アニメの館

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第六話


「何故?」
二人は黙っていた。
新太郎は、顔を真っ青にして思いつめた顔で黙っていた。
キョウコは、まったくの無表情の顔のまま黙っていた。
先ほどの会話で、新太郎はなにがなんだかわからなく
なって、しまった。
いつも通りに来るはずだった今日という日は、一人の少女に
粉々に、壊されてしまった。
まるで漫画の世界に来てしまった。
そんな状況であった。
落ち着く事など、まずできない
自分が何をすればいいのかもわからない。
そんな事を考えながら、歩いていたら
いつのまにか、学校についていた。
すると、キョウコがいきなり持っていたカバンから、粉薬を取り出した。
とくに深い事も考えずに(考えないというより考えられない)
キョウコがその薬を飲んだ瞬間
大きくなった。
「!?」
それはまるで、ド○えもんが、なにかにビッグライトを当てて
大きくなったような
そんな感じであった。
口をパクパクさせて、驚いている新太郎に
「キサマと同じぐらいの身長にした、問題ないな」
そう言って、キョウコはスタスタと、一人で学校に向かっていった。
新太郎は、キョウコが一人で歩いていったのが、気にならないのか・・・
というか、驚いて体が動かずにいた。
自分の、目の前で起きた非現実的なことが、信じられない。
それと同時に
キョウコの美しさにも、驚いてしまった。
さっきもキレイだったが。
今はそれの数倍を行く。
腰まで伸びた空色の髪、新太郎と同じぐらいの身長なのに、それ以上の身長の高さを感じさせる、スラリと伸びた体、先ほどの幼さなど微塵も感じさせない、キレイな顔
欠点のつけようが無い、まさに完璧だった。
その時
「おっす!」
「のわぁあぁあぁあぁあっぁ!?」
突然後ろから、肩をポンッと叩かれた。
ボーっとしていて、周りの音さえも聞こえなかった新太郎は
大げさと言うぐらいに驚いて、前へ倒れてしまった。
「だ・・大丈夫か?」
肩をたたいた者を見ると、バンダナがトレードマークの
只野だった。
「だ・・大丈夫だぜ~・・・」
そう言って、重い足をゆっくりと立たせて
体についた砂やらを、パンパンっと叩いて落とした。
「お前がボーっとしてるなんて・・なんかあったか?」
只野のほんの、なんでもない言葉が
新太郎に突き刺さる
「な・・なんでもないぜ・・」
「?そうか、ならいいが・・」



教室は、まだ三人しかいない
新太郎と只野と時田だ。
まだこの時間にはあまり、生徒は来ない
三人は、昨日のテレビの事などを話して、時間をつぶしていた。
「昨日のクイズ!トリオネア!!は、面白かったよなー」
時田が、そう言うと
只野が
「オレ、三問目からわからなかったな・・・」
時田が自慢げに言う
「オレはわかったぜー」
「ほほぉ、それはなぜ?」
「姉貴が言ったから」
「・・・・シスコン・・」
「うっさい!!」
二人が、にぎやかに話しているのに対して、新太郎は
ずぅぅぅぅっと、ボーっとしていた。
それを心配したのか、時田が
「おーい、大丈夫かー?生きてますかー?」
っと新太郎の顔の前で手をヒラヒラさせながら、そういった。
「ふぇ?あっ?あぁ、だ・・だいじょうブイ!」
間抜けな声を出しながら、返事をして
右手でブイサインを作った。
「ホント、朝から変だな・・?」
今度は、只野が言う
「大丈夫だってばよ!オレは無敵の新太郎様だぜ!?」
「あーぁ、こんだけ元気だったら、寝不足かなんかか?」
時田が、軽口を言う。
新太郎も、そうなんだよっと、元気いっぱいに言う。
しかし
只野にはわかっていた、それが無理に作った笑顔だと言う事が





クラスの生徒達が全員集まって、SHRが始まろうとしていた。
生徒達は先生が来るまで、喋っていたり、走って遊んでいたりしていた。
そんな中、新太郎は自分の席で、思いつめた顔をしていた。
只野は、そんな新太郎を不安げに見ていた。
すると
「ほらー、席に座ってー」
先生が、教室に入ってきた
生徒達は慌てて、自分の席へ戻る。
「今日はみんなに、うれしい発表があります」
それを聞いて、教室は急にざわめきだす
前後左右で、なんだなんだと話したり
どうせつまらない事だろうと、興味を持たない者達がいたり
「静かにー」
先生の一言で、生徒達は静まった。
「それじゃあ、入ってきてください」
先生がそう言うと、生徒達は教室の扉を見る
そこからは、空色の髪で、スラリと伸びた身長に大きな胸に、キレイな顔の美少女が、無表情で入ってきた。
男子生徒は、喜びの雄たけびを上げて。
女子生徒は、あまりの美しさに、うっとり
その中でただ一人、顔面蒼白にして、体が震える少年が一人。
「出雲 キョウコさんだ、みんな仲良くしてあげるんだよ」
新太郎は、青くなった顔を、治すことも。
体の震えを止めることもできなかった。









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