アウトドア~な温泉日記

狐の鍋(新かちかち山)



熊に襲われ巣穴に引きずり込まれた人間が熊を殺して逃げ帰っても性悪とは言いません、

生物が生きるために行った行為を善悪で測ることはできません、

そこには弱肉強食の原理があるだけなのですから・・・


  第2章 狐の鍋

玉藻を殺てしまったミミはすぐに逃げようと思いました、

しかしそこに銀狐が帰ってきました。

妖狐たちは普段は霊力で人間の姿に化けていましたが、死んで霊力のなくなった玉藻は元の狐の姿に戻っていました、

ミミは死んだ玉藻を台所の隅に隠し、玉藻の着ていた衣服をかぶりました。

変幻自在どんな姿にでも化けられる妖狐ですから、玉藻の衣服を着たミミを銀狐は玉藻が化けたのだと思い込んでいました。

「なんじゃ玉藻、その姿が気に入ったのかえ?、ではその娘の鍋を食ってしまおうぞ」

いつ見つかって殺される分からないミミは生きた心地がしません。

「いいえまだ肉が良く煮えておりませぬ」

「そうかそうか、では庭木に水でもやってくるとしよう」

庭先にいられたのでは逃げることもできず、他に肉などどこにもない、

困り果てたミミは仕方なく死んだ玉藻をバラして鍋に入れました。

やがて戻ってきた銀狐は満足そうに鍋をほおばり始めました、

 「どうした玉藻、そなたも食べぬのかえ?」

見つかったら確実に殺される、ミミは恐怖でとても鍋など喉を通りません、

そこで玉藻が言っていたことを思い出し、こう言います。

「わらわは小娘の肉など硬くて臭いから好きでない、庭の香草を臭み消しに採ってまいります」

そうして香草を採りに行くフリをしてそのまま逃げ帰ってしまいました。


やがて真実に気付いた銀狐は5000年連れ添った妻が死んでしまったことに嘆き悲しみ、怒りに震えました・・・


続く・・・

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: