孤独の逃げ道。～remember memories～
里緒の死から、二年の月日が流れた今日。２０１７年、６月９日里緒の命日に、僕は里緒の墓参りに来ていた。
僕は墓前に立ち、手を合わせ、心の中で里緒に話しかける。
"里緒、久しぶり。僕だよ、陽介。そうだ、聞いてよ。いい知らせ。里緒を轢いた人、五日前に捕まったよ。ニュースでやってた。警察が居場所を突き止めて逮捕したらしいよ。良かったね。それにさ、もう一つ。僕のことなんだけど、友達もいっぱい出来たよ。それに、何回も告白されたけど・・・里緒に悪いし僕が好きなのは里緒だから何度も振ったよ。
里緒、助けてあげられなくてごめん。それと、ありがとう。じゃあね。また、一年後。"
僕は心の中で話しかけ終わると、一度、空を見上げた。空は雲ひとつない、快晴だった。
｢お～～い！そこにいるのは陽介君～？｣
後ろのほうから声がしたので、僕は振り返った。10mほど離れたところに、里緒のお母さんが立っていた。
｢はい｣
｢ああ、良かった。そうだ。陽介君、もう彼女は出来た？｣
｢いえ・・・。僕には里緒がいるので・・・」
｢そう。よかった｣
｢よかった・・・？｣
｢そう。里緒にね、『もしも私が死んで、二年後に陽介君に彼女がいなかったらこれを渡して』って言われたのよ｣
里緒のお母さんは右手にさげていた鞄の中から一枚の封筒を取り出した。
｢封筒？｣
｢そう。里緒からの手紙よ。絶対に見ないでって言われたから中身は何か知らないけど｣
｢そうですか・・・｣
｢じゃあ私は帰るわね。さようなら｣
｢はい。さようなら｣
挨拶を済ますと里緒のお母さんは帰っていった。
僕は近くにあった木の幹によりかかった。
封筒の中には、二枚の手紙が入っていた。
"こんにちは。お久しぶりです。
陽介君、元気にしていますか？
陽介君がこの手紙を読んでいるときは多分もう私は死んでいると思います。私が死んだとき、陽介君は悲しんでくれましたか？
涙を流してくれましたか？
・・・何を聞いてるのかな、私。
でも、もし泣いてくれたなら、悲しんでくれたならうれしいな。
さてさてー、前置きはこれぐらいにして、本題に入ります。
この手紙ね、洋介君に彼女がいなかったら渡してって言ったの。
今、陽介君が読んでるって事は、彼女がいないってことになるね。
もし、彼女がいないのが、私と付き合ってて、別れてないから他の人とは付き合わないとか、他の理由もあるかもしれないけど、もし私のために彼女をつくっていなかったときのために書きました。
もし私のせいで洋介君に彼女がいないなら、今すぐにでも彼女を作ってください。
少し嫉妬しちゃうけど、私は洋介君が幸せになって欲しいから。洋介君のために。・・・少しだけ、私のために。
洋介君と出会えて、本当に良かったよ。いっぱいお礼言わなきゃいけないね。
洋介君と初めてあった日、傘貸してくれたよね。僕の家は近いからって。でも、住んでいるところ、私と同じ場所だったよね。傘貸してくれて、ありがとう。
洋介君と出会った次の日、一緒に帰ってくれたよね。ありがとう。
その次の日も、次の日の次の日も。それに、朝も一緒に登校してくれたよね。楽しかったよ。ありがとう。
洋介君と初めてデートした日、私が突然朝デートしようって言ったのに来てくれてありがとう。わがままにいっぱい付き合わせちゃったね。ごめんね、それと、ありがとう。
あはは、こんなこと書いてたら涙が出てきちゃった。
まだまだいっぱいお礼言わなきゃいけないことあるけど、もう書くスペースがないや。
最後に一言。
洋介君、今までありがとう。私なんかと付き合ってくれて、ありがとう。私が死んだとき、悲しませちゃってごめんなさい。短い間だったけど、楽しかったよ。私の、人生最大の思い出。
今まで有り難う。さようなら。"
読み終わったとき、僕は泣いていた。
｢里緒･･･里緒･･･りおぉ･･･｣
僕は何度も何度も里緒の名前を呼び続けた。
僕は泣き続けた。日が落ちるまで、泣き続けた。
失った光が
里緒との思い出によって
いつしか戻り始めていた─。
里緒、ありがとう。ずっとずっと、忘れないから。
だから君も、忘れないでね。これが君との、最後の約束だよ─。
fin.
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