北海道建設新聞コラム《透視図》2004/12/4



▼雪が降り続くようになった夜長にこんな本を手にした。
 荒木孝司著「あらよっと」(エヴァナム)を読んだ。
 著者は興部町沙留中や松前高、紋別北高で教えた元体育教師。
 三十歳のとき(一九九四年)に事故で右足ひざ下を切断するが、
 奮闘する義足の教師として知られた。
 例えば、百メートルを十二秒五で走る奮闘に
 「疾風よ再び―義足の先生の夢力走」(テレビ朝日、テレメンタリー)など
 数々のドキュメンタリーが撮られた。

▼九九年に教師を辞めて体験学習のファシリテーターの道に進み、
 今は米国にいる。教育のユニバーサルデザイン構築を―と、留学中だ。
 相変わらず奮闘を続ける。本の表題「あらよっと」は、
 ハンディなどまたいでいく著者を端的に表している。
 同書はフォト・エッセー集だが、内容も著者らしい。
 「日常にあふれている『気づき』を『学び』へ」
 「今ここに『生きている』を、誰もが地球上で共有していることを感じてほしい」。
 日ごろのその思いを凝縮した言葉があふれる。

▼写真とで一作品なのだが、
 「むじゃきなやわらかい」
 ―「くものかたたち/むじゃきに/のびのび/
  あおい/ふかいが/うけとめてくれるから」。
 「雪とあしあと」
 ―「いつもは気づかないあしあとを雪の方々が気づかせてくれた/
  ふり返ることも忘れるんじゃないよと」。
 「そらをあおいで」
 ―「いきている」。
 「ようこそ」
 ―「生きるの/座席は/自由席」…。
 飾らない素の思い。作品どれもにおこがましさはみじんもない。
 子供たち、元子供、誰もが読んでみていい本だ。


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