November
出るのはどうでも良い言葉ばかり。
本当に音にしたい想いは、
今も喉を震わせるだけ。
―シロツメ草。―
真っ白でありたい。
キミの隣で。
優しくありたい。
キミに触れて。
揺られていたい。
キミを感じて。
柔らかな呼吸がしたい。
キミの温度で。
逢いたくて。
逢いたくて。
アナタに逢いたくて。
ここまで、駆けてきたの。
自分の足跡を顧みることもなく。
自分の傷を顧みることもなく。
ただ、アナタへと。
駆けてきたの。
何もないの。
もう、何もないのよ。
この手を塞ぐ煩いなど。
この背を覆う重荷など。
この心を攻める言葉など。
全てを捨てて、この足だけで。
逢いたくて。
逢いたくて。
アナタに逢いたくて。
ただひたすらに、駆けてきたの。
ようやく、
休めるかしら。
ようやく、
繋がれるかしら。
ようやく、
アナタに逢えるかしら。
棘を、出していたのです。
傷つくのが怖くて。
触れてきた温もりを
先に傷つけたのです。
けれど。
アナタが触れて
不思議と、痛かったのです。
私は傷ついていないというのに、
アナタの指先から染みる温もりが
ひどく、心を震わせたのです。
棘が、柔らかくなって
その瞬間、
ぽとり。
何かが落ちたのです。
本当は、もう。
気づているんだろう？
ここでは呼吸が、
上手くできないということに。
柔らかい腕の中で目覚める夢
どんな悪魔が来ても
この温もりがあれば怖くなんてないの
絡めた指の隙間から見る光は
どこまでも優しくて
眩しくてきらきら
私までキレイになれた
そんな思い違いをしてしまいそう
からっぽにして
全てを洗い流して欲しい
真っ白にして
全てを染め上げて欲しい
無理なことだと分かっているの
どれほど白を注いでも
色はくすむばかり
真っ白になどなりえない
それでもどうか
アナタが目覚めるその一瞬
せめてその瞬間だけは
キレイな私でいさせて欲しい
すべて夢だったの、なんて
哀しい言葉を吐かせて欲しい
たとえ奪われていく温もりに気づいても
すべて哀しい夢だったの、なんて
空しい言葉を吐かせて欲しい
本当は、分かってる。
もう、手の中はからっぽ。
本当は、気づいてる。
もう、鼓動の音はひとつ。
本当は、知っている。
もう、ここはヒトリの温度。
でも。
どうにもならないこの想い。
その、投げ捨て方。
それだけが。
いつまでも、分からないまま。
温もりも。
安息も。
安らぎも。
慈しみも。
私は何も要りません。
だからどうか。
それらの全てを、
今、何処かで独りぼっちで震えている
今、何処かで独りぼっちで泣いている
今、何処かで独りぼっちで体を丸めている
小さな
大丈夫だと言ったそばから、
ほら。
もうくちびる震えてる。
平気と笑ったそばから、
ほら。
もう視界滲んでる。
全然、大丈夫なんかじゃないの。
でも。
笑うしかないでしょ？
全然、平気なんかじゃないの。
でも。
前を向くしかないでしょ？
だって。
誰も、待ってくれない。
だって。
誰も、泣いてくれない。
誰も。誰も。誰も。
会いたくて、仕方がないのです。
触れたくて、仕方がないのです。
最後の言葉が、どうしても思い出せないのです。
最後の温度が、どうしても思い出せないのです。
あなたが触れて。
私が振れた。
―あなたなんてまだ幸せ。
世界にはもっともっと不幸な人がいる、と。
アナタはいつも言うけれど。
解ってる。
解ってるのよ。
ちゃんと、解ってる。
だけど。
だけどね。
感じられない私の幸せって。
いったい、なんなの？
たくさんの涙を、受け止めてくれたあなたに。
たくさんの温もりを、伝えてくれたあなたに。
たくさんの痛みを、受け入れてくれたあなたに。
たくさんの優しさを、教えてくれたあなたに。
たくさんの醜さを、抱きしめてくれたあなたに。
たくさんの幸せを、届けてくれたあなたに。
カラッポだった心を、満たしてくれた大切なあなたに。
今、この柔らかな気持ちを渡したい。
空へ昇ったのかしら。
星になったのかしら。
海に溶けたのかしら。
土に還ったのかしら。
ようやく、休めたかしら。
アナタの優しさに、震える。
アナタの温もりに、凍える。
こんなにぴったりくっついてても。
やっぱり、一つにはなれないんだね。
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