・ロック・アラウンド・ザ・クロック


    ・ロック・アラウンド・ザ・クロック


       ロックは、今や日本では有名なジャンルだ。80年代においてはBOOWY、

      ZIGGY、B-T、etc90年代に入り、X、DIE IN CRYS、T-BOLAN、ラルクアンシエ

      ル、LUNA SEA、etcといった数々のロックバンドと呼ばれる人々の活躍が

      あった。もちろん、バンドだけでなくソロアーティストの活躍もあった。今では

      インディーズ業界も整備され、その数は計り知れない。しかし、僕は彼らの音楽

      がロックかと聞かれたら迷わずノーと答える。それは、日本においては本当の

      意味でロックを奏でているという人はほとんどいない、と言っていることになる

      が実際そうである。

       音楽というものは、その音楽が生まれた国の文化や歴史、社会的環境、人種や

      民族といったものを無視して奏でることは絶対に出来ない。ロックもそれが生ま

      れた背景には人種差別や反権力といったものがあった。それは19世紀、アメリカ

      でのことだ。当時のアメリカ南部では多くの黒人の人々が奴隷解放宣言後にもか

      かわらず、未だ自由を奪われ、ひどい生活を強いられていた。黒人たちはそのや

      り切れない思いや日常の苦しみ、悲しみといったことをギターの音色にのせ歌い

      始めたのだった。これがブルースの始まりである。後にこのブルースにはエレキ

      ギターやドラム、ベース、ピアノなどが加わるようになり、よりリズムが強調

      され、R&B(リズム&ブルース)となった。そして1950年代にこのR&Bとカントリー、

      さらにポップスが融合して出来たのがロックンロールなのだ。

      カントリーはもともとは白人農民の民俗音楽であったのだが、R&Bに興味を持っ

      た白人の若者たちがそれらを聞くようになり影響されるようになった。その頃登

      場したのがカントリー歌手のビル・ヘイリーである。1955年、ビル・ヘイリーは

      「ロック・アラウンド・ザ・クロック」でR&Bよりさらにビートを強調した楽曲を

      発表。これがロックンロールの起源となった。そして登場するのがエルビス・プ

      レスリーである。名前だけでも知っているという人もたくさんいるのではないで

      しょうか。彼は、当時10代の若者を中心に絶大な支持を受け、ヒット曲を数多く

      生み出したのだが、しかし、ロックンロールは青少年などの教育上の観点から好

      ましくないと猛烈な批判をあびることとなった。

       ロックにしろR&Bにしろ、他国人でその音楽が生まれた背景を理解し、その音楽

      の核の部分をぐしゃっと掴み取ることができるのはおそらく一握りのプロミュー

      ジシャンの中でもさらに一握りほどだろう。言うまでもなくアマの僕にはとうてい

      できないし、これはロックやR&Bだけでなく、ジャズやゴスペル、パンク、ハード

      コア、スカ、ヒップホップ、フォーク...全てのジャンルにおいて同じことだ。日本人

      でロックをやりたいといっても、これは気持ちだけではどうにもならない問題で、

      実際に現地に行き、多くの人々の話に耳をかたむけ、お互いに理解し合えるよう

      でなければならないだろう。このことは、内戦やテロ、独立といったアイルランド

      の社会的な要因を経験したことのない日本人にU2の音楽を理解することは無理

      だ、ということであるし、最近日本のヒットチャートをにぎわしているようなヒップ

      ホップはアメリカやイギリスではヒップホップとしては認識されないというこ

      とである。

       では、日本人である我々はどうすればよいのか。答えは至ってシンプルで、日

      本の文化に沿って生きればいいのだ。別に「日本は演歌だ!」というわけではな

      い。もともと島国である我々日本の文化というものは「輸入文化」なのである。これ

      は日本人がゼロから物を作るのがわりと苦手だ、ということからもわかってもら

      えるだろう。日本語にしろもともとは中国語だし、電子機械類にしろ元になる型

      だけを外国から輸入し、その中身はというとどんどん自分たちの好きなように

      イジくりまわし、「日本流」のコンパクトな製品へと仕上げる。食べ物で例えると、

      そこに「和風」という言葉を付け加えることで、しょうゆや味噌を好む日本人向け

      にアレンジしている「和風ハンバーグ」や「和風おろしドレッシング」といった感じ

      だろう。日本文化とはこのような独特な「日本流」を主流とする文化なのだと僕は思う。

       音楽にしろ要領は同じで、最初は自分たちの好きな外国人アーティストの音楽

      の型をモノマネし、そこから人種差別や民族紛争といったような本質的な部分が

      絡む核を抜き出し、自分たちの好きなものを好きなようにそこへ詰め込むのである。

      日本で活躍した、また今も活躍されている日本人ミュージシャンの方々のほとん

      どはこれである。誤解しないでもらいたいのだが、僕はそれらの日本文化や日本人

      ミュージシャンを否定する気は全くない。むしろ日本で活動するのであればそれ

      ら「日本流」が成功へのひとつのプロセスとなるだろう。つまり、変に外国を意識

      するのではなく、日本人なのだから日本人らしくあればいいのだ。

       こう考えると日本の音楽は実に不思議だ。日本でロックミュージシャンと呼ば

      れる人々の多くはロックを奏でているわけではないにもかかわらず、しかし、そ

      れらの音楽は確実に人の心を揺らすものであるし、また、それらの音楽が多くの

      人々に感動を与えてきたことは疑う余地がない。問題は、日本ではそれらの音楽

      に合うようなしっかりとしたジャンル分けがされていないことだ。そこで僕から

      提案である。これからはそういったプロセスを持つ日本流ロックを「和風ロック」

      や「和風おろしロック」と呼ぶことにしてはどうだろう。

そば

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