この「ゲゲゲの女房」は、昨年、半年間にわたってNHKの朝の連続ドラマで放送されたので、ご存じの方も多いと思う。
映画版とドラマは、ほぼ同時期に撮影されたらしいが、当然のことながらスタッフと出演者は全く異なる。役柄を違えて出演している俳優さんは、2,3人いた。
ドラマの方は、結婚の前から詳しく描かれ、人気漫画家として成功するまでのサクセスストーリーだ。
それに対して映画の方は、いきなりの結婚、そして戸惑い、極貧生活と続き、やっと最後の辺りで希望の光が差すという話だ。
映画の途中で画面全体が漫画になったり、妖怪がさり気なく所々に顔を出したりする。テレビと違うところは、登場する妖怪が実写だということだ。
テレビの「ゲゲゲの女房」では、生活費が全くない理由が述べられなかったと思う。戦争に行ったなら、軍人恩給があるはずではないかと、ずっと疑問に思っていた。
映画では、水木しげるの恩給は両親の方に行くようになっていた。したがって、水木本人には一銭も渡っていなかったのだ。
テレビ版に比べると、登場人物が極端に少ないと思った。映画では、二人の生活だけに光を当てるために、そうしたのだろう。
水木しげる役だが、顔のことを言ってはいけないけれど、半年間ほぼ毎日見なければならないテレビ版は、美男系の向井理で、2時間だけの映画版は、個性派の宮藤官九郎というのも分かる気がする。
この映画の中の吹石一恵は、兎に角笑わないのだ。極貧で笑えるようなシーンが全くないのだ。
原作者の武良布枝さんは、この映画を観て泣いたそうだが、それ程までに極貧生活がリアルに描かれている。
テレビ版と映画版のどちらが優れているとも言えない。映画の方は、画面全体がセピア色だ。モノクロと見紛うようだが、よく見ると色が付いているといった感じである。
兎に角、暗い映画だ。この作品は絶対にお薦め! とは言い難いが、テレビ版の明るい描き方に疑問を持っている方には、良い映画かも知れない。