませよう。
「何だ、ガキ!?」
「お前、その血まみれの格好・・なにっ」
着飾った男女が小鳥のように騒いでいた。
「お腹がすいていて、ふらついているんだ、人の耳元で騒がないでくれる」
ヴォルフリートはパンチ、キック、向けられた銃を奪い去り、足元を撃ちぬいた。
司祭たちがなにやら呪文を唱え始めたので、唱え終わる前に方や足を撃ちぬいた。騒ぐのも煩いので口元を切りつけた。
「・・・ひっ」
「何て、残酷なことを・・・この悪魔がっ」
涙ながら睨むシスターや若い司祭。
「大人しくしてないと、今度は君たちを撃つよ」
シスターの一人の腕をつかむと、首に牙をつきたてた。
「ヴァンパイア!?」
「ひっ」
―血も涙もないヴァンパイアか。
「貴方たちとこの子たち、どこか違うんだ?同じじゃないか」
残っていた司祭やシスターは中年の男女を残して、走り去っていった。しばらく見送って、幼い少年たちを見る。
びくり、と肩を震えさせる。
「悪いんだけど、一つ頼まれてくれる?」
「・・・頼まれごと・・・」
「異能者同士として、協力し合おう?」
にっこりと微笑んだ。
ハートのジャックは、手を挙げて、部下に命令をして、一斉にエドガーたちに銃弾を放つ。いきなりのことでわずかに攻撃が遅れ、ノアもエドガーも銃弾に体を打ち抜かれていく。カイザーをかばうようにオリバーが銃で撃たれる。
血が玄関前の炎に包まれた階段に広がり、兵士たちが崩れ落ちる。
茫然とカイザーは目を見開く。
「・・・カイザー様・・・っ」
それはまるでスローモーションのようで。オリバーの体は階段の途中から転げ落ちる。
ガタンガタンと。
「オリバー!!」
カイザーの声が鳴り響く。怪しく笑うカイゼる。はいずりまわりながら、あわててカイザーはオリバーのもとへ近寄る。
「くく・・・っ」
「貴様・・・・!!」
キッ、とカイザーは、カイゼルをにらむ。その時、足元が揺れた。見えない音域で野波が二人の間を駆け巡る。
窓が割れて、テーブルが何かに引き裂かれる。甲冑やインテリアは姿勢を崩し、地面に倒れていった。
「何だ、これは・・・」
カイゼルは、ハッとなった。
「まさか、生命の石が破壊された!?」
「生命の石?」
6
ものすごい質量と高熱を帯びた光の球を自らも光の帯で身を包みながら、浮かんだ状態のアリスが、突如、カイザーたちの前に現れ、手をかざす。
その光景は、黙示録かオカルトか、どこか神秘的でひどく美しくて、暴力的なー―虚ろな、この世のものと思えない美しさを帯びていて、時折小悪魔的な、狂気じみた笑みを浮かべる。
「うふふ・・・」
「おお、わが女神、第3真祖「ハート・オブ・クイーン」、「白き魔女」」
カイゼルの声が歓喜に包まれる。
だが、カイザーは体の奥から自分の熱が引いて行くのがわかる。美しさに見とれるカイゼルとは違い、大局的な、なんだ、この感情は。
「私に力を、地位を、この世のすべてを貴方とともに――」
金色の髪が逆上がりして、その目は青白く光る。
「・・・の」
「え?」
こぼれるような、かすかな声だった。そこへ、アロイスが現れる。けがを負ったのか、腹部を抑えている。別の扉から、ヴぉるフリーとが左肩を赤い銃弾で撃ち抜かれて、現れ、倒れる。その後ろには、
「おお、私のドール、来たか!!」
「マスター」
銃を持ったヴォルフリートの従者の姿。ぞっとなる。
普通の目ではない。
「さぁ、その弟もどきから、金色のカギを体の中から奪うのだ、私は本体から茶色のカギを奪う・・・・!!」
「来るな!!」
ずかずかと物を投げるが、重傷を負ったからでは意味はなさない。
息が乱れ、高揚した顔。その手には、異能者の青い地でぬれた剣。
「さぁ、愛しき姉のために・・・・」
「やめろ・・・」
炎の威力は消えて、どこからか雷鳴と雨の音が鳴り響く。
「新たな世界のために」
「来るな・・・」
階段をはいずりまわり、必死に逃げるが、カイゼルは執拗に追いかけてくる。暗闇の中でその目は獣じみていた。
「姉さん、どうしたんだ!!」
その言葉に意識が下へと移る。
「・・・・・の」
「・・・アーディアディト」
光の球がヴォルフリートを容赦なく、地面へと叩きつけ、痛みがヴォルフリートを襲う。
ズさぁぁぁぁ。
「姉さん!!目を覚ましてくれ!」
2発目が、槍のように細分化して、ヴォルフリートの体を打ち抜く。
ドドドド・・・、どすどすっ、ぐさぁぁ。
「あ・・あああああああああ・・ああっ」
転々、とその体はボールのように転がっていく。
床で転がるのを止めたヴォルフリートにアンジェルの銃が頭めがけて当たる。
「・・・・ごめんなさい、オーストリアには皇太子さまが必要なの・・・」
「あんじぇ・・・」
ズがぁぁ・・ン・・・!!
「アリス!」
「・・・・あ・・・なたは・・・私の…弟」
カイザーの声にかすかにアリスの瞳が揺らぐ。
「姉さん、弟は僕だ!」
その時、どこからか、アロイスが現れ、アリスに手を差し出す。
「おまえを愛しているんだ、アリス!!」
光の帯の中のアリスが動きを止める。うつろな瞳が揺らいだように見える。
「・・・告白??」
状況に合わないことに命が狙われかけていることを混乱する頭の中、カイザーは思考がとまりかかる。
「アリス!」
「・…姉さん」
「・・・・・・・あろ・・・いす」
その表情は、異常な状況の中、恋人が現れたことで本来の彼女が目覚めかけているようにカイザーには見えた。
「違う、姉さん、そいつは違うんだ!!そいつは!」
血が床にこびり付き、はいずりながら、額から血を流したヴォルフリートが叫ぶ。
「おまえが好きなんだ!」
「だって」
「おれが君を守る!!」
「アロイス・・・・」
その瞳に、いつもの彼女の光が戻る。アリスが目覚めた。
「アロイス!!」
シュウウウゥー・・・。
アリスが光を解いて、ゆっくりとアロイスに向かって落ちていく。美しい恋物語の光景でも見ている気分だ。
「死ねぇぇ!!」
カイゼルがその腕をカイザーに向かって振り下ろす。
「・・・・・・・!!」
カイザーの目が見開く。
7
剣先が皇太子ののど元に当たる。
「愚かな」
不敵な表情。
「-―フィネ」
その時、巨大な白い帽子が現れる。ガラガラと車いすをひいて。
帽子から大きな口がカイゼルごとのみ込んだ。
人形のようなその瞳。
「ばかな・・・・」
階段下のヴォルフリートは目を見開かせていたが、アロイスが銃を向ける。
「去れ、ここはお前がいるべきではない」
どこか苦々しい表情。
「やめろ、・・・す、アロイス・・・もう」
もう誰も傷ついているところを見たくないのに。
「アリスをお前に殺させない、ハート・オブ・キング・・・」
その時、目の前に崩れ落ちた天井のかけらが。それに続くように天井や建物の中がこと切れたように崩れていく。
パぁぁぁ・・ン!!
銃声が鳴り響き、カイザーの視界をふさぎ、カイザーは兵士の一人に手を引っ張られる。ノアだ。
「行くぞ、あいつは逃げているんだな」
「はい、シェノルがさっきそう伝えてきました」
「なら、いい」
「行くぞ!」
ウィーンから数キロ離れていない、雨の中の森の中で左肩を押さえて、愕然とした瞳で血でぬれた服に身を包んだまま、重い脚を引きずるように引いて、歩いていた。
・・・・あいつの声は聞こえたのか。
脳裏に、初めて会った日のアリスのうちしなだれた棺の上のアリスがよみがえる。
・・・・僕の声は全然聞こえなかったのに。
・…世界は残酷だから、世界から目を閉ざすの。
木登りで一番になった輝くような、大好きな笑顔。さみしいと抱きついてきた白い腕。
大丈夫と抱きよせてくれた腕、やさしい瞳。
舞台の上の輝くような、天才的な歌手と演技。
誰に対してもやさしくて、自分の言いたいことをはっきりいって、わがままで気ままで。
・・・僕が守ってきた、ずっと一緒なのに。
数回しか会っていないだけなのに、本物の声は聞こえた。
僕の声は聞こえなかったのに。
守る、君をこわいものからすべて。
ザぁぁぁぁ。
だから。
ああ、でも。
「・・・・・あ?」
足元ががくがくとしていた。体から力が抜けていく。
そのまま、ずぶぬれた土の上に座り込むように崩れ落ちる。
「あれ、どうして・・・」
血でぬれた手。
「・・あ、・・・ああ」
ー記憶をすべて、集めるから、君をこわがらせないから。
僕の。
【貴方は・・わたしの・・・】
残酷な最愛の姉の声がヴォルフリートの頭の中で鳴り響く。
カイザーに向けた、血がつながったものだけが与えられる愛情のまなざし。
「・・・あ」
手ががくがくと震えだす。
僕が、僕が、アンネローゼを殺した。
この僕が。
あ・・。
「・・・ああ」
馬鹿だ、この手はもう姉さんの家族の手にはなれないのに・・。
瞳から涙がこぼれる。
姉さんが、姉さんが僕を撃った。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ」
その場にうずくまり、叫んだ。
4
血のにおいが休憩小屋とつながった馬小屋の前でにおった。
どういう偶然か策略か、フォるクマールが馬のいない馬小屋から出てきた。
「・・・・・お前」
銀髪の、綺麗な。整った白い手。
―ああ、そうだよな。
悪いのは僕だ。何をこんなところで立ち止まっている。
だって。
そんな。
僕はアンネローゼを殺した。殺してしまった。
「どうして、ここに…私はここに屋敷から抜け出して、迷って・…まさか、お前、屋敷を襲ったものと」
疑いの目。
・・・・・ああ。
加害者だ、まっすぐなガラスのような目がそう言っていた。
ふらりとした脚つき。
「その血、だれのものだ、いくら、お前でも、ヴォルフリーと・・、・・・おい、ヴォルフリート?」
整っていた高い貴族の服。
・・・・・ああ、何を見てきたんだろう。
「おい・・・?」
その頬に手を伸ばし、目を金色に染める。
牙を伸ばした。袖を強くつかむ。
・・・・まるで喜劇だ。それもとても低レベルな。
「ひ・・・」
なんて、愚かな。
ザぁぁぁぁぁ。
ガタンガタンッ。
背中に固いものを感じながら、カイザーは重い・・・重い、古い時計の鐘の音、時計の針の音をうっすらとしている意識の中、目を覚ます。
ぎょっとなった。棺の上に自分は寝かされていたからだ。
「なっ」
ズキン。
「・・・くっ、怪我が」
頭の奥がずきずきと痛む。かすかに開く瞳から見える室内の感じからして、古い屋敷のようだが。
「あれ、…なんだ、包帯・・・?」
周りをみると、血の跡が点々とあり、銃撃戦の後のようだった。
「!?」
「―貴方を狙った悪魔たちの血ですよ」
ギィィィ・・・・。
扉が開き、暗闇からろうそくを持った鏡映しのような、ダークブラウンの髪の自分が現れた。
「・・・ヴぉるふり・・・」
「あれから、二日がたった、カイザー様、あなたのけがの手当てをさせてもらいましたが、骨までは達していないようですね」
カッカッ、と靴音を立てて歩いてくる。
「お前…っ」
胸が痛む。
「ああ、動かないで、怪我は治っていないんですから」
つかみかかろうとしたカイザーをヴォルフリートは支える。
「お前、あの焔と爆発の中でどうやって・・・!?」
「もうすぐ、あなたの従者と家のものがやってくる、それまでは安静に」
「・・・ここはどこなんだ」
無表情のヴォルフリートは答えない。
「異能者に襲われた、不幸な被害者の家ですよ、-正確には、生まれてすぐ、人間に対して殺人衝動を抱く習性をもつ異能者に目覚めた自分の娘に殺された家のね」
身体中の血が引いて行くのがわかる。
「母は、そんな不幸を少しでもなくすために、異能者をこの世から撲滅するため、力なきものを守るため、誇り高きローゼンバるツァーのものとして、指揮していた」
よつばのようなデザインのペンダントを差し出した。
「・・・それは」
「皇帝陛下の名の下、皇太子殿下の隠密部隊、対異能者殲滅部隊、暁の騎士団の紋章ですよ。ユーリアも母もここに所属していた」
やさしく、柔らかくほほ笑む。
「でも、その母も死んだ、これでようやく、我慢する必要はないわけだ」
指先が喉に伝っていく。なでるように、感触を楽しむように。
「ヴォルフリートさま」
背の高い眼鏡の金色の瞳の執事。顔に見覚えがある。
「公爵令嬢ゾフィー様の執事?」
しかし・・。
「なぜ、ここに」
「中に入れますか?」
「ああ、頼むよ」
連れてこい、と執事が指示をする。
「ヘルムート、驚いたよ、まさか君の中にアーディアディトの記憶があったなんて、どうりでカイザーに執着するわけだ」
傷だらけになったヘルムートが現れる。
「・・ヴォルフリート、貴様、よくも、うちの組を、おれの家族を!!」
ヘルムートがどけ、と男たちを振り払い、ヴォルフリートに襲いかかる。
「ヘルムート!?」
「カイゼルは新たな武器をオーストリアにもたらし、武力で帝国を裏から操ろうとした」
後数センチでヘルムートの腕がヴォルフリートにつかみかかりそうになる。
「君の父親は違法な貿易会社と手を組み、人の本性をむき出しにする麻薬を女や子供にばらまこうとしていた―カイゼルと関係していた」
証拠の書類をヘルムートに向かってばらまく。
「そして、君は僕の獲物に手を出そうとした・・・聖なる乙女の十槍は」
雷が鳴り響く。
「!!やめろ!」
ズダぁぁぁ・・ン。
「僕のものだ」
喉を押さえるようにヘルムートののどにヴォルフリートの手が食い込む。
ぎり・・・ぎり・・・。
「ヘルムート!」
「・・・くっ・・・」
「やめろ、ヴォルフリート」
棺から降りて、あわててヴォルフリートの肩をつかむが、怪我がカイザーの動きを鈍くさせる。爪が服の引っ掛かり、ヴォルフリートの服を垂れさがあせていく。以前も見た傷だらけの体。
「・・・あ?」
小さい頃、カイザーはボートの事故で腹部に刀で切ったような傷跡が残った。同じ場所にヴォルフリートも怪我をしていた。
「なんで」
だが、それよりも、背中のかなり下の場所に自分と同じ鳥が翼を広げたような小さいあざ。生まれついてのものだとすぐにわかった。
「人の背中がどうかしたのか」
不快そうにヴォルフリートはカイザーの手を追い払うと、服を着込んだ。
「…ヴォルフリート・・お前、いや、君は」
「…?」
不思議そうにヴォルフリートはカイザーをみる。
「ヴォルフリートさま、剣を」
「・・・ああ」
赤い、装飾が施された剣。
「取り押さえていろ」
「イエスマイロード」
「・・・な、何をっ」
手足を押さえる男たちに抵抗するヘルムート。させない、とカイザーは体の不自由さを忘れて、落ちていた件をその手に取り、
「ヘルムートから離れろぉぉ!!」
「ヴォルフリートさま!!」
「ああああ・・ああっ」
カイザーが叫ぶ。
「させない、カイザー・クラウドの名においても、ヘルムートは俺の友達だ!!ヴォルフリート、お前の好きには―」
チョコレートをひとかじりしながら、目の前でオーブンを焦がす金髪碧眼の少女、アリスにキョトンとした表情を浮かべる。真っ白なリボンに、エプロン、ストライプ柄のドレス。貴族の令嬢らしい衣装。キッチンでは、コックやメイドが困ったような表情を浮かべる。
「ヴォルフリートはわかっていないわ」
もう、と可愛く怒っている。
「男の子なんてバカばっかり」
気が聞かないんだから。
「好きな人にはやっぱり、その」
金色の髪を指先でいじる。白い頬に赤みが差す。
「おいしいもの食べてほしいじゃない」
「それなら、おかあ・・・・母さんやローザリンデに任せなよ。でも意外だな」
隣にいるクールビューティーに声をかける。
「・・・何がだ」
「このラッピングだよ、以外と女の子の趣味わかっているんだね」
にこりとほほ笑むと、むとした表情になる。アリスはそれを見てなんだか、靄ついた気持ちになる。
「・・・兄上は色気より食い気ですよね、私も意外です、てっきり姉思いのあなたなら姉上の本命チョコを止めると思っていましたが」
ピンク色の包装紙に英語の文字が書かれたはこ。それらを見て。
「確かにアロイスは嫌いだけど、・…まああんまり苛めるのも悪いかなと」
「苛めてるんですか」
「うん、さすがに論破して泣かせたのは悪いかな、とあれから姉さんの前に現れなくなったから、さすがにね」
気の毒に、と弟は思った。
「・・・ヴォルフリートの気持ちは嬉しいけど、・・・・手間がかかるんだから」
「だから二人で渡しに行くんだろう」
アリストヴォルフリートが向きあい、手を握り合い、見つめ合う。
「私も馬鹿・・」
「僕も馬鹿だった」
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