常緑樹11 庶民の武器「情報」…


(平成13年12月号 2001/11/20)

先日開かれた二つのイベントの話、あきれたり、面白がったり、そしてしまいには考え込んでしまいました。

一つは全国的にも有名な団体が主催し、実行委員会に七つ、後援にも内閣府、厚生労働省、北海道、札幌市をはじめ各社協やマスコミなど四十二、合せてなんと五十の団体・法人が名を連ね、三日間にわたり大々的に開催された、老後を豊かに暮らすための介護保障制度について考えるフォーラム。
初日午前中の基調講演、福祉の分野では第一人者である主催者代表と、厚生労働省の高齢福祉担当の方から大変有意義な話を聴くことができました。
ところが客席を見てびっくり仰天。
六百五十人定員のところ、どう見渡しても二百人に満たず、もったいないことです。

もう一つのイベントは民間の高齢者に関係した団体が開いたもの。
主催、後援を合わせ九つの団体・法人とやや小ぶり。
内容は第一部がいろいろな立場から、高齢者の生きがいを探り、老後の暮らしも捨てたもんじゃない、とするトークショー。
第二部は高齢者自身による男声合唱、日本舞踊、フラダンスなどの楽しいお祭り。
こちらは客席三百六十が満席。
時間配分などに少し不手際があったものの、大いに盛り上がりました。

この二つが何をあらわしているのかを勝手に想像してみました。

前者に、開催することに意義がある、情報は高みから与えてやるものだ、という姿勢、慣れや驕り、組織の大きさゆえの硬直化がなかったでしょうか。
その後開かれた具体的な内容の分科会やセミナーが盛況だったようですが、告知方法はもとより、情報の出し手側の姿勢が問われるところです。

後者は、初めての試みであり、主催者自身の手で、自分たちが何を面白がれるのかを考え、手探りで企画し準備したものです。
案内も人づて、口コミです。
中でもやさしいのは、申し込みを受け付けた段階で座席指定し、事前に知らせたことです。
これは当日良い席につこうと慌てて駆け出し、転んで怪我などしないように、ゆっくり会場にきていいよ、ということだそうです。
こうした気配りができるのも主催者自身が高齢である強み、その立場で考えているからだと思います。

もちろん会の主旨や対象者が異なり、単純に比較することはできませんが、どちらも今聞いておきたい内容です。
なぜなら私たち普通の人間が持つことのできる最も大きな武器は「情報」しかないのですから。
受け手側が耳をそばだて、目を見開き、手で触れて情報収集するのはもちろんのことですが、出し手側の姿勢も大切。

折角ですから面白がって大事な情報を得たいものです。


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