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アヴァロンコード序章

ヴォルフリート・フォン・ヴァるベルグラオ―元カイザー・クラウド。十六歳。妹はマリアベル、エルナ、フリーデリ―ケ。
アーディアディト・フォン・ヴァるベルグラオ―ブルー・レジ―ナ。貴族令嬢で学生。
カイザー・クラウド―ヴォルフリートの兄。ジークフリートをライバル視する。プライド高く負けず嫌い。
ゴットヴァルト・ヴィルフリート・フォン・アルバート・ヘンリー・クロノフォード・二コル・クラウド―十六歳。名門の金持ち学校の学生で、元ヴォルフリート・フォン・ヴァるベルグラオ。ハーフヴァンパイア。パンドラから絶大な崇拝を受ける。
エリザベート―十五歳。ハーフエルフ。ルードヴィッヒの義理の妹。
アルヴィン―十六歳。戦司祭。
アンネリーゼ―十五歳。黄金のツインテールに紫紺の瞳。巫女。天使のような少女。
エリス―十五歳。ハーフエルフ。エリザベートの妹。レジスタンス。
セシリア・フォルトゥテー十五歳。１０月生まれ。所属組織は銀の剣。職業学生、貴族、魔法使い、家庭教師。猫耳、銀髪。
イグナス・バロット―十五歳。アーデルハイトの学園に通う。温和な性格であるが身長は高い。
ダヴィデ・スキャフトロ・オウルー十六歳。放浪の魔術師。とある家に居候中。
アルベルト・フォン・フィデ―ス・ロードアインハルト―１７歳。白の騎士団所属。アリスと同じ学園に通う。ゾフィーの兄。
ローザリンデ・フォン・グラヴィータス―１７歳。
コーデリア・フォン・ツァイトフリューアー１５歳。ヴォルフリートの仲間となる。
ヴィクター・フォン・ツァイトフリューア―１７歳。
アリ―シャ・フォン・アールズー１５歳。
ルドガ―・ラウレル―１６歳。
ライナー・フォン。ツァイトスレイヴ―２４歳。
アレスター・フォン・レーヴェ―２１歳。吸血鬼ハンター、法術士。ウロボロスの一人。
ディヴェレッドリーゼ・ティファリァリューディーア・デーヴァ・フェー・イーリスヴァーッァーマリエル。ハーフエルフ。本名ではティファで愛称で呼ばれていた。
　　　　　　　　　　　　　　　序章

　　　　　　　　　　　　　1
遠くない、爆音、轟音。パンドラの命は散っていく。紙切れよりも軽く。遠くで雷が鳴り響く。死者のいない、最新の魔術式機械が配備された戦場、でもそこにいるのはそう。モンスター、魔物。彼らの命は軽い。
戦場に駆り出され、冒険者のスキルにされ、権利なんてない。正義の味方の平和な国、アルトメルデ帝国。そこに不幸なんてない。
憎悪だ。これは。
奪われた。
奪われた、大事なあの人を。許せない。
――今でも覚えている。私は大事な人を守れなかった。
「フォボス・・・・」
あいつが帝国の恐怖の源。
「アリス・・・・」
怒りが収まらない。
フォボスが、ヴォルフリートを奪った。

雷が鳴り響く。実験室でなんてものを作り出したのか。名前はゴットヴァルト。異界から出てきた悪魔の申し子。それが魔術師の男の腕にある。雨が降り注ぐ。
「やめるんだ」
「どうして？」
エレオノ―ルも恐怖する。

メシアとは、この世のすべての人々を救う。

ごめんなさい、何度誤っただろう。だが、敵対する者には善ではない。多くの闇の種族の敵である。
≪黄金の夢≫
究極武装、神の雷。
地上では多くの、人間の敵、パンドラと総称されるモンスターの屍がある。
誰もが幸福に、優しく生きれれば。
少年はそう願った。

チクタクと時計は動く。
一切乱すことなく。
かちりかちりかちりと動く。

螺旋階段だ、少年は何かにいざ割れるように上へと昇っていく。薄暗い、冷えた場所だ。長らく放棄され見捨てられた場所なのだろう。
塔の一番上、扉の向こうで眠っていたのは。

連行される美しい少年は悪夢にさらされたようだ。だがゾフィーは重大な事件、残酷な世界の開幕を感じていた。バルツァーが死んだ。辺境から来た孤児、金の髪の罪を背負う救世主によって。暗闇が包む町。
だが時は動く。今、この時も誰かが死んで、どこかで生まれる。なだれ込む、闇の中のあいつらの瞳は光る。
銃声がどこかで鳴り響く。すると、どこかの一座か、着飾った男が興奮した顔で大げさに手を上げる。
「すばらしい」
これが空想や物語なら、ホラーだ、悪夢だ。
「最高の物語、何たる祝福」
石を投げる民衆、同時に逃げる民衆。だが悪夢を見せられていたのは、どちらだろう。
自覚がなければ、彼らはか弱き人間で。

「間違った存在なんてない」
ヘルムートは、少年たちとともにまぶしいカイザーを見る。
「絶対なんて、ない」

マリエルはそれでも後悔しないだろう。彼と会った日を。消失した記憶を戻さないといけないだろう。何度でも。忘れてはいけないのだから。さてどこから思い出すか。
彼の何から語ればいいのか。あの日々を。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２
目が覚めた時、すべてが変わっていた。人じゃないという目で見られた。多くの人間に。カイザー・クラウドの人生は息絶えたのだ。
「裏切り者」「ウソツキ」「化け物」
倒れた人々。

今が続いているのに。

破壊の魔女、黒の魔女、混沌の魔女がレッドレジ―ナのもとに来る。
「人間たちはどうしてああも自分たち中心なのかしら」
「本当に」
「自意識過剰な」
それは彼女も同じだ、確かに血は吸うが、食べ物のことをそこまで本気になれるか。

―こいつは何を言っている。
「俺だ、わからないのか」
だが、姫騎士はアーディアディトと剣を向き合いながら、鋭い眼光をヴォルフリートに向ける。
「・・・・失礼だが、貴方は誰だ」

赤の軍勢が、青の軍勢の前に迫る。
旗を振り上げ、フロイデは声を荒げる。
「帝国の勝利あらんことを」

幻惑の魔女が叫ぶ。
「ああ、何という喜劇」

宝石の魔女が笑う。
「神は何とも無慈悲な試練をわが子に与える」

マリエルが弓矢を、サファイヤエル側に向け、兵士たちがアルヴィンに迫る。
「やめるんだ、無意味な戦争は」
その光景を見る、帝国軍最高位の軍人、オルフェウス。セバスチャンはその背中を見つめる。
「奴は姑息な手は使わない」
「しかし」
少年だ、まだ１７歳にすらなっていない。
「故に俺達も、それにこたえなければ」
黒髪に血でぬれた赤がさしかかった茶色の瞳。
「メシアは俺が討つ」

エリザベートは世界を壊すことを覚悟がない。セカイは変化を求める。
壊れていくのだ、少しずつ。どれだけの痛みを伴っても。エリス、自分の半身。　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　３

扉が開く。鮮やかな桃色の薔薇。
そう思わせる公爵令嬢。ではない、アーデルハイト、帝国軍の上着と黒いコルセット、ピンクのプリンセスラインのスカート。天使の羽根のような飾りを背中に付け。
「これが彼女の真実ですわ」
「何を言って・・・」

燃え盛る炎。半年前、フォボスという反逆者が英雄となった。その規模は一気に広がり、同時期にアテナの剣や帝国軍でもあやしい動きが見え始め。ラインハルトはそれをレオンはるととともに予測、戦争終結が現実化する中、例の予言を持ち出した。

エンペラーのクラスを帝国の歴史上、確立、取得したのは、ローゼンバルツァーの初代、ッァバァイバスラ―、無名の平民でも数名である。公爵家当主も国内で発言力を持っていた。
けれど、アーデルハイトがそれを知るにはあまりに小さかった。アーデルハイト、１１歳の時、公爵家は炎に包まれた。王宮と古くから縁があり、穏健派であり、慈愛と誇りを旨とする名門貴族。ブラン・レジ―ナという聖女の直系であり、フェリクス、レーヴェ卿とともに誰にも優しく、気高く生きることとする。それゆえにそうではない人々から恨まれ、誰かがパンドラを招き入れて、そして惨劇が始まった。子息たちと当主は死に、妹姫が死んで、公爵の妻とその娘が生き残り。
とはいえ、ただ単に貴族を狙う輩でもなく、犯人はいまだ不明、国王たちもこのことについては発言を控えている。
ただ一つ、少女に憎悪という炎を与えて。
ギュイイン・・・ギギギ・・・・。

「ここは平和な国ではありません」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　４
隣国、ライトニング・ヴァリアにもサイトが同時に爆破されたことは届いていた。イシュタルにも。
「あほくさ」
「ええ、アニスお姉さまは興味ないのですか」
飾り気のない、ついでに言えば乾いた表情だ。上品で、愛らしい少女らしさ、これで着飾れば令嬢にすら見えるが、ここは基地であり、異性などあの日からみていない。
いることはいるが、剣に告白する男がいるのか。
「ないわよ」
大人の女性に近づく、今年で１８歳、弟は１６歳、妹は１５歳だ。兄はいるなら、２１歳。
自分がダンスするのは、ウォーロック。ここでの愛は、殺し合い。
金髪の髪はアニスにいつまでも過去を付きまとわせる。仮の名前とはいえ、嘘の経歴とはいえ、あいつらよりはましだろう。
けれどもう彼らを魔物と呼べない。兵器なんて言えない。

惨劇の舞台となった教会は散々なものになっていた。聖カトリーヌ教導院が運営するライトニング・ヴァリニアの国随一の名門校のユニヴェール学園。二百年の歴史の女子学園であった。その学園の生徒会長を、小等部から務め、(ゴールド・ライブラ)でも優秀な成績を務め、いずれエール・マリア、女王の魔法騎士団にも筆頭で精霊巫女(エレスタ)となることが決まっていた黄金の聖女(ゴールド・マドンナ)。――だが、儀式が全てを変えた。

彼女は世界を破壊する天魔落ちとして覚醒したのだ。
力が発動し、その場にいた他国の賓客、魔術師の塔や聖騎士のトップが犠牲になった。「お母様・・・・」
ガローファノ・パレスのらせん階段の途中で、アンジュリカの母は息絶えていた。背中を撃ち抜かれ、血だらけで。アンジュをかばい、天魔落ちハンターに殺害されたのだ。
「エストカラス卿、御身を拘束させていただきます」
「・・・わかった」

「もう諦めなさい、ヘレネ、彼女は助からないのよ」
「いや、いやぁ」
だが、その巨大な口の植物型モンスターは。
「助けて、ヘレネ」
友達は飲み込まれて――。

「アニス・・・」
また逆らったらしい。
「何だ・・・」
イシュタルの支配領ルーゲ。別名天魔落ちの最後の楽園。波の音が鳴り響き、草木が極端に少ない場所であり、巨大な谷や鋭くとがった場所が多い島。
「あきらめたら、島から出ようなんて」
「私にはこんな場所で満足しようなんて言うあんたのほうが理解できないわ」

5
「・・・・あいつがか？」
エルネストはアリシアからその話を聞いた時、信じられなかった。
「貴方も惨劇の現場にいたのよね」
「・・・ヴォルフリートが本当にそんなことを」
フォルクマ―ル下部屋に入ってくる。
「家族を目の前で殺されたんだ、なかったことにしたいと思うのは当然だろう」
「でも、カイザー・クラウドは無関係だろう」
「このことはアーディアディトに教えるな、余計な混乱を招く」
アリシアが親しげな微笑みを浮かべる。
「なんだ」
「相変わらず、アリスには優しいのね」
「ともかく、意味不明なことを言い続けるだろうが、あいつもいずれ現実を受け入れるだろう、エルネスト、兄として支えてくれ」
「・・・・お前は成長がないな」
だがフォルクマ―ルは答えず、部屋を出ていく。
「・・・・・・ヴォルフリートは何を見たのかしら」
「ああ、何があったんだろうな」

ローザリンデがヴォルフリートの部屋で位置がずれている壁に飾られた絵を見つけ、位置を整える。
「あら、文字？」
緑色のインクで書かれている。

ーなぜ？

―誰もが平和に、暴力におびえず生きていくことができれば。

平和の使節として、(ライトニング・ヴァリニア)を訪れている少女はほほ笑みながら観衆に手を振る。だが、可憐、清楚、高貴さを兼ねそろえ、式典のためのドレスに身を包みながら、イリス・ノ―ヴァ、本名アイリス・フォン・デヴァ・フィデ―スヒルト。先々代の(ブラン・レジ―ナ)の直系筋の娘でありながら、本家のッァバァイバスラ―以上の霊力を持たない光の騎士団団長(フォース・ナイツマスター)であり、象徴である姫、その少女の内心は清らかであり、同時に今の帝国に関して複雑な思いでいた。
「羨ましいですわ、死傷者のいない帝国軍が」
「・・・」
愛する人といつまでも平和に。
誰もが願う平凡すぎる願いだ。だが、争いは今は休戦中でもいつ民衆がその銃弾で倒れるかわからない。他国の使者は言う。
「美しく恒久的で人道的な貴方の国が羨ましいと」
外部もだが、民衆の多くは軍部や騎士団のことを知らない。守られるのが当然だが、無駄遣いだと縮小すべきという声も出ている。
戦場だけではない、ここでは魔女やウォーロックに故郷を壊され、家族を殺された人々がいる。魔術界では、常に混沌と争いを人々にさせる魔王の存在があるという。女神エスぺランサと常に、勢力を争い、世界をわがものとする。
鐘の音が鳴り響き、鳩が空に舞う。女神教会。
この帝国最大の教会であり、人々の心の支えだ。
「エルヴィーラとガブリエ―レ様よ」
彼女達はいリスの警護責任のような立場だ。宮廷の花であり、軍人たちのあこがれでもある。攻めて死んだ者に安らぎを――。
魔王の実在ははるか昔から語られてきた。それゆえに神と教会、国王に忠誠を誓う。臣民の多くが魔王の手下だと、自分達に破滅をもたらすと天魔落ちの次に魔女、パンドラを魔王の子(ルシファー・リーべりー)だと信じていた。実際に彼らは絵画や物語に出てくるような悪魔やゴブリンといった姿と毒素を持つ魔力ペルソナを持つ。暴走したパンドラといわれるモンスターは魔物と人の姿を持つ。彼らは民を襲う。
「・・・」
だが、それはほんの百年前まで、彼らは女神(ゴッデス)に服従し、あるいはレッド・レジ―ナに服従し、暴力性と残虐性を生かし、帝国の平和のため、自ら兵士となっている。優しい帝国は彼らに国といえる土地を与え、防衛させている。彼らを臣民の一人として人間の家族の一員となることも認めて。
「イリス様？」
死者を慰める白い花にけがれはない。

「それが、あの帝国から大きく波が放出された瞬間です」
雪の精霊が天上に飛び交っている。はるか遠くの、多くの国土を持つ氷雪のエンパイア、帝都ミューズ、アイスパレスといわれる宮殿で角を頭から生やした、まるで童話に出てくる悪魔のような使い魔がそう言った。
「うむ」
だが、謁見する場所ではない。ダヴェーリャ皇帝は、紙を手に取り、話を聞く。
「何と、彼らはぶつかったのだ？」
「そこまでは」
「異界(トト・メイズ)から帰還した姉弟か・・・・」

　　　　　　　　　　　　　　　　３

　　　　　　　　　　　　　　　　４

6

2

　　　　　　　　　　　　　　　３

　　　　　　　　　　　　　　　　６

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