月浮かぶそら、輝くひかり。 -静かな夜空の小さなトモシビ。

act.2-first- 魔法学園




パチパチパチ……


会場内……体育館内に響き渡る、自らの両の手を打ち合う音。


その音と共に、"入学式"は幕を下ろした。



ザワザワ……ザワザワ……

人間が60人程度入ることの出来る正方形の……教室。
今現在、この教室にいるものは──40人。
どうやらこれが此処の生徒全てのようだ。
それぞれがそれぞれの思いを秘め、不安と期待を胸に抱きながら、話に華を咲かせる。

ガラガラ……

「おーぅ。席につけー」

銀髪の、整った顔立ちの20代後半程度の、15歳の生徒たちで溢れる個室にはあまり似つかわしくない者が扉を開け、入室する。

騒がしい教室は、たった一人の、よく響く声により静けさを取り戻す。

ガタッガタガタッ

木造の、人が一人腰を下ろすことの出来る椅子と幾枚もの木板の貼り付けられた床の擦れる音。

先ほどまで様々な位置にいた者達は、各々の決められた位置へと腰掛ける。


「あー、なんつーか。とりあえず入学おめでとう。俺は君たち1-Cの担任をすることになった、レイン=ルイスだ。好きなように呼んでくれ。
あー、因みに。気付いていないとは思うが後ろにいるのは副担任のアリア=レイフェルさんだ」

ルイスの言葉に耳を傾けていた40人の生徒達は、一秒の狂いもなく同時にルイスとは反対側に顔を向ける。ただ、一人を除いて。
青い頭髪の、誰が見ても第一印象はときかれると、皆一様に『美人』と答えるような、大人の顔立ち。しかし、若さが残る、こちらも20代後半程度だろう。

一同は、その一人を除き、皆同様に同じ疑問を心の中で呟いた。



 いつはいったんだろう、この人。


多数、驚きを顔に表すものもあったが、またすぐにルイスへと顔を向ける。

「まぁとりあえず、1年間俺とレイフェル先生で担当することになる。宜しく頼む」

「宜しくお願いします」

透き通るような声を聴きとり、また一同はレイフェルへと顔を向ける。
小さく頭を下げ、皆に微笑みかける。
その微笑に顔を薄く赤らめる生徒も多数いただろう。

そして皆、声を揃えて言う。

『宜しくお願いします!』


──ただ、一人を除いて。


「……つまらない」


その呟きは、一同の声にかき消され、消えて行く。

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