華神学園

華神学園

吸血鬼?



「遅いよぉ~…空ちゃん、眸ちゃん、怜奈ちゃん」

 鷹薙先生はワザとらしく感情を込めて3人に向かって言うと。

「お、遅いって」

「まだホームルームには時間があるはずじゃ…」

 眸、怜奈が交互に言い。3人が同時に教室の時計を見た。時間は8時59分を指していた。

『まだ8時59分じゃないですか』

 怜奈、眸、空が同時に言うと。鷹薙先生は表情を変えずサラッと言葉を返した。

「うん、そうだよ…まだホームルームの時間じゃないよ」

 怜奈、眸、空は訝しげな表情で鷹薙先生を見た。

「それならなんで『遅い』なんて…」

 怜奈が鷹薙先生に文句を言っているとちょうどホームルームの開始を告げるチャイムが鳴り。鷹薙先生は名簿を軽く教壇に落とした。

「それじゃあ、朝のホームルームを始めるね。空ちゃん、眸ちゃん、怜奈ちゃんも自分の席について」

「ちょ、ちょっと鷹薙先生が私達を」

「眸…」

「あきらめよう」

 怜奈と空が眸を宥め、3人は自分達の席に着いた。3人が席に着くのを確認すると鷹薙先生は話し始めた。

「みんなも知っていると思うけど、学園の生徒が何者かに襲われ病院に運び込まれている事件の事なんだけどね」

「襲われ!?鷹薙先生、襲われているってどういうことですか?貧血で倒れたのではないのですか?テレビでは貧血で倒れたと」

 鷹薙先生の言葉に緋斗が声を荒げ割って入った。

「下手に騒がれては困るから一応情報操作したんだけどね…でもあまり意味を成さなかったけど」

 どこか遠くを見つめながら鷹薙先生は話した。

「襲われた生徒達はみんな貧血状態で発見されて、今も昏睡状態で眠り続けているんだ」

「先生…それじゃあ、まるで吸血鬼そのものじゃないですか」

「僕に言われてもね」

 男子生徒が鷹薙先生の言葉に声を上げると。鷹薙先生は苦笑しながら言葉を返した。

「だから帰る時は、出来るだけ1人では帰らないように、複数で帰るようにしてね。襲われた学生はみんな1人の時に狙われているから」

「先生、そう言うのは帰りのホームルームで言えばいいのではないのですか?」

 他の男子生徒が鷹薙先生に質問すると。鷹薙先生は微笑みながら言葉を返した。

「今日は少し用があって、帰りのホームルームには出れないから。先に言っておこうと思ってね。帰りのホームルームには代わりの先生が来るんだけどね。他に聞いておきたい事はあるかな?」

 教室は静まり。事件について質問をする声が上がらなかった。

「ないのなら朝のホームルームはこれで終わりにするね」

 鷹薙先生はホームルームが終わると、教室を後にした。



 今日の授業も終わり。ホームルームの始まりを告げるチャイムが鳴ると同時に勢いよく教室のドアを開けて、白衣を着てブラウン色の髪を後ろで束ねた女性、芹小夜子が教室に入ってきた。

「はいはい座ってね!ホームルームを始めるよ」

 小夜子は手を叩きながら声を上げた。

『小夜子先輩』

 怜奈、眸、空が同時に叫んだ。小夜子は3人の元に行き。持っていた名簿で軽く叩いた。

「先輩じゃなくて先生って言っているでしょ!何回言ったらわかるのかな~。怜奈、眸、空」

 緋斗は小夜子をなだめた。怜奈、眸、空は苦笑しながら平謝りした。

「どうして小夜子さんが?」

「鷹薙先生に頼まれてね」

 小夜子は教壇行き。帰りのホームルームを始めた。小夜子は明日の事についての話をしてから、最後に。

「不審者がうろつくているので1人では帰らず複数人数で帰るように。あと、鴇、弥一、玲は挨拶後に前に来るように。これでホームルームを終わります」

「起立、礼」

『さようなら』

 挨拶後、怜奈、眸、空は小夜子の待つ教壇の所に向かった。

「なんですか小夜子先生」

「もしかしてさっきの事を」

 怜奈と眸が恐る恐る小夜子に聞くと。

「違うわよ…。今日の練習の内容についての話よ」


第8話に続きます。

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