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ruka126053のブログ
第9章
1
奇跡なんてない、失われる時は失われるのだ。
「なんか怒ってばっかりだな」
「ヘンリーが自分よりかわいいから嫉妬だろうな」
ワイバァン隊に入って数日たつが、オルフェウスはカイザーとはうまくいっている。性格も似ているし、思考も似ているが喧嘩して、まあいい方だろう。
「過保護ね」
皆にそう言われるが、関わるとそうはないと思う。どちらかというと使えない新入りに怒り、家ではどちらかというとチクチク文句が多い。
こいつは変わらない、本当に。
「うん、でもさ、君が気にすることないよ」
「だよな」
「なんだよ」
シュテファンはニヤニヤ笑う。
「オルフェウスは子供、男の子に弱いもんな」
「誤解される言い方だな、おい」
悲しみは連鎖する。どんなこともだ。だが彼女に何の罪があるのか。そう生まれただけなのに、世界を壊す。天魔おち。処刑のための書類。
「ふわふわ」
遊んでいる。天魔おちの少女が。死ぬのに。明日には。
無駄なのに。
バラの盛りも知らずに。恋も知らずに。
「アストリット、妹姫が」
イシュタルの皇子の首を打ち取るのだ。多くの民のために。胸の奥が痛む。
世話役の少年軍人だ。数年後は精悍で勇敢な顔だが、今はまだ王族の騎士に召し抱えられた少年。
「・・・・呪われた異端姫か」
「すみません、いつも」
ユリウスは彼らを見るが、帝国と何一つ変わらない。
「・・・・では、ヴァイオレット、フレーヌ、いつヒーローはでてくるのでしょうか」
サーウィンの聖女、イリスとも遠縁でもある少女は柔らかい声でそういう。ハート形の頭飾り、ウェーブかかった盛り髪状態の腰まで伸びたライトイエローの髪。
「・・・・悪魔崇拝者の疑いがあるものね」
「そんなのフェイトドレスにいるわけないじゃないですか」
彼らは魔女部隊の少女達を指揮し、戦わせ、帝国を陰から守る魔術組織である。紋章はその名のごとく、大きな蛇がモチーフで魔術石を胸に抱いている。異界の扉を管理する貴族たちを守り、タナトスは彼らから独立した機関である。
白の女王、アーデルハイトといえど、彼らを操れるものではない。彼らは魔女やパンドラを憎むものか。
ライナーはその代表、ある一族のかしらとして彼らを取りまとめる。
「美しい・・・」
天翼属の第二席の女性は美の女神に愛されたであろう、女性の嫉妬を浴びる完璧な美にあふれていた。
第3席はアルフレッド。
「ほんと、退屈しないな」
秩序型に見える青年はああ、とうなずく。第4席、ハイエルフの青年は支持を待つ。美しい男で、それは女性ばかりではない。彼らを世話するもの、男でさえ、魅了されている。第5席、スリジエは優雅に扇を広げ、室内を見ていた。
いかにも貴婦人という感じの美女で、実に優雅だ。
第6席、バドォール伯爵。
そもそも慣れ合いを嫌う少年は沈黙している。
第7席、ヴィント。
第9席、エレク。
「やはり、参加しないか」
第二席ノーマッドはクックと笑う。
「何だよ、爺さん」
第12席、レーヴェ卿。
「ヴィント、先輩にその口のきき方はないんじゃないか」
第三席、ドーレス卿。
「お前達は変化がないな」
「いいじゃありませんの」
第10席、エスト。
「ローゼンバルツァー公もそう思うでしょう」
第11席、ローゼンバルツァー公。
「私は慣れ合う気はない」
「我らに世俗の変化は関係ない、ただ世界に秩序と平和の意志を示すのみだ」
≪アヴィ―ル・スーフル≫
ヴォルフリートは、襲いかかってきた悪魔属の兵士たちに攻撃魔法の一つを放つ。
≪ソウル・リザレクション≫
ヴォルフリートが聖剣を掲げ、自分のソウルとマナを復活させるとともに、アルヴィンやジ―クヴァルトも回復させる。
「酷い・・・・」
ヴォルフリートが拳を震えさせるが、ヴァルトルーデからすればよくあることだ。多くの死んだ魂が天に行けない。
彼女はソールのリーゼ村で、生まれ育った。ローゼンヴァルツァー家の使用人クロイスが出会ったのは若草がもえるころだった。執事エドワード・ワイドマンとも庭師のトマス・ペイカートもまだ出会っていない。
「パルシエ・・・」
エルフリーデの腕の中の隣人の少女はすでに息絶えようとしていた。
エルフリーデが戦いに参加したのは、恒久的な平和、優しい国が吸血鬼に支配されかけていると知って、止めたいと思ったからだ。だが邪悪な扇動者はどこにでもいる。善良な市民を自分達の野望に包もうとしている。家族を失う自分のような苦しみを誰かに味わせてはならない。
怪しげな幻惑【カシュマール・マギア】の魔術を使う革命家ティファが、エルフリーデ達の前に立ちふさがる。
「行くわよ、ヘンリエッテ」
「ええ、ティファ」
ドドォン。アテナの剣が崩壊する以前から何かの前兆はあったかもしれない。争いごとと遠く離れたエルフリーデの村には、貴族間や魔術師たちの権力争いなど無縁に近い。だから、自分の国が戦争中と聞いても全くの平和、すべては彼女の知らないところで決まり、始まり、そして終わっていたのである。戦場には兵士さえいない、安全なパンドラという兵器で擬似的な戦争をしている。
エルフリーデにできたのは、3百年安全とされていた帝国内の村で決められた仕事につき、村の男と結婚する、それだけだったはずだ。だから唐突に始まった事態を前に立ち尽くすことだけだった。
フロイデ、ジ―クヴァルト、アルヴィン、サファイヤエル、ダヴィデ、ヴィクトリア、レヴェイの暗殺者、メ―ゼ、妖精騎士アヴ二―ル、アレスター・レーヴェ、狂戦士、クルーエルエッグキラーのツヴァイリング。
「まあ、魂とマナ、神様に近い魔術因子だしね、青と赤は狙われやすいから天界もサービスしてくれるんだろう」
そして、シュテファン。
「全ての人数は決まっていないと」
「・・・・・まさか、貴族はそんな」
「残念だけどみんな、きれいなままではいられないのよ」
「そんな・・・・」
傷ついている、他人のために。危うい、だが世界は自分の都合で動かない。もっと早く会えれば。
「寂しいから何とかする、アリスは優しいわね」
「そんな・・・」
「でも、これからは通じないわ、いつまでも引っ張っていては相手をつぶすだけよ」
「意味がわからないわ」
「・・・・わからない、俺はこのやり方しか知らないから」
「頑固だな」
ハルトヴィヒはため息をついた。
ブレアは、マギア・ウォーにおいて切り込み隊長、学園での彼女からみれば別人だろう。数が多いがブレアは敵とは思わず、ハートの騎士、ブルー・ローズとともに進軍するダヴェーリャ軍と応戦する。
奪われたものは、奪ったもんを忘れない。
戦場では多くの仲間が、帝国に、目の前の敵に意味なく命を奪われる。
救世主。そんなものは都合のいい夢だ。
自分こそ本物の帝国の市民であり、騎士であり、軍人。一つも見捨てることができなかった。皆をネフィリアは救いたかった。
「天使だな・・・・」
だが、すくえない、困っている人を放ってケない。でも嫌いな仲間も、敵でさえ救えない。祈れば叶うなんて。希望と絶望。
孤児院が実験場と知った時、フィリップは家族と逃げようとしたが、多くが死に絶えた。生存者はキャロルと自分。だがキャロルはその後行方不明。人食い鬼、彼らの計画はないことになった。
現在、23歳。11歳の時の記憶は今もフィリップの人生に色濃く残る。
ナイチンゲール家では、セアドアも自分も、彼らのコマだった。死んだ者の分まで生きる、だがフィリップは不思議と世界で一人きりになった気がしない。
「その程度で魔術師になりますか」
「いえ・・・・」
「いいですか、テレジア、貴方はフェリクス家の息女、庶民と関わってはだめですよ」
「まあ、いいじゃないか」
家族のだんらん、変な家だと思う。両親は古い名門の魔術師であり、テレジアは不自由がない。普通なら、アリ―シャや自分は、マギア・ウォーに勝つため、そばに置かない。後継ぎはアレクシスなのだから。アレクシスでなくても、素行が悪いとはいえ、母はリヒトを後継ぎにするだろう。
「そうそう、マーガレット様に舞踏会だと招かれたんだよ」
「・・・お父様、それは」
つい、手が止まってしまった。
友達と死に別れ、規律に厳しい中流の家庭でリヒャルトは育つ。高い法術や呪術、精霊術への適正。
「ここが、銀の十字架はここか」
ごくりと喉を鳴らす。
「無意味な希望与えて突き落とすのが趣味なのかしら」
身体にはもう、首が付いていない。
「うふふ・・・・」
「狂ったのか」
セシルが銃口を向けると、少女はゆうがにほほ笑む。
「貴方を愛して、信じて、自分は世界を救えると信じてばっかみたい」
「あまり無茶するなよ、アルフレート」
「しかし、先輩・・・・」
「俺達の任務は、討伐だ」
シンプルだ。
「・・・・」
その胸の内をオルフェウスは何もいわない。思えば奇妙な関係だ。オルフェウスとラフォールは。親友ではない、純粋なライバル関係。同じ学校で、塔で過ごしながらも二人は親友にならないできた。だがオルフェウスはパンドラを打つ時、迷わない。慈愛の貴公子。彼は最後の最後まで、正しいかこだわる。がけど、真に自分を見せないのはラフォール。
「考え込むな、お前は正しいことをしているんだ」
ルードヴィッヒの持つ剣をオナシス家に伝わる魔法剣オセアーノバラックソードという。それは王権の象徴であり、女神が王侯とオナシス家に与えた秩序の絶対無敵の剣だ。
アクア・ジンキングに、ヘレネ、オルグ、ルードヴィッヒはそれぞれ、加護を与えられた。
≪誇りの加護≫≪常勝の加護≫≪運の加護≫
属性は水。精霊騎士であり、青の賢者の塔のエースである。
「幻術か」
敵が驚いた顔をする。ルードヴィッヒはにやりと笑う。
メアリーは、クラスメイトのアーディアディトが苦手だ。
それはヴァルベルグラオ家とメアリーの家が敵同士だったこと、何より出会いが最悪だったことが、たとえ何度言葉を交わしても親友になることがないことがわかっている。
まるで自分が正義の申し子であるかのように、何さまだ。
「おどきなさい」
アレッシオをかばいながら、いつも誰かに守られているくせに、こういう時だけいい格好をする。それがさらにメアリーの神経を逆なでする。
「この学園に犯罪者の娘をかばうようなものはいらないわ」
若い青年が護衛だが、ディアナは自分に立ち向かってくる。身分も低いくせに図々しい。
「もうやめなさいな」
振り向くと、黒髪のサイドテールの少女がいる。アークナイツ部のユニフォームを着ている。
「貴方は下がっていなさい」
「ルールや秩序を重んじるのはあなたたちの美徳でしょうけど」
ヴェンデリンが私の背後にいたのが目に入っただろう。
「なら、下がりなさい、これはアーディアディトのためでもあるのよ」
「柔らかく生きることはあなたにもできるでしょう」
「許してばかりでは、あっという間に国は傾くものよ」
だが、彼女はひかない。ティファニーはそういう少女だ。ティファニーの母は、いつもブリジットの後を追う少女だったという。
「まあまあ、ティファニーったら」
その城では奇麗な兄と妹がいて、自由に自分らしく振舞うことが認められた。けれど気さくで優しい、エレオノ―ルの親友が威厳と烈気を見せた時がある。
「ごめんなさいね、メアリーは悪い人ではないのだけど、正義感が強すぎて」
「そうなのですか」
下級生が眩しい目でティファニーを見てくる。人気者で学年が違う先輩も後輩も彼女の自由奔放なところが好きだ。
「それで、メシアとしての彼はどう?」
「あいつは能力や才能があるなら、それにふさわしいものになるべき」
悔しそうなアレッシオ、ディアナ、ウォン、ウルリヒを残して、エミューリ族の戦士、ベルクウェインの騎士は浄化された大地を馬に乗り、去っていく。
「そう思っている」
ヴォルフリートが活躍したことで、騎士団の名前も帝国各地に伝わっている。ディーター自身、それはいいのだが。
「はぁ、なんでだよ、あの新入りにはいい情報流したのに」
アラッドはパーンがまた大騒ぎをしている。
「おい・・・」
「すごい美人だ」
周囲がざわめくが、ノワール・ローズから直接手に入れたというオーク属のスナイパーと戦士。
「人間にしか見えないな」
でも、ヴォルフリートらしくない、ディーターはその違和感をぬぐうことはできない。
「行きましょう」
仲間が声をかけ、ディーターはアテナの剣の戦闘員を追いかける。
2
「坊ちゃま、行きましょう」
「え、何で」
セラフィとかいう従者か。だが青年たちはまだ笑う。
「叔父上、あまり騒がせるのはどうかと」
「あれくらいで参るなら、クラウド家のものではない、そもそもあれは気にしてすらいない」
だが優しい青年は悲しそうに。
「彼は次期子爵です」
「あくまで候補だ」
そもそも、ヴィンセントはセレナの剣だ。マギア・ウォーで勝つこと、そのことで支えるべきだ。
「それよりもお前はバーバラスがお前を心配していたぞ」
「それは、確かに、彼はいつも背負う傾向にありますから」
「・・・ねえ、ゴットヴァルトのところに行きましょうよ」
「しかし・・・」
「ザースハ、あまり厳しく言わないでくださいな」
騒ぎの中、臣民を安全な場所に移動させながら、敵のもとに向かう。
「そういえば、ジ―クヴァルト・オーウェンから君に関する奇妙なうわさを聞いたが」
「俺の」
まあ、あいつなんだろうな。
「ヴェンデリン、なんだ」
「・・・・お前、真夜中にうろつくらしいとか、フィーナが変な歌を歌いながら、まるで悪い妖精のようだったと」
「何、そのホラーじみたそれ、俺がするわけがない」
「だろうな、でもなんでしてたんだ、君は孤児から貴族になって、悩むことはなかっただろ、黒い布を身にまとって服装も変な格好で泣きながら笑ってたとか」
あの野郎、俺をどこまで陥れれば。
時臣はアレクシスの剣とぶつかり合う。以外に厳しさを見せる。
「お前・・・」
「答えてくれ、なんでこんな無益なことをする」
「ひどいことをしているのはお前らだろ」
テオドールは、ウォーロックや魔獣ばかりではなく、貴族や魔術師が弱いものを傷つけ、無意味な戦争が繰り返し行われている。
それゆえに、エリクサーを求める。
近衛騎士団付魔術小隊、ヘレネはそこにいた。
「・・・・・エレクですか」
「ああ、君に面会を求めている」
「・・・」
紺色の長い髪を手の中で遊ぶ。それはもう、記憶の隅、いってはならない名前だ。
「色男も形無しね、まあパンドラは悲劇そのものだもの」
「そんな言い方はよせ」
「ヴァガット、フォボス、どちらが先に壊すかしら」
「大事なものがない人は壊れやすい」
「突然奪われた痛みは決して偽物じゃないわ」
それはだれかが言ったんだろう。
「尊敬されたいなら、貴方が尊敬される人になるの」
「生きて」
アリス。
魔女を狩る魔術師の少女達の部隊、フェイトドレス、ルナティックレディー、魔女討伐部隊という、異端審問官と銀の十字架が協力した特殊魔法部隊。だが、呪いは狩るものにも振りかかる。
彼女はもう人としての人生も名前も記憶も誰にも残っていない。
そう、それは5年前の夏のことだった。ツヴァイトークの第二都市ウ―ズィフラープ。「剣の魔女―ヘレヴ・ソルシエール・・・」
アリスとアルバートはついに悪逆の限りを尽くすキ氏姿の少女を二ケの肖像とともに追い詰める。
「投降するんだ」
「そなたは、笑顔を忘れた空の魔女だな」
北の大女帝、ダイアナ・ハートハントにおいて、その国ではレッド・ローズ、パンドラとの戦闘が絶えたことはない。
「それは褒め言葉でしょうか」
「まさか」
でも、文句を言う資格はない。騎士には使える主や妻子がいたし、何より騎士は私を愛情はともかくそれなりに守って、少なくともただ兵士とするだけではなく、実験体や忠津蚊いぶすものとして扱うことはない。私は世間知らずだった。でも同時に感謝もしていた。少なくとも父は私を皆の仲間の一人にしてくれた。怖いものも醜いこともあった。ハーフエルフであることは辛いこともあった。空がこんなに青くて、外は光にあふれ。ローズでの日々は辛いことばかりだが、劣等生扱いだった、でもみんなが私の料理を喜んでくれたし、主従関係と似た関係だったが、父とは信頼感に似たものができていた。
「なぜだ、・・・・・ローゼンバルツァー」
けれど、ある日、父が自宅で妻子とともに友人たちとともに殺された。
「お父さん・・・」
「・・・・・よ、頼む、アルベルト様達を・・・」
一つ、オルグとディートリッヒが違うことは。
恐れるものに剣を握る必要はない。ヘルミ―ネ・フォン・ローゼンバルツァー。イザべらを倒した次女。東方の英雄。優等生と劣等生。彼女は今日も男装としてふるまう。「誰だ、お前は?」
オルグは大きく目を見開く。
金色の天秤(ザハヴ・テミス)を短期で卒業し、アーデルハイトの御身を守る。マナは水であり、聖性である。指揮官タイプか、戦士タイプかといわれれば副官だろう。事実、ディートリッヒはそういうポジションが多い。
この混乱を気に、帝都内に暴力の根を持ちこもうとする者はパンドラじゃなくても敵だ。
魔法ガン、杖剣、ダプネーブルート。それこそがディートリッヒの武器だ。
威圧だけの連続射撃。
・・・すさまじいな。
「ひっ」
潜んでいた民衆はほっ、と胸をなでおろした。
「間違った方法に価値はない」
「ディートリッヒ」
だが、彼女は変わらない。アルベルトもローザリンデもまっすぐだ。悪魔崇拝者の処刑が始まる。
「涙の海」
船の上で、派手な羽根飾りをした紫色のロングヘアの少女が竪琴を引きながら、今足元に流れる黄金の海について、答えた。
「ねえ、ここはどこなの」
「可愛くて優しくて、きれいでまぶしくて、ヘレネお姉さまが好きになるのもわかるわ」
「離しなさい」
ヘレネはにらむが、幻惑の魔女は不敵に笑う。
「あなた、こんなところで何しているの」
ヘルミ―ネとフィネ、リーゼロッテがバラ園の奥にいたアーデルハイトに声をかける。太陽のように明るく、朗らかな笑顔だった。
私とあなたは似ていない。肌も顔も性別も。水面が映す自分と似た顔。好きなものも違う。打ち返す波。
ただ、石は転々と転がっていく。近づけばお互いを傷つけあう。
床にはアシュレイ、パンドラの死体が転がる。
「アリ―シャ様」
「行きましょう」
まるで幻のように消えた、記憶。思い出。
「正しさだけではなにも生み出せない」
「お前・・・ッ」
盗賊たちは驚いている。リオとルーランは短剣を手に戦闘を再開する。
青の賢者の筆頭エース、ナターリャ。金色の天秤の塔筆頭エースヴィジット。勿論十代のころだ。だがそれでも青春というのはどんなものでも色濃く残る。アーロンも塔では優等生、今の魔法騎士の連中は昔の同級生だったりする。その時、18歳だったか。すでに16歳で卒業し、シュヴァルツパラソルへの所属が決まっていた。緋色の方舟はそれよりもさらに15歳、ヴィンセント・フォン・ルヴァロアがいる。
「ナターシャ」
「お前か」
吸血鬼貴族同士の戦いはレーヴェ家を追いこんでいる。そこへ、ヴィントがやってきたがアーロンを気に留めることもなく、銀の十字架の制服をもう脱いでいた。彼の最愛の人が殺された。だが失意や悲しみではなく、それは憎悪の燃える目だった。
「叛逆者の後を継ぐが、いいのか」
「あいつを殺す…それだけだ、吸血鬼はすべて俺が殺す」
きぃぃん。
「お前、何を」
イングリッドが叫ぶが、ヴォルフリートへの攻撃を変えない。悪魔族の中級クラスのデッドドールは、確かな恨みと執着を持って、呪術を開放、ヴォルフリートを殺害しようとする。
白梟の騎士団(ブランノ―クトゥアム・ナイツ)に名誉騎士としてテレジアは存在する。精霊達の声は聞こえない。
・・・理由は分かっている。
帝国内は今、混乱状態にある。表向き、アテナの剣は元通り、平穏が戻ったようだ。だが何か違うのだ。あのカイザーを自分は知っているはずなのに。
ローゼンバルツァー家、…ヴィクトリアのいう少年と今のカイザーは別人。
「テレジア様」
「わかっているわ」
その時、唸り声のような声が聞こえた。群衆の間から囚人らしい男が自分がいる方向へ走ってきた。
「テレジア様」
腰の銃をとる。殺しはしない、動きを止めるだけだ。
「助けてくれっ」
テレジアは起き上がる。だが天翼属とエルフの女戦士は。背筋がぞっとした。
「どきなさい」
「無抵抗の人を殺すなんて」
「そのものは罪人です」
第一位純血貴族、ルイは数千の兵と領地を与えられ、人間世界に密偵を送り込んでいた。赤の女王がイシュタルについたという情報、ドラゴンをチェス兵を連れて。つまりは戦争する気なのだ。
、摂家のバートリーは吸血鬼の王家を守る神官―ルが―スツァ―の家柄である。中立派といいながら、自分の駒を増やす気なのだ。
隊の名前の由来にもなったワイバーンのかごを得たダノンにエリスは複雑な思いでいた。悪い奴じゃない。
≪グーテ・キュア≫
正直、こんな奴をペルソナで癒したくない。回復魔法でダノンのけがを治し、速やかに悪魔の力で癒しけがをふさいでいく。
「お前・・・」
≪新月の加護≫だと・・・。
「貴様、いくつ加護を受けているんだよ」
ダノンがルイ―ジをにらむ。
「そう言われても、生まれつきだからどれがどれかなんて」
「どこから入ってきた?」
アードルフは隊舎で突如侵入してきたアーロンに拳銃を向けた。
「ラフォールに緊急に会わせてもらいたい」
「はぁ?」
「時臣、その女の子は」
「外をうろつかせるわけにもいかないだろ」
イフリート隊、アウレリアヴィーナ達小隊が動く。
「う・・・」
少将、リリの仲間はけんかっ早い。
雷のマナを生まれつき高い濃度に持つ通称ブレードライトニングの異名に持つミリアリア・ウィアムはエルフリーデとトラブルを起こしていた。
だが世話好きのリリは今日に限ってはトラブルメーカーの少女を相手にしていない。「気安く触らないでよ、わたくしを誰だと思って」
エルフでパンドラでありながら、リリは貴族の地位、帝国の国民と同じ権限を与えられていた。
「いいだろ、どうせ怪物か吸血鬼の相手しかいないんだろ」
くっ、と歯をかむ。人間、それも男は実は嫌いではない。それはティファやエリザ―の方が重症だ。蒼の騎士として、アリスの近くに学生として、懐柔策だろう。
「卑怯者、それでも帝国の騎士か、いいかげんにしないと」
「貴族に飼われたんだろ、なら、ねえ」
リリが嫌悪し、拒むのはそれだ。パンドラ全体への恐怖と軽視。こちらの意思など考えない。名前がないだけで、自分たちは、喜ぶと思うのか。
こんなのを守るために村は。
「離してください」
ディートリッヒはカ―ライルとは、物心ついてからずっと一緒に育った。従順で言葉少なめで、物静かで。
だが、あの惨劇で彼は死んでいた。
扉を開けた瞬間、テレジアは声を上げるのを忘れそうになった。血だまりだ。フィリップが中央に立つ。倒れる燕尾服の男達、綺麗な衣装の女性達、メイド、綺麗な服の少女、ハンドガンが散らばり、バラの花びらが舞い散り、天井、床、壁、カーテン。ダンスホールを二つ合わせたような室内は悲劇の現場となった。それは5年前。
「あ・・・」
「テレジア、大丈夫か」
オーウェン家の縁戚の男だ。
「は、はい」
結局、聖なる乙女の十槍のてがかりはなしか。
しかし妙な組み合わせだな、口うるさいお嬢さんと、背が低い錬金術師。
「ひひ、異界についてかい」
「お、おお」
エドゥアルトは正直、ソフィアがいなければ、タナトスにも来ていないだろう。貴族や魔術師系貴族に問題児扱いだし、特魔ではあまりいい風に思われない。
「あそこに、あの人はいるのか」
「どうだろうね、あの方は、君の敵は隠れるのがうまいから」
≪スロノス・ツァイド≫
ウォーロックが悲鳴を上げる。それは絶対に覆らない、邪悪な悪魔や魔女、人間の敵を撃ち滅ぼす破壊力抜群の、神の力を借りた光魔法。光が獅子の形となり、敵を狩るがごとく、蹂躙し、その場一帯を荒れ地に変えてしまう。
「そう、だから初めましてかな、僕はそう、帝国の記憶の欠片みたいなものだ」
透明な体。
「でも、歴史で百年前に、こんな事件があったなんて、どこにも」
「いつでも、後のことは勝利側が作るものさ」
白銀の魔法使い、君からすると先祖、処刑された黒髪の男。
「異界の扉は、王族が」
「それは僕も知らない、ともかく今も誰も見つけていない」
アレクは指をさす。
「あれが僕の兄弟達の子孫、君のおじいさんだね、混乱を仲間とともに治め、今日までいたる、魔女や吸血鬼は抑えられ、叛逆者側のパンドラといわれるものは罪により追い出された」
「…ああ、お前がブルー・レジ―ナ、マリー・アンジュか」
アリスはマリー・アンジュの前に立つ。飛行艇が地上につこうとしている。
「それが聖なる乙女の十槍・・・」
「ああ、魔女達が作った災厄のおもちゃさ」
エリ屋は何となく、その光景に相棒のリ―デレとともに不安なものを感じた。シャ―リ図があわてて、アリスの元へ駆けよる。
「ヴォルフリートばかり、戦わせないわ」
「・・・アリス」
彼女はまぶしい。慈しみ、優しい。全ての闇を浄化し、包み込むような。
「・・・」
俺は違うんだ。そういいたかった。本物の弟、仲間。でも彼女の家族も過去も他人から聞いたもの。
「どうした」
ナイトハルトは不思議そうに見る。
「ヘレネ、迷惑だった」
「・・・・・少しね」
夕焼けが第二区を包む。彼女は関わらずにいられない。誰かを世話して、行動して。アルベルトに嫉妬する、あるいはテおドールに。
・・・私が男なら。
「怒ってる?」
「いいえ、貴方はがんこだもの、行っても行動するでしょう」
兄の魔法は幻術、黒魔法、意識操作というたぐいだった。エレメントは闇と風。
だが、ヴィネッサは魔女の島においていかれても死んでいなかった。足音が聞こえる。魔獣達だ――あいつらのなれの果て。殺戮と本能のモンスター。
「くっ」
アルムティは、殺す相手を少年と少女に決めている。恐るべき呪力と異常な身体能力。可愛い子ほど虐めたくなってしまう。
気まぐれでいたずら好き。
「こ、コウモリ・・・」
ルーランはそれでも、鬼族の貴族に手を容赦はしない。頬に鋭い刃物で引き裂かれた生々しい傷跡がある。
「あまり、いい気分じゃないわね」
「魔術士」
路地裏では、まだ死体が転がっている。
「エミリア・・・」
「行くわよ」
帝国軍の紋章が視界の隅に入る。
「こんなのどこでも転がっているもの」
吸血鬼やウォーロック狩り、パンドラハンターはギルドに行き、あるいはタナトスやウロボロスと連携し、必ず監視者とともにウォーカーとともに討伐に向かう、時には不当な悪や魔術組織を取り締まる特魔に協力する。吸血鬼は帝国とともにある、だが、女王には向かう吸血鬼は特権もなく、処罰の対象である。昔ながらに人間を吸血の対象、秩序を乱すモノはハンターの対象だ。
ヴィテスは神に仕える知恵の天使が持つ預言の書―ランスロット・アンコールを片手にサートゥンから送られてきた犯罪者を相手にすることになる。犯罪者を裁くなら国の人間がするべきだろう、だが、銀は全ての邪悪を、秩序を乱すモノを裁くためのもの。銀が溶かしこまれた十字架はパンドラを裁くもの。
「同じ戦司祭【ブレイヴ】の中から犯罪者が出るとはな」
王宮ともつながりのある第二部隊隊長ゲラ―ン。副隊長ラシ―オ。貴族出身であり、ゲラ―ンはあのオナシス家やローゼンバルツァーともかかわりが深い。アンジェロを裏から支える使命を持つ。
「まあ、これも大きい組織である以上、必然だ」
法をつかさどる家柄の第3部隊隊長ヴィテス、副隊長ドーレス。
カフェオレ色の青年は少年という方が似合いだが、第二部隊隊長とは家柄や血統を誉とする男でもあるので、対立状態だ。無邪気さと冷酷さ、混沌――副隊長においては、軍国の元暗殺者である。
「さっさと処刑しちゃおうよ」
旅一座で快楽主義の第4部隊隊長トゥピーツァ、副隊長チュダーク。
大人の低い声が室内に鳴り響く。冷静さを姿に現したような、傭兵出身なのかもしれない。他国からの移民で、何かと気を使い、内戦状態、反乱と落ち着かない状況で育ったせいか、命が紙きれのように扱われるのを見すぎたせいだろう、文化や芸術を愛し、サファラは沈黙と秩序を愛し、同時に騎士道を重んじる。
「だめだ、それでは秩序が乱れる」
砂漠の国の出身の第5部隊隊長サファラ、副隊長エクリット。
・・・この帝国のごますりが。
エクリットは上を目指す男で優秀な法術士≪グレイシア≫、精霊術士≪スピリット≫である。貴族でもあり、そんな男から見ればサファラはかなたから来た田舎者のごますりにしか見えない。
扉が開く。
お調子者で戦争嫌いの第六部隊隊長、ライトニング・ヴァリニアの出身のロドウィック、副隊長クラブ。
問題児であると同時に天才も生むことも多いロドウィックは、クラウンのクラスを持ち、同時に聖騎士の地位を持つ。
「容疑者・エル・ゴレムが入る」
「それは君が強い立場だからだ」
「ですが、もうこれ以上無駄な兵力を増やすなど」
「それ以上はいけない、幸いあのもの達には死傷者は出たことはないだろう」
「だからと言って、安全圏にいていいわけがありません」
「何のために遊撃魔術部隊があると思う?」
「それは帝国の治安と秩序、人命を守るために・・、それに彼らは奴隷ではありません」
「帝都のものが安心するためだよ、君はいちいち毎日使う靴のことを気にするかい?いいじゃないか、今回は君のお気に入りの亞人たちではなく、天魔落ちなんだから」
アテナとは、父親の頭をかき割った時、成人の状態で生まれてきた戦女神だ。
異端として、歴史の陰で忌み嫌われ、争い続ける魔女やウォーロック。剣を構え、自信に満ちた笑顔を浮かべる、戦場の中のローゼマリーはあたかもこの惨劇を生みだした悪魔達の戦闘組織のアテナの化身のようだった。
悪戯好きの泡影≪シュヴァヴ・バブルネブリナ≫。
ローゼマリーの武器銘であり、ゴールド・レヴィーナを主神に持つローゼマリーは邪悪を焼き払う太陽の加護を持つ。攻撃能力と破壊力を秘めた巨剣は細身の少女には会っていないが、ローザメリーは不敵に笑う。
「行くぜ」
アテナの剣と吸血鬼の女王の失踪、それ以来、騎士団や軍は忙殺を余儀なくされている。それに加え、今は手を取り合う時期なのに革命家や各地で自由を求める民衆の活動が活発化している。
秩序を、騎士団の指揮官は少年騎士達に多く求める。
守るはずの民を虐殺する。
理解しがたい、臣民は子弟制度をやめ、すべてのパンドラを異界送り、神の元に送ることを求める声が多い。
平和と平等、博愛が精神の中でも勇敢な少年少女が次々に剣をとる必要もないのに冒険者や騎士になるのもそういった声の象徴だろう。
国家と財産、同胞を守るのは、臣民の義務である。
だというのに、他国に帝国の財産であるパンドラを売り私、おのれの利得のために動くものもいる。国家に服従するエデンの関係者の中にも、けがれた精神や悪魔崇拝者が潜在していたという恐ろしい真実、国家機密のカプセルや実験体を持ち出すという悪行の数々。
パンドラの帝国兵士たちは、国家を守る精神を忘れ、各地で悪行をしまくっていた。無辜の民から財産を命を奪い、女性や家族を殺し、尊厳さえ奪い。たとえ生きていても、縛りつけられ、赤いペンキで裏切り者、魔女め、と汚い言葉のカードを首に下げさせ。誘拐も横行していた。特に子供が多く、変身能力の持つパンドラはかなり遠くの国に売り飛ばし、私腹を肥やし。
奴隷のように縛りつけられた村人たちの姿もあった。的にされ、正気を失ったものもいた。
人がすることじゃない・・、こんな踏みにじる行為は誰にもパンドラにする権利などない。
中のいい隣人が急に悪魔になった、裏切られた気持ちにハルトはなっていた。
姿や能力は違えど、信頼はしていたのに。
「先輩、彼らは何がしたかったのでしょうか」
ミノタウロスや鬼の一団は死体となり、ハルトヴィヒの前で横たわっている。民を多く殺し、禁呪を解き、盗み、銀の十字架や騎士団が対するパンドラ達がよくする悪行だ。暴力を働けば、誰かに討伐される。そんなこと子供でもわかるのに。
「ハイエナが」
「ワイバァン隊かよ」
彼らは嫌われていた。拷問好きの隊士スクりロス。取り巻きたちはにやにやしている。
マルティは天魔落ちに過去の惨劇を思い出し、身を震えさす。帝国の安寧と秩序、それを乱すモノはいつも犯罪者やパンドラではない。
聖騎士だったのか・・・。
だが、ナイトハルトは緑の法衣、金の十字架ということは彼女は聖女教の武器の使用を許された教会の騎士であることを意味する。歌手というのは
「俺には向かった以上、叩きつぶす」
少女は正義の執行冠たる自覚があった。それゆえに帝国の治安を守るウロボロスにこんな野蛮で使命感のない男がいることなど許せるわけがない。だが、風が、風の槍が敵を一瞬で倒していく。
「馬鹿な、命令違反だと」
「パンドラが反乱など・・・」
赤の王のたくらみがあったが、それは冷酷と間違いといわれた兵士達が長い間、心の奥底にため続けた人の情の欠片だ。青の女王との接触、あるいは偽善者の誘惑かもしれない。だから、偶然の機会を、大人のパンドラは狙って、反撃をする。
幼少のものは白衣の者達から、赤ん坊の後輩を奪い、列を作り、外を目指す。
十代中間の精鋭の少年達は、顔も知らぬ、おそらくは自分を殺すであろう肉親を求めて、欲望まみれの他国に情報を流す。
パンドラハンターにも情報を流し、エデンを壊す。己を探すために。
「俺達は、ナンバーじゃない、家族を助けるんだ」
「名前を人生を返してもらう」
「私は・・・・」
聖女たちは、獣人を守っていた。ローザリンデは彼女達か、青の騎士かを選ばねばならない。
「教えてあげましょうか?ヴォルフリート君」
穏やかな口調、慈愛のこもった聖母のようなほほ笑み。だが彼女の心には鬼が見える。
「どうしようもないこと言うのはね、鞭が必要なんですよ」
澄み切っている。待とう空気は清らかな静寂の山の谷に流れる水のような。
彼の不幸はあきらめない、希望に満ちた心を捨てなかったことだろう。人は名前に固執する。誰かが苦しめば、ユリウスは苦しい。それは、最後まで自分を信じた村の人間がいた。
そして、アテナの剣では、大事な恋人と親友がいた。
ーーあいつを見つけて、復讐する。
それがユリウスが生きる理由だ。
ーー賢者の石を手に入れる。
「俺が一人でする」
「え、でも」
「ユリウス、お前やられるぞ」
ヴィルフリートはレッドローズのエースだった。
ここでは頼れるのは、安全圏にいる教官の軍人でも、帝国の大人でもない。
「仲間を助けることは普通だ」
「相変わらず、馬鹿だな」
「にげよう、ロザリンド、ミューズ」
「で、でも」
「どうせあいつらはいちいち確認しない、入れ替わりがいくらでもいるんだから」
ゴブリン種の少年は劣等生だった。
誰にも屈せず、それでも目の前の敵に立ち向かう。
それは悪鬼そのもの、殺戮している光景。気づけば、ハルトヴィヒは紫がかった黒髪の長い髪のヴァンパイアに駆け寄っていた。
「手伝う」
「できるのか?」
ハルトヴィヒはにっ、と笑う。
始末書ものだな。
「やってやるさ」
良くも悪くもディヴィドは法を、ルールを求める人間であり、卑怯なことを嫌う。幼少時から穏やかで温厚、好奇心旺盛だった。
・・・カイザー。
彼が帝国になさないことがあるなら、僕はどうすべきか。
フレッドやテおドール、正しい方法を求める仲間を得たことはうれしいが、今さら捨てた家に力を借りる気はない。
イリスの騎士である以上、彼女の意志を世界に示す必要がある。
マリー・アンジュ。ディヴィドの親友の妹だ。
君は今の僕を見て、どう思う。
フォルトゥナ騎士団所属、フレッドは己の意志を曲げることはできない。
「頑固者だな」
「いかなる理由があろうとも、お前達の野望のために法を曲げてはならない、意志があるなら正しい方法を選ぶんだ」
「貴様・・・ッ」
コウモリの隊長に時臣は感情をぶつけた。
「何度でもいう、行かしてやるから仲間の居場所を言え」
場所はワイバァン隊、タナトスが共有する塔。
「卑怯者、子供まで手に掛けるなんて」
「テロリストの仲間だ、それに殺してはいないのだから問題はないだろう」
噂はかなり悪い。
「異端審問と手を組んで、無実の人間を・・・」
銀の十字架≪シルヴァ・クロイツ≫はパンドラを討伐することにあるが、根絶は実は目的にしていない。ヴィッターの妹がケンタウロス種にサートゥンの壁を越えられかけた時、パルビアの事が思い浮かぶ。リーゼロッテやアーデルハイトとも懇意だった、菫の花が好きな北方のヴァルキュリアという異名を持つ緑の衣の女神。呪われた大地、かっての混沌の魔女の本拠地。
「どうしてくれんだよ、あぁっ」
周囲の軍人や戦司祭は、エール遊撃部隊の荒くれ者、ガナヴの胸に装飾されたラミアの横顔を見つめる。
「私は間違えていない」
銀の十字架といってもお上品な人間ばかりではない。ガナヴは海のパンドラに多く襲撃される町の出身だ。恐怖は彼が母親の胎の中から刻まれたのだろう。
「お前達が勝手に動いたせいで、俺達のチームは被害が多く出た、このおとしまえどうしてくれんだ」
「私の記憶ではお前は粗暴だが頭はいいと記憶しているが、お前たちが先にミスしただろう」
「うっ、それは・・でもよ、仲間が死んだんだ、少しは哀しまないのかよ」
くすくすとつややかな声がこぼれる。暗闇を背負ったような少女が鴉を連れて現れる。呪術士【ストラーダ】で暗殺者、サーウォン遊撃部隊所属の少女だ。
「お前もいたのかよ」
背が高く、黒髪の短髪、全身に呪痕を刻んでいる。紫の切れ長の瞳にほくろがある。
「あら、スーリスのいるところがヴェリの居場所よ」
黒い傘【シュヴァルツ・パラソル】のメンバーであり、その出自は陰惨な血と策略に満ちたものだ。
「スーリス、お前もあの鮮血のメアリーの手下なのかよ」
問題児で天才たちの集まり、西方遊撃部隊は、魔女を多く殺す武力主義の部隊である。
「喧嘩はやめてくださいっ」
「なんだ、エ―リウちゃんか」
駆け寄ってくる音が聞こえる。
「待ちなさいよ、エ―リウ」
南方(ヴァーヌス)出身のアルウェズが北方【ツヴァイトーク】出身の法術士、サイヴ村の妖精娘、ファーティを連れてくる。ぱんぱんと誰かが手をたたく。
東方遊撃部隊のエース、イシュタルの戦司祭、ジュリエット・エレヴレーッぁンが多くの軍人を連れて現れる。
「みなさん、仲良しなのはいいですが、救済の時ですよ」
異端審問官は、文字通り取り仕切る機関だ。何を?
乾いた風が、ヒューイを通り抜けていく。少数精鋭、機密機関タナトスと行動を共にし、絶壁の上の基地―廃墟と化した古城を思わせる場所で寝食を共にしている。
「西の魔女【ウエスト・ソルシエール】か・・・」
隣国の王族にも頼られる魔女だ。代々、血族にその魔力と術式、初代の記憶を引き継がせる。中世の時代ならば、無実の民を魔女として処罰する。
「よお」
いつの間にか、隣には重度のカジノ好き、キャンディを片時も離さないドロシー・がるランドがたっていた。
「東の魔女を本国に送ったそうだな」
「任務ですから」
―ブルー・レジ―ナは、三年前、現在15歳の少女の元に来なくなってしまった。オナシス家や伝道師、二ケの肖像の信者からは戦闘で負傷したというだけだ。
「申し訳ありません」
「いいのよ、貴方が儀式の最中抜け出していたのは知っていたわ」
お傍づきの少女は森の最大奥の禁止エリアに入ったという。
「理由を聞いてもいい?」
「・・・青の騎士様【アズゥ・カヴァリエ―レ】に会いたくて」
少女は頬を赤らめる。
「あなた・・・」
「わかっています、パンドラ風情が人間様に相手何かされるわけないって、でも私は巫女様にお仕えする一生を嫌いになったのではありません、ここで死ぬのも当然と思います、ただ騎士様が故郷で見たという天空城をこの目で見たくて」
≪フライ・ライト・コール≫
エミリアが、町の隅で仲間を呼ぶ魔法を行う。
「軍も引いたし、あんたらはどうする」
「ま、適当にするさ」
そもそもザファルートが悪いのよ。
「何だ?」
ヴァイオレットはまた理由のわからないイライラに支配されていた。
「人前でたばこは失礼じゃないですか」
「作戦には問題ないだろう」
―一年前、アルヴィンはその少女に出会って、恋に落ちた。
ブラッディ・ローズを破門させられたアルヴィンの天敵はいつも血の雨を流す。
【天空斬・・・ッ】
アーデルハイトが来ると掴んでいた敵のスパイが流れ込んでくる。だがアルヴィンの舞台の精鋭の戦司祭は連携を崩し、一人突進する少年を忌々しそうに睨む。悪行を働く金持ちや大貴族がスリエルの騎士団が貧民たちに大人気で、ローゼンバルツァーの天下が始まろうとしている。今回の彼らの敵はアテナの剣の中でも中級レベルで指揮の経験もあるユニコーンとサイクロプロス種のチェス兵だ。町の中の戦闘にもなれ、ただ破壊し、殺すだけの馬鹿ではない。
獣から魔法剣に形状を変え、敵の中核、ボスへとアルヴィンは突進していく。アルヴィン・スパロウは魔法騎士と精霊騎士の中間であり、武術も剣術も使える。銀の十字架は度重なる戦闘中の違反行為、協調性のなさで、光と炎と闇のマナを持つ、だが使えないアルヴィンを下に落とした。
ズガぁぁン。戦闘においては有力な戦力だ、アルヴィンの得意技がパンドラ達を倒していく。轟音、雷鳴と突風。地面が引き裂かれ、目の前のものを敵味方関係なく光速の見事なけんぎの渦に巻き込まれていく。集中が切れた。
「にげるぞ」
「ああ」
アルヴィンにおいては見捨てていいと戦司祭たちは退散していく。
「あ、やべ」
賢明な判断だ。アルヴィンは優等生というべき才能はあるがマナを扱えきれず、集中力と冷静さ、計画性がない。つまりは自分のマナを出しすぎ、自滅した。
「いきなよ、ヴォルフリート」
「ルードヴィッヒ」
「僕はもう少し、ここにいる」
「そうか・・・」
そう言って、フォース・ナイツとともにヴォルフリートは去る。
ブラウン・ローズ内では、戦闘訓練のほかは普通の勉強の時間もある。教官や軍人、先生達は番号やらで呼ぶけど、あだ名だろうとやっぱり自分の名前には愛着があった。
p-rix23、妖精と鬼の混合種、皆は多分お金持ちの子ということで嫌われていたのか、あえてプリンセスと呼んでいた。
「お前何で髪を伸ばしてんの」
「あれだろ、人間に戻れると思ってんだよ」
美形と化け物のどちらか、ここでは平凡な中間の姿で生まれる者はいない。
「いいでしょ」
「まあ、お前のはいいけど、あいつ、目立つんだよな」
「誰よ」
ほれ、と指さすと、周囲の空気が変わる。特に際立って怖い顔でも、人外に美しいわけでもない。
「・・・・ユーリヒューマン?」
「一人じゃないんだ、あいつ兄貴が神様の子なんだぜ、金持ちの変態が魔術師のサンプルで作った人間もどきの一つだよ」
「そんなの珍しくないわ、実験体でしょ」
「で、赤の女王【レッド・レジ―ナ】のお気に入り、これが一番のニュース」
「・・・アガット、お前突っ込んでいくの止めろよ」
ワイバァン隊で大掛かりなソールへの遠征が行われた。テントを張り、アガットは帝国軍本部隊と行動していた。
「うるせ、俺は直感型何だよ」
当然だが、補給部隊や医療班、コウモリも選ばれたメンバーも行動している。場合によってはアテナの剣とも協力するのだ。
「何で敵と・・・」
イフリート隊は反乱分子となったベガ属の統領、その一族を討伐していく。統領の娘ユーナは姿を消している。
「同情したところでなにも変わらないぞ、時臣、クロウ」
「お前・・・」
ノアを2人はにらむ。
「そんな言い方ないだろ」
ヘルムートがノアの前に出る。
「・・・・よいですか、お前に逆らうという感情はいりません」
グラヴィーダス家。ローザリンデもイザべらも、甘さを許されなかった。お互い、姉妹という感覚もなかった。優しさ、慈愛、期待、怒り、哀しさ。勿論、アテナの剣や天魔落ちよりはましだが、魔術師、騎士の子は家族の情愛は本で読むしか知らない。
「はい」
練習相手のレーヴェ卿、ディアボロ家。その子息たち。ゾフィーの家の子に生まれたかった、あるいはオーウェンの。
魔法使いにせよ、聖騎士にせよ、生半可な策略やいじめが介入することはなく、己の実力、古い血統、それは神様や精霊を使う法術士や予言や治療魔法を使う白魔術師も同じで、二年も過ぎれば、学生と塔での寮生活、バトルにもなれるが、血筋だけの本当の無能は消えていく。厳しい訓練やクエスト、それに耐えきれず精神を病むもの、実力がなく諦めるもの、騙しあいになれずノーマナの世界にくだるもの。
自分を追い詰めたそういう連中もすぐ上につぶされ。
「セレストは、能なしなのよ」
「家が始まって以来の無能令嬢」
友達もここでは違う。ライバル、対等に痛みを分け合ったもの。家に帰れた、少なくとも周りのように期待とか背負うものはない。
「残念ですわ、お父様」
「何?」
闇の色を溶かしこんだような少女、紫水晶のような大きな瞳。世間知らずのお嬢様。マナの粒子が走る。
「行くのです、ドロテア」
「負けませんわ」
アーディン・リーフテットは、反対方向にマギアガンを連れて、敵の元に向かう。
「アルヴィンさんはすごいですね」
「エミ―ル・・・」
「優しくて、正義の味方で・・・」
「痴話げんか?」
「違う」
「ないっ」
アガットはダンサーの少女と顔を合わせた。
「なんだよ」
「ええと」
「何で、目をそらす?」
「ディートリンデ、君はカイザーのどちらを」
「私の兄たちは戦争ごっこに夢中なのよ」
大勢の人が集まる。
「革命家のアイドルか」
もちろん、その二人が勢いを増しているのがわかる。
声を上げ、今の世界を否定する。
「何か」
「ブラウン・ローズの仲間だろ」
だが、それでもアガットの言うことを聞かないだろう。
「軍国の兵士だ、裏切り者には死を」
「止めろ」
アガットはあわててゴットヴァルトの体を押さえる。
「てめえ・・・」
「ああ、その制服は、ブレイヴか」
アルヴィンは拳銃を構えたままだ。
「子供は元気だね、少し情報を流したらお友達同士で喧嘩だ」
「ム―デを売ったのか」
正義の加護、万能の加護、これがアルベルトが精霊により与えられたものか。カイはそれでも挑むことをやめるわけにはいかなかった。
「?何か、やる気か」
死刑となった男の娘、スレイヴ姉妹は可憐な、それでいて毒はなだ。だから、あるフレートに同情するいわれも、ジョルジュにそんなまなざしを向けられる必要もない。
「行きましょう」
「ええ」
パ気パ木とシエラの体が足元から凍りついていく。
「あ・・あぁ・・・っ」
「サぁ、青の女王、早く力を発しなさい名」
「止めて、こんなひどい」
うっ、とアリスは目を伏せる。
シエラの後ろには、シエラ達の領民の姿がある。
「卑怯者が」
だが、どんな男も武器も彼女を傷つけることができない。そういう風にできている。幻惑の魔女【イルサオン・ソルシエール】は、イヤらしく笑う。
品性のない女の子だ、とおもう。ヴァガットにつき、悪行三昧。嫌がること、人が苦しむのもゲーム感覚。とろけるような甘い声だ。だがそれゆえに、毒がすごい。外見は15歳の少女に見えるが、魔女なのだ。彼女の腕の中にはコーデリアがいる。
「貴方が世界を救う?」
カイザーを色情の塊のように見せたのも、コーデリアを操っていたのも頭の悪い、だが人類がこれまでひき離せない業を知っているゆえ、誠実な騎士や貞淑な女性も彼女の魔術にかかれば、破滅の道を行く。ヘレネの恋の相手も知っていて。壊れていく様を魔女は楽しんでいる。
・・・許せない。
「ああ、言っておくけど、ヴァガット様の命令じゃないわ、貴方を憎む雑種のお願いよ、かなり、貴方恨まれているわよ、大変ね」
ダークブラウンの髪の少年が思い浮かんだ。
「それはまさかゴットヴァルト…、あいつのことか」
幻惑の魔女【イルサオン・ソルシエール】がきょとんとなる。そしてぷっ、と吹き出す。
「あはははは、あなた、面白いこと言うのね、おっかしー、そうね、貴方は今までそうだったものね、貧しいものがじぶんをねたんでいると思っているのね、おめでたい頭ね、うらやましいわ」
そこで少女は胸を支えるように腕を組む。
「自分が生きてて一度も恨まれていないなんて、よく思えるわね、ありえない」
「君はヴァガットの【イデア・エイムコール】でだまされている・・・元に戻せとは言わない、だから俺で終わりにしろ、コーデリアは何の関係もない」
「あら、それは殺されていいということかしら」
「そうだ、俺はどうなってもいい、だからこんな無駄な争いはやめるんだ、無実の民を恐怖にさらすのはやめるんだ」
すると馬鹿な笑みを浮かべた少女は微笑を浮かべたまま、声色を変えた。
「あはっ、ほんっと、救世主様なのね、みんな大好きで平等で清らかで、ブルー・レジ―ナにそっくり・・・そして、貴方はすごく傲慢だわ」
「っ、おれが傲慢だと?」
「自分の思い通りになると思っているのね、愛をささやけば皆、敵対する者もじぶんの言うことを聞くと思っている、自分が身をささげれば誰かが喜ぶと思ってる」
「それに何の問題があるんだ」
「教えておくわ、救世主、お前は誰も救えない、お前はいつでも冷酷な殺人者よ、ヴァガット様よりさらに最低のね」
「己を守れない人間に理想を語る資格も価値もない、だから」
少女が前に出る。
「そのあなたが何者かになるですって?大事な人を守る?ヴァガット様を倒す?」
「無理よ、自己犠牲の勇者様、だって貴方は自分がないもの」
カイザーは衝撃を受ける。
「お前、何言って・・・」
「フランシス・フォン・ディアボロ」
「ああ、お前か」
ディアナはまだにらんでいる。
「どうして、かくまうの」
部屋の隅で彼女の従者が見ている。
「アレッシオトの家と仲良くしたくてね」
「私は犯罪者なのに」
「ご機嫌取りなのよ」
「はぁ・・・」
ドロテアやキャサリンは、ハインツに愚痴を言ってくる。だがどうしようもないことだ。
「なんで、あんな・・・」
「いったでしょう、デヴィッド卿、イリス、dすぎた真似はやめなさいと」
馬鹿正直にのこのこと。
「・・・何で、石を示すのに、無関係のものを」
意志があるが、手が震えている。
―何で、そんなに大騒ぎするのだろう。ヴィッターは、トトの異界からのモンスター、ドラゴンに似た魔獣を背に、前には隣国の魔法小隊に、賞金がついている自分に殺す気満々の連中に目癖がついた黒髪にダークブルーの緩んだ瞳、猫背きみの長身瘦体。ランスロットの戦闘兵の身が着用を許される鎧とローブが混ざった特殊な戦闘服を身にまとっている。
「何で、あんたらそんなに生きることに懸命なわけ?」
碧の箒の魔術師は「お前はまた・・・」と顔をしかめている。
「いや、だって、稲妻眼(フォールゴレ・アイ)の俺を狙うなんて、よほど仕事好きなんだなって」
様々な悪名や噂、狂った卵は単純にからかう悪質な人間とは別にパンドラからも嫌われている、一番のやばさが天魔落ちなら、第二位が狂った卵(クルーエル・オ―ヴォ)だ。
「―なっ」
「お前、俺達をたばかる気か」
「かかれ」
掛け声があふれ、実戦用の戦闘魔法を作り、襲いかかる。
―何で、人間って戦争というか、殺しあいが好きなんだろ?
「やれやれ、おれは動くの好きじゃないんだけどな」
「魔女が・・・」
三つ編みの魔女討伐専門の戦司祭、セア・アーククルクスナイトズの所属の少女カリーナは無作為にアビスから生まれ続ける魔女に憎悪を抱いていた。
「滅びろ・・・」
2
ためらいは死に直結した。相棒のスナイパーライフル。所属はイフリート隊。標的を確実に仕留めるため、マエストロはグリップを握る。すべてのテロリスト、主義者、革命家。標的は依頼人の敵だ。
「剣で銃に立ち向かうとは」
ナターリャが若い少女であろうと、情はない。
「本当にホント」
誰も信じてくれないが、俺にも可愛い純粋な時があった。
「うんっ」
可愛い笑顔の女の子。クローバーが地面にさいて。
「大きくなったら、君を迎えに行く」
ずっとずっと一緒だよ、どちらが言ったか。
でも俺は早く気付くべきだった。永遠の愛そのものが甘くないし、存在しないことを。
「貴様、母さんを見殺しにしておいて」
知られていないが、オルフェウスは復讐しに、公爵の元に来た。
「狼のような目だな」
パンドラも貴族も嫌いで倒してやる、そう思った。
「リリ、その背中の傷は」
絹糸のようなリリの黄金色の長い髪は薬草が溶け込んだ湯船の中で軽やかな円の形を生み出していた。
「・・・・私は、里を復活させる」
サアラは黙り込む。
「お前にも守りたいものができただろう、俺たち以外にも」
奴らの多くが、カイザーに力を貸す。虐げられた人がいて、だがそれでも帝国がなくなった後のことは想像できないし。
クリスタルが自分を見たとき、憎むべきものと言いたげに自分を一瞬見るがアルヴィンに気遣っただろう、笑顔。
「はじめまして」
「よろしく」
見慣れた、ものだ。
―斬斬斬ッ。
「ヘンリー、すべての敵を殲滅せよ」
ワイバァン隊総隊長が剣を握りながらヘンリーに命令する。
「行くぞ」
「命令するな」
「気は確かか、そいつはパンドラだぞ」
アウグストが仲間とともに叫ぶ。
「これは一体・・・」
ハルトは右目の呪印が起動したこと、自分にそんなものがあることも知らなかった。「・・・お前は何者だ」
ルクスがたちあがり、ハルトをにらむ。
「アルムティの呪い・・・」
エミリアがぽつりとつぶやく。
「え?」
「パンドラは双子で生まれると、お互いを殺し合うようにできているの」
「俺は人間だぞ」
「例外ということかしら」
「カイザーから離れなさい、アプリコット」
「貴方は」
アプリコットは驚いたように少女を見る。
「何で、君がここに」
「・・・・なぜ、君がここにいる、君が青銀の聖剣を扱えるのだ」
ヒュウウウ―・・・。
青いセーラー風のエリを持つ制服を身にまといながら、ヒューストンは驚いたようにタワーの頂上に来た少女を正直に声を上げる。それくらい、意外な人物だったのだ。アリスは破れた衣装をまとめながら、鳳凰の巫女の魂が宿ったジュエルを見ながら、ディートリンデを見る。
「弱い者いじめがそんなに楽しい?」
「そうですか、アンジュリカが」
「はい、アンナ・ジュリア」
フレッドは深々と頭を下げる。隣に同じように黄金の長いウェーブヘアの少女がいる。
悪い女の悪魔は倒され、お姫様は親友に裏切られたことを知りながら、とうとう王子様と結ばれたのです。
「しかし、あの実験体、全然笑いませんね」
デスティネ。それが私の名前。悪い魔物の女。任務を放棄し、帝国に反逆して、魔術士の娘となった少女。両親がなぜ自分を遠ざけたのか、今ならわかる。自分のせいではない。意地悪な辺境の魔物の商人の下にいたのも、私が罪深いから、悪い子だから、そう運命を受け入れていた。私が化け物なら、本物のデスティネはどこにいるのだろう。
「クラウドの騎士を君一人で殺させようとは、それもフォボスの指示なのか」
蛇の遺伝子を持つパンドラがきっ、とにらむ。シュテファンは憎悪のまなざしを向けられる。蜘蛛女のスナイパーや虎に化ける大男、石のような肌の悪魔。
「―あんな卑怯者のために誰が死ぬか」
使い捨ての兵士なのだろう、10代から20代、どれもエデンで使い捨て、危険、狂った卵とされた凶悪なタイプの廃棄されるはずのパンドラだ。
「君達はあんな病気がちの小さな子にも危険な仕事をさせた、そのことは自覚しているのかい」
「壊れた卵はもともと死ぬことが早く決められている、兵士なら死ぬことも覚悟している」
リミットか、だが最高傑作があるということはある程度数を決める必要がある。彼らもエデンで作られたクッキーを所有している。もうすぐ死ぬ可能性のある駄目なパンドラなのだろう。だが初めてだな。
彼らは、オリガなくなり、死ぬ直前となり自由を得たことで外に出て、生きる気力を、生命力を瞳に宿している。
理性をなくし、魔獣となる運命でありながら、同時に安らかな生活も遅れたのに彼らは銃を取っている。それしかすることがないのか?
「・・・・・メルヴィ、俺は」
ルードヴィッヒはピンチの時に現れた少女に顔をあげられる。
「なんて顔をしているの」
「気にすることはありません」
だが、ソフィアは卒業式の日のパレードにいるパンドラ達の列を見る。その中に狂った卵の二体がいる。口元が動く。
「っ」
確かに言った。嘘つき、と。
「・・・・そんな、異界の扉が開いて、こんなに」
多くのものがウx-ロックに飲み込まれたのだ。フェイト、エリゼ、そしてヴァルトルーデ・バルツァーが箒に乗ってやってくる。
死の美しさ、そういうべきか。天使か女神か、ヴァルトルーデはダークブルーの長い膝近くの髪をサイドテールにしていた。
「これはあいつと私のかけなんだよ」
単発のボーイッシュなイフリート隊の少女はにししっと笑う。ヘルムートとヴォルフリート、アルヴィンはあきれた表情で見る。
「次ぎ、会いに来る時は俺が勝つ」
「また、アーク隊の刺客か」
「大人気だな」
「お前はまた・・・」
アーク隊の精霊騎士は女王の国の大通りで、決闘を申し込んできたヴラスタリ家の嫡男と女王の国の魔術師の間に入り。
「ここは民がいきかう場所です、よくお考えください」
「他国の軍人の分際で・・・」
周囲の通行人や商売人もどよめきを隠せない。
「俺を誰だと思っている、俺はな」
「いかなる身分であろうと、民を巻き込む暴力は許されていません」
「くっ、小娘が」
告げられることの無い絶望│
劇場の前では今日も多くの喫茶店、カフェがある。
「疲れた、今日こそは寝るぞ」
ヴィッターはうるさいヴィクトリアたちを待ちながら、エクリプスの記事を見る。
「あいせき、いいか」
すると、金持ち公の制服を着た生意気そうな少年が隣に座った。人ごみの中に暗殺者に似た青年を見る。
「…まあ、双子かも」
ライバルらしい漆黒の美しい少年は女優の少女たちを連れて、席をはずした少年と言い争いを始めた。
3
ハート・レクス、君が。
カイは倒される直前だった。敵においては予定調和でしかなかっただろう。だが、それでも予想外の現実にそう思わずにはいれない。
ヴァガットが王座に座っていた。心臓(ハート)の王の椅子に。
ハートの騎士、ミゲルは明るく笑い、ユリウスは沈黙を守る。
「おまえ、かったいな」
「うるさいのは嫌いだ」
≪エヴァンタイユ・グレンツェ・・・・ツ≫
「意識操作や幻術の類、白魔法か」
エイルはまっすぐにアプリコットを見る。次で彼女も自分の最高の一手を売ってくるだろう。
征服の魔女は、革命の中、アルバートに言う。
「誰をも救う?」
「ああ」
「正気なの、それがどれだけ罪深い、恐れ深い願いか本気でわかっている?」
「クロノが君を待っている」
「ああ、いずれね」
「だが、虐げられた側は常に奇跡を求める」
「そして彼らは見てしまった」
「フォボスを、そして虚無の魔王を、すべてのパンドラは彼らを求める」
「くっ」
クロ―ディアはピンチを迎えていた。
だが、それでも、引くわけにいかない。クロ―ディア・フォン・ローゼンバルツァー。ラインハルトがゴッドスレイヴの実験で絆の魔女の遺伝子と混ぜて生み出した人工的な魔女。
「蛇のような目の女です」
漆黒の剣の女魔術師はにやりと笑う。
左手に漆黒の植物を模したひし形の紋章霊石がある。
母に忌み嫌われていた。だから、今もアンソニーを従わせ、森の中の屋敷に住んでいる。
「それでも私は、引くわけにいかないのです」
「アルフ」
森の中に白いフクロウ、アルフの使い魔が戻ってくる。
「ルーティ、アプリコットはもう過去の彼女じゃない」
「そんなのわからないじゃない」
「・・・」
アルトゥルは何も言わなかった。
彼らは母など知らない。
永久な平和と幸福の名のもとにただひれ伏すしか、今に抵抗するすべしか、困難な目の前の現実しか知らない。
「無茶な、荒唐無稽だっ」
白の騎士団団長は机を叩いていた。国境沿いの反乱、それに立ち向かう間にシーズン前の戦士たちをそれもじぶんの子供と大差ない異形の姿の子供たちを戦場に使うことがきめられた。本部隊を守るためのお取りのための陽動作戦、回復能力の高さと戦闘マシーンとしての英才教育。これにより国民は、兵士たちは安全に生きられる。本当に危ないことは生まれついての兵器に任せればいい、だれもがそう思っていた。
「控えよ、これは上からの正式な通達である」
「彼らの代わりなどすぐに補充できる、問題はない」
「見捨てたというのか、君の家族となった彼らを」
気のいい、いい奴と思っていたアードルフは、冒険者たちに囲まれながら、手錠をはめられたパンドラにそういった。
「家族?僕は知りませんよ、変なことをいいますね」
「そんな・・・、君は彼らを愛していなかったというのか」
「あの人達はこれ以上生存させても何の価値もありません、なら、殺された方がこの後、地獄を見るよりましなのでは」
「そ・・・んな・・・」
「よりよい強いものが生き残り、世界を手に入れる、僕を殺すなら殺してください、帝国が未来永劫繁栄し続けることを願いましょう」
ローザリンデが、実戦向きの二節の呪文を唱える。
キぃィィン。
《フォートゥム・テルマ ≫
ブラッディ・ローズとぶつかったのは、イシュタルの北西部、辺境の吹きあふれる強風と嵐、自然の恵みが少ない、精霊が多く存在する泉や湖が点在する場所だった。そこの住民は羊や牛を育て、決まった場所に住まない。
故に争いを経験していないということはない。すぐそばに皇族達のための別荘があり、国王の命令の元基地が作られていた。
ネフィリアは神を引っ張られる。帝国軍は自分達の罪に気付かない。
「どう、おとしまいをつけるんだ」
「なあ、巫女姫様」
「祈りで谷底の臣民を助けて見せろ」
「・・・・私は誰もが幸福になんて、信じていない」
逃亡中だ。だがウェーブヘアのその少女はそういった。ドラゴン教の末路、塔での出来事を言っているのだろう。
「神様に仕える巫女だろ」
「・・・どうだろう、私はそれしか知らないから、でもあなたを救いたいとは思う」
まあ、まじめだ。
「あのな、俺は別に助けてほしいから連れだしたんじゃねえぞ」
「でしょうね、でも内乱はいずれ起きてた」
「それも予知能力か?」
少女は自分をみる。
「私はそこまですごくないわ、本の先だけ、鳳凰の力を借りて、見るだけ、私は天罰を受け、貴方を置いて死ぬ、それが運命」
「あほか、電波は直せよ、大体ありえないだろ」
口をつけてきた。でもキスではないな。
「私はそのために生まれた、でもあなたは違うという、なぜ?貴方は風の神子、そんな力は与えられていないはず」
「そんなの、一つに決まっているだろ」
「貴方は一人が嫌なのだろう」
「・・・お前のことが、つまり」
「つまり」
「・・・もう行こうぜ、追ってもくるだろうし」
「髪何か伸ばして馬鹿じゃねえの」
ヴィクターがアリ―シャの髪を引っ張る。
「いいでしょう、別に」
「ちゃらちゃらしてもお前いつも一位だもんな、いいよなフェリクスは気楽で」
「なによう」
生真面目と言えばいいが、かたく名までのデヴィッドの平和への願い。自己犠牲。その姿はヴォルフリートが持っているはずがない。
あの惨劇であなたに何があったというの?
だからーー
「ヴォルフリート、雰囲気変わったわね」
「ヘレネ、俺は」
「前はあんなに、人を避けていたのに、心境の変化の理由を聞いていいかしら」
「相変わらず熱いの苦手だね」
アリスはオリバーに対して苦笑いを浮かべる。
「・・・言わないでください、気にしてるんですから」
「よいですか、アルフレート様」
威圧、という言葉と穏やかさを秘めた父は意識を常に帝国に向けていた。
移民の教育係は元宮廷騎士であり、アルフレートに甘やかすことなどしなかった。ルベンティ―ナ、二人の兄と妹。
「優しさは戦場において無意味です」
「なぜだ、ネフィリア。そこまでお前は落ちたのか」
ユリウスは驚いたように目を見開かせている。フィランは切なげにデイジーを見る。
「なぜ、あのベルンホルトなどのもののメイドとなり果てた」
「落ちぶれてまで生きたいのか」
4
鈴のように軽やかな声だ。
「ルードヴィッヒ」
これは一年前、リーゼロッテ・オーウェンの戦闘での記憶だ。当然だが人間はパンドラや魔女に比べれれば、脆弱であり、壊れやすい。
「別にここにいるわけじゃねえし」
「え」
「自分の意思でここにいるわけじゃねえし」
ミントはでもダヴィデの言葉を問いたださなかった。
「だましたのね」
「いやいや、お嬢さん、何言ってんの、こんなのだましうちにすらならないじゃないか、優等生なこの欠点だね、問題を解いただけでそれが正解だと思うんだから」
「大体、最下位のブレイクエッグが高位のユニコーンと王冠の誓いなんてできないっての」
「じゃ、僕は行くよ」
「君は若い、それにまだ子供だ、何でそう焦るんだ?」
誰もが好きなものになれて、どこにでも行ける。だが、裏通りを歩けば、逆らう自由が蔓延している。
臣民が恐怖している、いつかその牙が自分達に向かうのではないかと。現在、彼女は近衛騎士団の候補生だが、ディアナの誘拐事件もある。
「国を守るのは臣民の義務です」
指揮官を任され、アースエンジェルスを指揮している。
「全く、宮廷の花にするきだった母君の苦労がわかるよ」
戦場において、弱さを見せることは死を意味する。正しくあれ、帝国の臣民、名門の魔術師として模範であれ。
貴族としての教育、魔術師としての過酷な修行。厳しい兄との対決という魔法の鍛錬。
オナシス家の子弟との競争。
姉やエストという高い目標、同じものを母はシエラに求めた。
貴族は、才能あるものは臣民と帝国を守らないといけない。ゆえに負けた者はだれも見てくれない。
・・・姉上。
敵に何度も闇の魔法、攻撃魔法を魔法剣で受けながら、騎士としてフレッドは民を守る。例えば書が違えても、自分はサファイヤエルの弟である。
君さえいれば、幼年学校からの親友は、金髪長髪の剣士は、悪魔に耳を貸し、女王の国には向かう革命家だ。
「行ってはなりません、坊ちゃん」
妹も自分もあの日まで、姉を唯一の家族と思っていた。観衆は石を投げ、罵声を浴びせる。
「裏切り者」
あの時の自分はなぜ聡明で優しい姉を助けなかったのか。自分が憎んでいたパンドラや天魔落ちのたぐいだった。人として許してはいけない。
・・・残された母や妹にまで異端審問官の手にかかってはいけない。
嘘をついていた、当然だ。
そう反する思いを今も抱える。
例えばアレクシスやカイザーのように最初から上にいる家なら、実力があるなら、姉と敵対する状況ではなく、逃がす道もあったのではないか。
「偽物ですね」
情報や、タナトスの少女はルーティやアルフにそういった。閃光が、結晶因子が消えさる。
「離せ、人間」
「俺だ、ルクス、ハルトだ」
「いいかげんに・・っ」
「俺はお前の兄だ」
「私に兄なんていない」
中途半端な男はお前にふさわしくない、同格の男を。愛や情で惑わすモノは貴方の友ではない、人以下の下民です。
醜悪なパンドラはけがれた大地の魔物、奴らに同情する価値はない。
ヴィクトリアもそれは同様。
昔から定番だが、いつか自分を救う王子様が自分のピンチを救う。そういう話は何度も描かれる。オペラや芸術家に、庶民階級の低俗な創作でも。
「君は冷たい女の子だね」
何度目かの振った男子から言われた。自分と同格の相手しか、相手を図ってはいけない。そこに娯楽は、少年少女につけこむ。シエラは流行りのお菓子も洋服も邪魔だと、ヴィクトリアもマリアベルも心で馬鹿にした。同級生のいわれのない噂、なくした備品、同じ隊からのいやがらせ。
そのたびにふまれたくない、自分はいずれ英雄となる。
ある日見た、人気者の男子の放課後の友人の会話。酷い低俗な、だが彼らもおびえていた。男子も男子で陥れる、お互いを監視あい。男の友情はすがすがしい、あれは誰が言ったのか。
「ひひ」
低俗な笑み、伸びる黒髪の長い髪、黄金の切れ長の瞳、白い顔、握る短銃と細みの長い銃。
お伽噺に出てくる、悪い悪人、悪魔。悪い妖精。
「てめえはあほですか、俺がこの程度で××になると。ひひひひひひ、お前らが俺を殺す?」
半分は人間の美しい少年の顔、だが半分は。
フィら―とは学園の誰もが認める、遊び人でムードメーカーだ。週末は冒険者として戦士をしている。
「君、きゃわいいね」
「お姉さん、遊びましょう」
軽薄ではあるがこう見えて友情には厚い。意外と顔も広く、が、してはいけないことはこう見えてわきまえている。
シエラ達をかばうことはコウモリたちに下された命令ではない。異形の悪魔達、救いようのない悪。
「殺せぇぇ」
「何してんだよ、パンドラを速く始末しろ」
だが、彼らが少年に答えたのはこれが答え。
誰も疑問を抱かない。不思議と思わない。当たり前だから。
「あいつ、役に立たねえな」
「全部殺せよ」
―何で。
最悪だ。
「あぁ、女一人に大の男が囲むなんて、兵隊くずれはクズだなぁ」
銃声、銃声。魔法弾の嵐。彼らとともに移動し、敵に攻撃する。ヘンリーは敵の頭上に飛び移り、風を操り、殺戮し、数人の分身を敵に解き放ち、瞬時に銃で殺す。シエラの腕をとり、建物の上を笑いながら走り回り、その間銃を撃ち、漆黒の時空の穴を生みだし、剣を奪い切り裂き、槍でめった刺し、コウモリたちも後に続き、せん滅していく。
「このできそこないがっ」
「あはは、月並みな反応」
だがヘンリーは銃を捨て、巨大な死神の鎌を取り、シエラを後ろに突き飛ばした。
「ここまで白といっていない、お前は私が正義の剣で処罰する」
「きひひひ」
「狂った玩具が・・・」
シエラはそこで口を開く。
「逃げなさい、もういいでしょう」
「いやだよ、あんなくそったれな日常に俺に戻れというの、殺すことは俺の生きがいだ、部外者は黙ってほしいね」
少しだけ、見慣れた美しい少年に姿が戻って。石が投げられる。ヘンリーはよけるが次々に石が投げられ、法術が放たれる。
「化け物、化け物」
「けがらわしい、死んでしまえ」
「悪魔、殺人鬼がっ」
「お前もそいつの味方なの、裏切り者」
精霊騎士が剣を向ける。
「私はっ」
「魔女の子ッ」
シエラに下級魔法が向けられる。
その時だ。
「いいんですか」
アヴィスは無意味な質問をする。学園の制服に身を包んだジ―クヴァルトは。
「やれ」
「―なんだ、貴様は」
フォボスを助け、深手を負いながら、いつも通り勝利をつかもうとした時、敵の隠し玉、デビル化に遭遇している時、自分らしくもない。ミスを起こさない自分の読みを呼んでいたのか、新兵器を敵が出して、次の一手を思考に移した時、キメラの姿からゴットヴァルトの姿に移行した時、敵の一手にわざとかかろうとして、部下に目くばせした時、ヴィルフリートは見知らぬ男と出会った。
いや、突入してきた、単身で。
「そのきたねえつらでそいつに近づくんじゃねえよ」
ヴィントはヘンリーの背中を見る。快楽主義の好戦的なヘンリーからしたらシエラはお荷物、自分で殺した方が早い。本部隊、メシアは目的を達して、個の殺戮は多くの人間を助けた。傷だらけで、光や炎の法術でズタぼろ。
「そのエンブレムのハンドガンはまさか、お前、あのウロボロスの―」
「答える義理はない、お前は俺に殺されるんだからな」
ヒュウウウウ―・・・。
「・・・・・オルフェウス、あいつは何者だ」
カイザーの問いに、部下たちにテロリストたちを拘束させながら。
「昔の知り合いだ」
「・・・・風の女神の寵愛を受けしものか」
利用すべきカードになるかもしれない。
「フィズ」
「迎えに来ましたよ、ご主人様」
「お前・・・」
許すこと。
「…貴方は」
イザべラに手を差し出すアリスは、正しい道、優しい世界を望んでいた。アテナの剣との仲介役となり、ヴォルフリートを守り、正しい方法を持って復讐を果たす。
「私を許すというの」
「・・・・格闘技ですか」
「ああ、あちらのコウモリたちとだ」
「…ですが相手は男性です」
「何、催しものだと思えばいい、君の柔術や空手は相当だと聞くよ」
「まるで一人であることが罪人のようにいうね」
神官が、吸血鬼貴族の被害に会った村はずれでエルフリーデにいう。強いものと弱者。搾取されるもの。エルフリーデはそんな不条理は許せないし、正すべきだと思う。
赤い液体がマリアベルの頬を流れる。
残酷な光景で、味方になれない状況で。これがオルフェウス達の命令ではない。
だが、来た。
夕焼けに散らばる黒髪、尖った耳。
「ひっひひっ、あははははははは」
「よお、わが妹」
差し出された手はテロリストの血で染められていて。
「お前のお間抜けな顔拝みに来てやったぜ」
半分皮膚が・・・。
「さぁ、殺しつくそうぜ、あの馬鹿達をよ」
「ひっ」
「いいぜ、初々しいね、たまんねえな、もっと見せろよ」
「ホラ見なさい、本性を見せましたよ、撃ち殺してみなさい」
「マリアベルもいるぞ」
「マリアベル、離れなさい、そいつは化け物ですっ」
「だとよ、レディー、行くんだろ?」
「私は・・・」
「ああ、つまんねえことは考えんな、てめえはお高く上から見ていればいいんだよ」
その時、ユニコーンが姿を現す。
「その方から離れなさい」
ヒュウウウ。
ネフィリアは人間の少女の姿に戻る。
「一応聞くけど、お前馬鹿?」
「答えろ、お前・・・三年前、師匠を」
「ああ、三年前?覚えてないな、何せ殺し合いはしょっちゅうだしな」
「お前は・・」
「ナイトハルトっ」
「邪魔するなよ、いいぜ、思う存分殺しあおうぜ」
「死ねええええ」
「何だぁ、今日はずいぶん豪勢だな、オヤジは趣味じゃないんだけどねぇ」
「何だ黒髪やろうか」
「ゴットヴァルト、勝手な行動は慎めって言っただろ」
「はんっ、いい子気取りが」
「来い」
「俺は誰の指図も受けねえ」
「くるんだ」
「へいへい、全くお貴族さまは面倒だ、おい、来いよ風使い」
「・・・いいのか」
「あ?てめえは年増やじじい達のお相手を続けたいのか?」
「それはないな」
「オルフェウス、そいつは偽物だ」
「今は作戦行動中だ、マリアベルついて来い」
「はい・・・」
「おい、あいつらうざいから斬っていいか、ついでに嬲り殺したい」
「だめだ」
「何でさ、お前もあいつらにいい加減うんざりだろ、こちとら暴れたりないんだ、退屈は人生の一番の毒何だぜ」
「狂ってんな」
「おほめにあずかりどうも」
「私がお前を討つ、カイザーを取り戻すのだ、この化け物が」
「止めてっ」
次の瞬間、シエラはその女性に水の攻撃魔法を放っていた。
「何で」
はぁと息が乱れる。
「もう終わったのよ、これ以上は帝国への・・・ただの暴力行為よ」
ヘンリーはゴットヴァルトの姿に戻り、シエラに近づく。
「…お前、頭大丈夫?」
「黙りなさい、貴方は何者なのよ・・・わけがわからない」
恐怖の存在。血でぬれた殺人者。
「貴方は、だれなの」
冷たい冷血動物のような目だ。
「ヘンリー、それが俺だよ、お嬢さん」
「どういうことか説明して」
「さあね、あんたで考えな、俺は何も教えない、俺がほしいのは血と殺りく、アヴァロンに行く道だけだ」
「なんだ、これは・・・・っ」
ゴォォォォ・・・・・・・・・・・・・・っ。
「―いいかげんにしなさい」
出てきたのは、イングリッドに王宮の上流騎士や槍兵。
「お前達、アウグストともども、全ての関係者を取り押さえなさい」
ルヴァロア卿の息のかかった焔の使い手がコロシアムで陣を作り、攻撃態勢になる。
「何のつもりだ、ヴィンセントッ」
アウグストやエルヴィーラが叫ぶ。
「眠い・・・」
「何よ」
「ヤべえな、血を流しすぎた、なあ、血を飲ませてくれ」
「俺はまた・・・」
「アレクシス、君はまた・・・」
ラインホルトは目を鋭くさせる。
「いいか、今の映像を全部消すんだ」
「了解」
倒れこんで、シエラの腕の中にいた。
「オルフェウス中尉・・・彼は」
「ブレイクエッグ、神様の属性のパンドラだ」
目を閉じ、その寝顔はまるで。
赤い炎の夢を見た。
何度も見た、現実で起きた記憶の。
「久しぶりだな」
「・・・・あ、ナターリャ様」
身体を起こすと、全て終わっていた。
「ッて、何で君と手をつないでるんだよ」
シエラが寝ていた自分と手をつないでいた。
「動かない方がいいわ」
「頭いてて、ついでに体もいたい」
エルヴィーラ達がいない。
「あの・・・」
少女騎士が前に立つ。
「ありがとうございます、助けてくれて」
ハルトやデヴィッドが肩を叩く。
「英雄だな」
懐中時計を見る。ああ、いつも通りか。
「ゴットヴァルト様を偽物呼ばわりして、すいません」
「イヤそれただの事実」
「うまく歩けないだろう、肩を貸す」
フォルトゥナ騎士団も流れてきている中、フレッドはゴットヴァルトに近づいてきた。「え、ああ」
「君はあのパンドラを知っているのか?」
「・・・見ていないのですか」
「そうだけど、問題でも?」
そういう人もいるのか。
「いや、いいんです、医務室に連れて行ってください」
「すごいけがだな、君もテロリストたちと戦っていたんだな」
穏やかに微笑まれても。
「アルフレートに聞いたが君はあの方の従士の一人何だな」
「まあ・・・」
「大変だろうな、オルフェウス様は厳しい方だから、君は穏やかで優しいから軍人は大変だろう」
「穏やかで優しい・・・」
「何かあったら、俺にも連絡してくれ、君は大変な立場だからいらない苦労も多いだろう、相談に乗るよ」
「ご気づかいどうも、君はいい人ですね、うれしいよ」
表情を一応笑顔を浮かべると、一瞬目をぱちくりさせ、なおも穏やかな目でフレッドは見てくる。
「ああ、ああ・・・っ」
「これで買ったと思わないことね」
「・・・何が」
「貴方を認めるつもりは今後もないから」
それだけ言ってマリアベルは去っていく。
「いていいんだそうだ」
「は?」
フレッドは驚いたように後ろに下がる。そんなに驚かなくても。釣銭でもゆすられているのだろうか。
「お前ら面倒なのがよく似ているな、全くもう一人いるとは・・間違えて悪かった」
相当珍しいらしく、フレッドは自分とオルフェウスを見ている。
「ああ、じゃあ、かまってくるの辞めるんですね」
「それはないだろ、お前みたいな駄目な奴を誰が放置するか」
「兄ちゃんはお前を離す気ないぞ」
隣を見ると、フレッドも穏やかな表情のまま、引いていた。僕もだが。
「君、親せきとの付き合いを考えた方がいいと思うぞ」
「あははは、光栄だなぁ」
「引くな、去るな」
「うわぁ・・・」
「ルヴァロア卿も着てたんですか」
「ああ・・」
「エルヴィーラ様は逮捕されたんですか?」
気持ち悪いくらい、ワイバァン隊や年少の少年や少女の騎士がついてくるが何だろうか。
「罪は罪だからね」
「ふうん」
ツンデレ、というか、なんか仕方ねえな、少し認めてやるよナオ―ラが全体に広がっていた。
「王宮騎士がこんなテロ事件に来るんだ」
「まあ、貴族が絡んだ事件だから」
気の毒そうに戦司祭の何人かが見ていた。恐怖する目も。
「今日はお疲れ様です」
「ああ、いつも通りだから」
「妹思いでよかったよ」
暇なのか、ハルトなんとかが廊下の途中で舞っていた。
「妹が可愛いと思ったことないですけど」
「おい」
金髪の天使、いや、無表情の女性騎士が来ていた。
「ああ、後で連絡するよ」
肩を叩かれ、笑顔を向けられた。
「またな」
「・・どうも」
だからお前、誰だよ。
「頭が痛い」
頭を押さえていると、イングリッドが頭を合わせてきた。
「熱はないな」
「・・え、ああ」
「あまり無理するな、今度は無茶は控えることだ」
去って行った。
・・まあ、今日熱いし、変な人も出るか。
偉い美人だったが、ときめきイベントではないな、今の。
「一緒に行こう」
「エリザベートか、うん、いいよ」
オナシス家もそういや、騎士にいたか。
「あの歩きにくい」
「いいじゃない」
「いいか、ヴァデ―レ、奴らが正気を失ったら、この弾丸で――」
到着した時は、すでにもう終わっていた。
「ふぁぁ」
ああ、眠い・・・。学校なんてなければいいのに。
文芸部の扉をあけるため、鍵を出そうとすると、クールビューティー、シエラが来た。
「今にも死にそうな顔ね」
「おはようございます」
今日も切れ味がすごいな。
「海に行ったそうね」
「・・・ああ、うん」
そんなことか。でも、あれ。
「園芸部部員か、口軽いな」
どうでもいいけど。
「人魚姫は陸に出てさぞ後悔したでしょうね」
冷え冷えとして、表情がない。
「僕は彼女じゃないし、まあ男を見る目はないな」
「そうかしら、声を失ってもそれを選んだのは、本物を探しに行ったのはすごい勇気だわ」
何で朝からメルヘンな。まあセレブだしな。
「カイザーも同じ死を選ぶでしょうね」
「ああ女好きのメシアね、自己犠牲なんて迷惑なだけなのに馬鹿だね」
「・・・そうかしら、私は崇高だと思うけど」
「馬鹿だよ、死んで、ほしいものは他人に渡す?そんなの崇高でもない、ナルシストの最低最悪な女だ」
いやな夕日だ。ボー、どこかで船が汽笛を鳴らしている。
「離せよ」
「うるせえ、魔女がっ」
すると異端審問官の少女が海を眺めている黒髪の少年に声をかける。
「何格好つけてんの、たそがれちゃって」
「いえ、少し気分が悪くて」
少女は首を傾ける。
「あんたでも繊細なところがあるのね、オリバー」
「リぇ―タは厳しいな」
力なく、オリバーはウェーブかかった黒髪を風で揺らしながら笑う。
「・・・・満足か、ヴァガットなんかに協力して」
「アーロン、見送りに来たのか」
民を巻き込み、あんなものを作ろうとして。
「フォルクマ―ルも」
「雪ですか・・・」
ウルリヒは、デイジーの神秘的な横顔に、行方不明の騎士団団員を重ねる。
「見たことはありませんね」
「・・・・オルグ」
見つかった時、彼の妹は悪質なサーウィンの宗教団体、鬼属の猟奇的な伝説が残る土地で、唯一生き残っていた。
「彼女は何が・・・・」
「そうね、優しいかもしれないわ」
「うん・・・」
エレンはかわいい。シャーロットはでも、誇り高く不器用な俺様がひどく心を揺らしていることを彼女に告白することができなかった。
「まあ、エストカラス君も優秀な戦士だけど、やっぱり甘いからな」
「そうだけどよ」
「多分本国でも帝国でも、夢に遠ざかるばかりで、自分が無能だと思っているんじゃないかな」
「でも、あいつがいたから、多くの臣民を苦しめたシュヴァルツウルフも」
「優等生とかそういうタイプにありがちだけど、君みたいに少し外れていれば冷静になりやすくていいけど、みんな男の子は好きだろ、英雄とか、世界平和とか友情とか、あるいは好きな子のために生きるとか」
「それの何が問題なんだよ」
「馬鹿なほうが生きやすいこともあるんだよ、君は体力とマナだけしかないけどそういうのは世渡り上手だろ」
「うるせえな、まあいつは細かいから使い物にならなくなるってことか」
「うん、だからよく見ておくことだね、理想をかなえるには馬鹿か冷酷であるほうがかなえやすいんだよ、ああいう子は変な女性とかにはまりやすいから」
「ねえよ、あいつ故郷に美人の婚約者いるし」
「正直きついよ、逃げられないことだからね」
「どうだ、フレッド、王宮騎士に挑戦してみては」
「そんな自分なんて」
「謙遜することはない、誰もお前なら文句は言わないだろう、近衛騎士団からでもいい」
「自分はそのような場より、もっと臣民に近い場所で」
「いつまでも、あんなきれい事だけの場所ではお前の戦闘力は濁るだけだ」
「-よくぬけぬけと私の前に顔を出せたわね、ヴィルフリート」
けれど殺す気はなく、剣を鞘の中に納めている。
「どっちのヴィルフリートかな」
「何よ、その腑抜けたばか丸出しは、あんたらしくもない」
「アルヴィンクンに近づいて、今度は何しでかす気よ」
「純粋に遊んでいるだけだよ」
「あんたの仲間が私の親を・・・・」
「それは僕じゃないよ」
「彼に近づかないで、何かしたら」
「あまり怖いこと言うのやめてくれないかな、僕弱虫だから」
「怖くて手元が狂っちゃうかも」
「話し聞かないの、遺伝子に組み込まれてんのかな」
「あはは」
門前払いだ。すげえ。
「何も言ってないのに人を無視扱いとか、何、あいつの家、精密機械なの?否定はしねえけど」
「しようよ、そこは」
まあ、いいか、病気なら確かに直すのに治療すべきだろう。
「帰ろうぜ、お前の家どこだっけ」
「えっ、送る気なの、きもい」
顔がひどいことになるな。
「じゃあ、ここで解散か、じゃあ俺フラフラしながら帰るわ」
「ブレアァァァァ」
「ハーブや薬草の採集・・・・」
どうもこのお嬢さんは、自然に触れるのが好きらしく、意外にアイテムや毒物の発見、貴重なエリアも見つけてくる。ギルドでも俺のためとい依頼を見つけてくる。学校でもパンドラはいたがこうも人間らしい、笑顔を浮かべる相手は初めてだ。
「ご主人様、ご主人様」
背格好は18歳、スタイル良くすでに女性の領域に入っているのに以外に子供っぽい。なんか妹か、娘ができた気分だ。正直ドキドキするが、こうも信頼されるとそういう気が気のせいのような気がする。
「何だよ」
そんな旅の仲間、俺の使い魔だがただ一つ、誰の影響なのか。
「本屋がありました、寄りましょう」
「だめだ」
「エーっ、この前はいいといったではないですか」
ただで使えるといったが、ご褒美に本屋や村や町の図書館によりたいって何だよ。
「あと少しで夜になる、移動するぞ」
「ひどい、昨日は行っていいといったのに」
「諦めろよ、この前も3時間は読めただろ」
頬を膨らませて。
「やだー、読みたい、読みたい―」
「こら、道の真ん中でじたばたするな」
「ご主人様の悪魔、うそつき、鬼、ペテン師―」
モデル並みに慎重もあり、大人っぽい美人、剣も魔法も完璧。基本優しく従順。なぜか本にだけ異常にわがまま、駄々っ子になる。
「化のものは、その者の深い真実を暴く」
「間違っている、こんなの」
炎が上がる、魔女が焼き殺された、裁きの炎だ。聖女は魔女に変わる。革命に身を落とし。
「秘密を、彼女らの夢に近づく」
メアリもエリザベスも目を伏せる。
悲しい、滑稽な切り落とされた、真実だ。だが自由を奪われ、羽を奪われ、清らかで希望でいることしかいられない。
「フォボス、助けて」
それは祈りではない、悲鳴だった。
「私は迷いたい」
優しい子t場ではなく、拷問からの解放を願う無力な少女の涙だった。殺戮者に開放を願う。
「私は彼らの悩みなんて、知らない、友達も恋人も親もすべて知らないのに」
微笑みだけでなく、歪んだ、だが壊れそうな悲痛な情けない女の顔。
「お願いです、一生、誰かのために祈るなんて、・・・・地獄からお救いください」
「では、貴方の本当の言葉を」
「死んでしまえ、このくそったれ共ッ呪われろ、永遠に」
―歪んだ笑み・・・ああおぞましい。
けれど今は。誰もが恐ろしい面を持つ。そもそも彼も自分も、彼女も知っているのは一側面。知らない一面が大勢会って、別の自分がいる。
「・・・」
落ちていく、血のような醜悪な太陽。差し込むか細い陽光。
醜悪で最低で、悪夢な。
あれも彼の側面だろう。ひりついた笑顔の殺人鬼。それでもその醜さを狂気を、こっちが泣きだしたくなるような彼の方が、よほど、熱を帯びているように思えた。あの姿、あの性格、恐怖し嫌悪するのが正常。
だが、綺麗だった。崇高にさえ感じた。伝え方なんて知らない。映画のような狂った殺人鬼ではない。誰が貴方を歪めたの、貴方はどうして泣きそうに狂ったように笑うの。
暖め方も正しい方法も知らない。
「お前に何がわかる、狂った卵ごときがっ」
「あんたこそ、何がわかるんだよ、聖女様」
ヴィッターはなぜか悲しそうに微笑んだ。
弓を引き、放つ。彼女は狩りの名手、幼少時、その村で育ち、ライバルだった。パンドラとのハーフ。アリスリーゼは幼馴染、姉妹、兄弟、鎧にオレンジの衣に身を包み、ライトブラウンのあかげかかったサイドテールとウェーブロングヘアの少女、ユーリひゅーまんの少女に女性らしさを期待したことはない。パンドラハンターを騎士の仕事の時以外は自由気まま、わがままに過ごす、緑と赤紫の左右違うオッドアイ。
サンダルに似た紐つきのブーツをはき。
「捕えた」
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