ruka126053のブログ

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第24章―反逆のオペラシオン



奇妙な客である。どう見ても、貴族の屋敷にここにいるはずはない。少なくとも使用人も気味悪がり、何日歩いたのか、使い古された服、ズタぼろの靴、本来なら大人の庇護の元、生きるはずの子供だ。12歳と聞くがそれ以上に背が低いせいか、年下に見える。雪が降る日に外を歩いていた。お使いではないだろう。
警官が警備隊が、地元の相談役で、長年貴族同士のかかわりをたってきたおいぼれに浮浪者の子供を連れてきた。
「・・・・ガストン・ル―ナ―を連れてきてください」
子供のいい分が正当性があろうと、困っていようと大人は本気にとらず、家でだと思い誰も少年の頼みを軽く扱った。爵位だけで暮らしは一般人と変わらない。

「バーリーはそれでいいの?」
市場で旅一座の少女は男にそういう。
「ああ、そうだよ」
「そんな・・」
もともと階級が違う。エデンはきっと。

「むぅ・・・」
「32度、練習のしすぎね」
アリスはむぅ、となった。
「アルバート、私は頑張れるよ」

「相変わらず姉さんは舞台や友達のことでいっぱいだね」
「だって大好きだもの」
ちなみに歌の練習や脚本の相手は僕がしている。なんで女の子の舞台で海賊なんだろうか。
「ヴォルフリートもダリル達と仲いいでしょ」
「まあね」
距離とられてますけど、というかもうそれは諦めたんだけどな。
「でもいつか恋愛劇もしてみたいなぁ」
「ええ、つまらないじゃん、アクションほしいよ」
「さっきに行って」
「なんで」
視線の先に金髪のセーラー服風の上着にズボンのよくいるきらきらがいた。確か同じ劇団で貴族の。
「フェリクスクンと二人で話すことあるから」
「お、おお」
顔は覚えていないが、青の騎士でなぜだか姉さんはふぇりなんとかと僕を会わせない。すごいお気に入りの友達なんだろうか。


「エクリプス?」
薔薇の花弁が待っている。
「失礼、美しいお嬢さん」
「ああ、警察だけは勘弁を」
「・・・」
シャノンは仮面の男をみる。
「君はこのマークをみたことはないかな」

シーザー・クラウドは若いころ、子爵が陰の部分なら彼はこの家の陽をつかさどる人間らしく、ヴォルフリートの悪戯好きで明るい子供らしい部分は彼の影響らしい。
「へえ」
資料を見ながらつぶやく。
病室に迎えに来た父親らしい男がそう言った。貴族らしく高級ないいものを着ている。背筋もきちんとしていて、張り詰めている。
「子爵の弟ですか、二つ下の、あまり似ていませんね」
会ったのは12歳の一度だけ。ただの貴族の一人と思っていた。確かに髪の色は似ているが与える印象が完全に違う。先ほどから冷たい目でこちらを見ている。顔立ちも整いすぎていて、仕草も隙がない。使用人に紹介された、父親と名乗る男はいつも自分をみる監視者、科学者たちと同じ目をしていた。
「・・・・その、あなたが僕の父親だという証拠は?全然似ていませんけど」
「貴様、旦那様を疑う気か!」
「よい、このものが言うことももっともだ」
使用人をいさめると、男が前に出る。
「顔を見せなさい」
ず、ずいと近づいて、あごをつかまれる。
「やめてもらえませんか、その、恥ずかしいので」
というか気持ち悪いし、怖い。
「なるほど、確かに私の息子だ、あれとは大違いだ」
「そうですか」
僕の何を見て判断したんだ、このおっさん。
「随分と姿形はあの魔女に変えられてはいるが、確かにあの壊れた卵、私のジャンクだ」

彼女の手や指は、本当に綺麗で。ローザリンデは自分の罪が清められる気がした。彼女となら自分の醜さもなくなるんだろうか。
頬を赤らめて、ローザリンデは思った。

「そんなんだからお前は舐められるんだ、主人としての威厳と自覚、振る舞いを覚えろ」
「僕に無理だって、貴族らしく主として振る舞えだって。姉さんは向いてたみたいだけど、人前は苦手だし、誰かを導くなんて向いてないよ」

「本当にダメな子ね」
「あれが後継者ではこの家も駄目だわ」
エルネストに媚を売った方がいいわと全員その場から去って行った。

うーん、無理だよな。
「よお、チビ」
「何だ、ダリルか」
「またいじめられたのかよ」
「ヒースに、マリクスか」
「貴婦人のおばさんや坊ちゃんに」
「・・・・アロイス」
「・…アリス」
恥ずかしくて言葉が出ない。

「取り替えろというのか、正気とは思えないな、最高の魔術師となれる息子を持ったというのに」
「カイザーがおります、それに赤の女王も」
「まさか、お前が自分の子供に愛情を覚えたとでもいうのか」
「・・・いいえ、すべてお父様とこの国のためです」
「だが取り替えるといっても、計画のためにはヴォルフリートはこの家に必要だ、お前は儀式をけがす気か」
「お父様の持つ病院にクラウド家の庶子がいるはずです、姿形は醜いと聞いていますが息子と同じ目をしていて、魔力自体は人並み以下とはいえ、頭脳はずば抜けた天才児になる可能性が高いとか、調整や教育や環境さえあれば、ゼロ~最高の国の宝になる逸材だと」
「お前・・・」
「息子にはローゼンバるツァーの闇を背負う必要はありません、この国の闇はすべて私が片付けます」


向日葵畑で、現代に近い時間で、世界的企業の総帥のひ孫、ヴィルフリートは写生をしていた。傍らでは、どこか高貴さが漂う少年が淡い色の髪を風に揺らされながら、眠っている。今日は気分が変わったのか、遠くまで、純血種の本家のこの少年と遊びに来た。今まで会話をしたこともないのに、家の中であった瞬間、古い友人のように話しかけてきた。
この場所を選んだのは何となくだ。太陽が一番元気で輝くこのときに、この場所に来よう。始めてくる場所なのに、そうおもった。
「・・・・あ、ペンが」
ずれた。
その時、足音が聞こえた。軽やかな足取り。顔を上げると、白いパラソルと避暑地に遊びに着た令嬢風の大人びた美少女が微笑を浮かべて近づいてくる。向日葵が風で揺らされる。
口元が微かに開き、尖った牙が見える。ヴィルフリートの前で白い華奢な足を止める。
「?」
「・・・・遊びましょう、ヒスイ」
手が差し出される。真っ白な、雪のような手が。
「約束よ、太陽の下で私と遊ぶのでしょう」
パラソルから顔が見える。ヴィルフリートはその顔から目をそらすことが出来なかった。
「--」
長い逡巡。驚き。悲しみ。果てしない愛おしさ。わがままさ。冷酷さ。それでいて、とても不器用で弱い。気まぐれで、でも、自分をよく知っている、半分この。
少年の驚きはほんの数秒だった。本当に数秒。
そして、笑みを太陽のような笑顔を浮かべる。
「・・・・遅いよ、アンネローゼ。僕、待ちくたびれたよ」
「うふふ・・・」
その手に日に焼けた手を載せる。いつかの手のように。
軽やかな蝉の音が鳴り響いた。



窓辺に立つフリル付きのエプロンに結いあげた亜麻色の髪を首元を飾る赤い色の同じ色のリボンで飾り、黒いワンピースにメイドらしいヘッドドレスと黒耀の留め具。反対の席に座るのは、黒いリボンで長い神をまとめた薄紫の髪のアンニョイな雰囲気の、大人びた雰囲気のわりに華奢な少女。半目がちだが、反対側の少女と並べるとまるで精巧に作られた人形のようだ。
そのすぐそばを真っ白な髪の、どこか北欧か冷たい湖を思わせる、女だったら見とれてしまうような彫刻のように整った顔立ちの少年が従者らしいフォーマルな格好で金ふちの眼鏡をかけて立っている。くせ毛らしく、長い髪を黒いリボンで小さく結んでいる。メイド服の亜麻色の髪の少女たちは陶器のように滑らかで真っ白な肌をしている。自分の視線に少女は気付くが大きな瞳はすぐにアルヴィンをそらした。
それでいて関心がないわけではないのか、数秒ごとに気づかれないように自分をみている。小動物のような動きで型を揺らしている。
カタン、と扉が開く。
「いやー、悪い、悪い、ペンキがなかなか乾かなくてさ」
同じ司祭で兵士である同僚の少年たちを連れて、ゴットヴァルトが姿を現す。
「ま・・・ご主人様、ご加減はどう・・・」
見なれた主の顔を見て安心したのか、立ち上がり数歩下がりながらか細い声で聞く。
「昨日も早朝まで起きていたとか…その、寝不足では」
ゴットヴァルトの顔を遠慮がちに数秒みた後、少女は真っ白な手をゴットヴァルトに向けて、頬に手を当てた。
ぎょっとなった。
上流階級では主人に使用人はこんな態度は取らない。数歩下がり、飽くまで主の命令を聞いたアと、その命令を聞くだけの存在だ。メイドとなれば、おそば付きといえど、頬に手を当てて、心配するなど許されないことだ。貴族と庶民の恋愛に厳しいのは、当たり前だ。貴族たちに庶民とふれあうということはありえないのだ。
「目も赤いようですし、くまも」
仕事に使用人は感情を出さない。
「そう?」
生まれなのか、ゴットヴァルトの性格なのか、この16歳の割に幼い容姿の少年は男女のなんたるか、世間体や常識について知らないだけというより関心がない。まるで犬か猫でも見るように少女をみた後、懐中時計を取り出し、ほかの二人に視線を向ける。
「ルーカス、デイジー、君たちもう帰って、今日は上がっていいよ」
「・・・しかし」
「僕は犬やマリエルを散歩を連れて歩いた後、一時間くらいで帰るからさ」
「しかし、それでは子爵様に怒られます」
「平気ですよ、父は僕を信じていますし」
あ、猫かぶった。


「・・・・やめなさい」
「あんたは・・・」
カイザーは、意識朦朧とする中、アウグスティーンをみる。
「私には君の悲鳴が聞こえたよ・・・どんなに周りに痛みを押し付けても、君がその罪の重さから逃げられることはできない」
「・…俺は」
「天国でお前の友が舞っている、もう楽になっていいんだよ」
「そうか・・・」
「もう・・・楽に」






「カトリーヌ・マルゴ・バシュ・・・・、・・・そんな彼女は、死んだはずよ」
「それにあなたがカトリーヌなんて、どう見ても私より年上じゃない」
「死体の顔は削げていた、なぜ確認もしていないのに、私たちが死んだと思ったの?皇太子殿下や帝国がそう証言したから?」
シスター・アテナはそういった。
「・・・それは」
「どうして?」
「あの孤児院のカトリーヌたちは事件後、死体が村の墓地に埋められたって」
「私がカトリーヌなら、当然、あの火事の教会の中にいたんだから、やけどを負っているわね」、胸からおへそのちかくまで」
焼けたカトリーヌの死体、アリスの脳裏に浮かぶ。



ヒュウウウウ―・・・。
フッ

「アリス!アーディアディトはどこだ!!」


赤いじゅうたんで覆われた一階へとつながる階段はおとぎ話に出てくる悪魔のような像が右左へと置かれており、シャンデリアは金色のもので覆われていた。床にかがみが割れていた。
「これは・・・・」
辺りをみると、アテナの姿はない。バラが階段の段に花弁となって散っていた。
白いシスター服、白の女王の手下である少女たちが気を失っていた。
「・…いったい、何が」
アリスの頭は混乱する。
「・・・いたた、頭の奥が・・・」



「みいつけたぁ」
「ひっ」
たんすの中にいたアリスは恐怖の声を上げた。狂気の笑みがカトリーヌに浮かぶ。
くすくすと笑う。


「追いかけっこは終わりよ、悪夢のお姫様」
包丁がアリスに振り下ろされようとする。
「アリス!」
カイザーが飛び込んできた。

≪罪、確定、その罪は≫
≪傲慢≫
シャァァ・・・・!!
≪百本の黄金の剣・・・・≫

「ガブリエル、召喚・・・・裁きと拘束を騎士に与えよ」


幻影?
カイザーとアリスがあわてて、振り返る。
「よく、やりました、エレク」
カッカッ
「あなたは、・・・あの公爵家の」

「アーデルハイト?」

聖なる黄金の光に照らされて、白の装束のアーデルハイトが現れる。


「降参しなさい、カトリーヌ!!」
「ひっ」
「神妙にお縄に就き、あなたの嘘に巻き込まれた人たちのため、その身をもって罪を償いなさい!」


ズゴォォォ・…ん!!
「大変だ!」
「ヨハネス様や奥様が!!」
「アロイス様は無事か!!」

ガラガラ・・・・。


「・・・・・貴方は」
廃墟と化した一角で、アリスは女性の首に咬みつくその灰いろのローブをかぶったダークブラウンの髪の少年と出会う。
反対方向からはフォるクマール・・・いや、フィーネの姿がある。
「貴方、なんてことを!!」
「何だ、護衛も付けずに今の赤の女王はずいぶん手ぬるいんだな」
どさり、と女性を投げ捨てる。
「人をスト―キングするとは随分いい趣味で」
意地悪なその笑み。冷たい瞳。
「マスター、無事ですか!!」
「おや、すぐに騎士様たちのご到着か」
「貴方達・・・・」
セバスチャンとオリバー、ディディがビルの間からさっそうと現れる。

ローゼンバルツァーの薔薇―








「・・・・これは、…ヴォルフリートの」
金髪のカイザーの姿が浮かぶ。
「・・いや、あいつは持っていない」

「なぜ、私はこんな…この十字架は誰の」
シュウウーー
灰色の煙の中、アデルが息絶える前、オルフェウスの涙をぬぐう。
「・・・・・馬鹿ね、なぜ、あなたがなくの」
胸には、聖剣が突き刺さり、アデルの体は結晶化していく。
「貴方は友達や貴方の世界を守ったのよ」
「・・・・お前を助けられなかった」
ふふ、と笑う。
「本当に貴方は優しいね、優しいから、優しすぎるから、鬼の私にさえ・・・・」
血が口から吹き出す。
「アデル、もうしゃべるな、今、病院に」
漆黒の髪をアデルがなでる。白い指先がオルフェウスの髪をなでる。
「いいの…あなたもわかっているでしょう」
「・・・アデル・・・・」
「・・・・私たちは恋をかなえたのよ・・・もういいの」
オルフェウスの瞳から涙がこぼれる。
「貴方は許していいのよ、自分を・…だから行きなさい」
「・・・」
「もうすぐ、あなたの隊が迎えに来るわ」
拳をぎゅっと握る。
「異能者どもが・・・・」
そう言って立ち上がり、オルフェウスは振り返ることなく、立ち去って行った。
・・・アデル。



蝶が11歳のダークブラウンの髪の少年にとまっている。ヴァるベルぐらオ家の別宅。
「・・・・ん・・・・・」
彫像の上でそのそばかすの少年はねていた。
その顔立ちはカイザーに似ていた。
「・・・・・」
陽光の中、少年の前に立つ。


正反対な二人である。どうも本人をみると対抗意識が薄れるのだ。ヴォルフリートに緊張感がなすぎるのか原因か。カインベルク卿ジ―クムントは頭を抱えたくなった。森の中での秘密基地は2人だけの秘密なのに。
「何でお前がいるんだ」
「なんでって、ルドルフさまの許可はもらったよ」
不思議そうにヴォルフリートはジ―クムントをみる。
ルドルフがヴォルフリートに気を許しているというのは本当の話だ。
「お前とルドルフ殿下はいつも話しするのか」
隣にジ―クムントは座る。
「うん」
「どんな話だ、あいつ、プライド高いし、難しい話ばかりで気まぐれでわけがわからないだろ、話が合うのか」
「どんなって、はやりのスポーツとかお菓子とか、ゲームとか格闘の話だけど、あ、衛兵の一人が今月結婚するらしいよ」
「俺には憎まれ口ばかりなんだけど」
「ルドルフ様、君の子と気に行っているよ、ほかの子と違って構わなくていいって」
「違う、おれは!!」
「え、じゃあなんでいらいらしているのさ」
「それは、ええと、お前が馬鹿だからだ」
「そうなのか?」

ならば、正式な手段で自分の意思を伝えろ」
「体制にしがみつく犬が」
「復讐したければ、それなりの手段を取れといっている」
エレクとマリウスは向き合っている。
「俺がお前の身柄を保証する、お前はローゼンバるツァーの使用人になれ、紹介状や手続きは俺がする」
「いきなり馬鹿なことを・・・」

「―ヴォルフリート」
「やぁ、アンネローゼ」
熱い布のカーテンの間で、待合室で漆黒の長い髪の美しい、真っ赤なドレスの花のようなドレスの従兄弟と顔を合わせた。辺りを見渡す。
「よし」
「どうしたの?」
「いや、君と姉さんが、仲悪いからさ」
くすくすと笑う。
「何だよ」
「相変わらずのシスコンぶりね」
「―今日は医者のアードルフ先生と」
「いいえ、今日はドーレス卿と」
「ドーレス卿・・」
ぞくりとする。あの人は苦手だ。
「アンネローゼ、今日は会える?」
「そうね、どうしようかしら」
「昨日も会えなかったから、君と会って、そばにいたい」
ヴォルフリートは手を握る。
「何で、いつも君といれないんだろ」


「疲れたか」
腕を伸ばしていると、あいつがヴォルフリートに話しかけていた。
「うん、疲れたかな」
貴婦人達が、扇越しに冷たい視線をヴォルフリートにぶつけていた。反対側では、皆に称賛を浴びるアーディアディトの姿があった。
「―相変わらず人気者だな、弟としては鼻が高いだろう」
「少し心配だけどね」
ヴォルフリートはアリスを見つめた。
「姉さんは誰でもすぐ信用するから」
ルドルフはヴォルフリートを見ていた。
「アロイスのことは気にするな、アリスも本気じゃない」
ヴォルフリートが顔をあげる。
「いきなり、何を」
「ずっと気にしていただろう、わかるぞ」
あーっと頭をかく。
「わかりますか?」
「わかりやすすぎだ」
くすくすと笑っている。ああ、もう、なんでルドルフはあいつといるときは俺と態度が違うんだ。
「恥ずかしいな・・・くそ」
ヴォルフリートが顔を覆った。
「彼女にも友達にも言われるし、ルドルフ様、今度僕の彼女紹介するからさ、たまにはルドルフ様とジ―クムントの三人で恋愛話しようよ、友達なのにルドルフ様、女の子の話僕としないし」
「・・・・僕の色恋にお前は関係ないだろう」
「一般の男子は普通するものですよ、それにルドルフ様、将来皇妃を迎えるときに困りますよ、奥さんといちゃつくときとか」
「お前に関係ない」
あ、顔をそらした。
「趣味広げたほうが絶対いいですよ、黒髪意地悪美少女とか、ラベンダーの髪の北欧美人風とか、金髪小動物系とか、ジ―クムントも心配していますよ、あんなに主人思いのいい人いませんよ」
「確かにいい奴だがあいつ奥手だから向いていないだろう」
「ヴォルフリート」
ぱぁと明るくなる。
「姉さん!」
立ち上がって、アリスのもとに嬉しそうに駆け寄った。


劇場にある中庭で鍵を回しながら、姉を待っていると、数人の少年に囲まれて、困っていながら笑う美しい少女がいた。
「姫様」
「のみます?」
「どうかお言葉を」
「姫様」
よく見れば周りに崇拝するファンの姿がある。モテモテだなと思いながら見ていると、黄金の髪の少女が、童話の中の姫君のような美しい少女が大きな目で自分の姿を見つける。
「貴方は」
驚いたように見ている。
「ん、なんだ、あのいも」
「下男か?」
「使用人だろう」
「でもあの服高そうだぞ」
深い、深い紫がかった青い瞳は光を浴びると、菫色にも見えた。それにしてもひどい言われようだ。今日はお団子状にまとめている。
「今日、御供の人は」
「いえ、今日は私用ですから」
崇拝者の視線に囲まれて居心地悪そうに肩を揺らしている。高貴な身分何だろうか、この前も姫様とか言っていて、今日も令嬢らしいドレスを着ているし。
「それで、あの」
「ん?」
もじ、と指先をからめている。
「貴方はどうして、ここに」
「ああ、姉さんのけいこの付き合いだよ、僕の姉さん、この劇場で歌手と役者をしてるから」
懐中時計を見ながら遅いなと肩を揺らす。
「20分もあるか」
「?」
指差した。
「じゃあ、君でいいや、20分、僕とその辺歩こうか」
「え・・・」

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