森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2017.10.09
XML
水谷啓二先生のお話です。
現代人の大多数は、 「ただ働く」ということができなくなっている。
毎日働くことが、 「給料を得るため」 「金儲けのため」 「人から褒められるため」 「自分を立派に見せるため」 「名声や地位を得るため」 「神経症を治すため」 「孤独感を紛らわせるため」といったような、 「ある目的を達成するための手段」に成り下がってしまっている。
本来、働くと言う事は、人間にとっては、単なる「目的のための手段」ではない。
働きたく、働かずにはおれないのは、人間の本来性であり、 「生の欲望」なのである。
その証拠には、働くことのできないように、長く一室に閉じ込めて置かれるほど、人間にとって苦痛な事はない。
私たち人間にとっては、 「やりたいからやる」 「働きたいから働く」のが自然であり、そこに生命力発揮の喜びがあるのである。
私は時々若い人に、 「あなたはなぜ、ご飯を食べるのですか」と質問することがある。
そうすると、たいてい「生きるためです」とか、 「健康保持の為です」とか答える。

事実は、 「食べたいから食べる」のである。しかも、そういう言葉も忘れて食べているのである。
人間には、 「食べたい」 「働きたい」 「眠りたい」という基本的な欲望に始まって、 「良い配偶者を得たい」 「子供を心身共に健康に育てたい」 「親や兄弟を喜ばせたい」 「いろんなことを知りたい」 「自分の仕事を立派にやり遂げたい」 「苦しんでいる人々を救いたい」と言うような、人間らしいいろいろな欲望が本来あるのである。
それらをひっくるめて、森田先生は、 「生の欲望」と名付けられたのである。
(慎重で大胆な生き方 水谷啓二 白揚社 166ページより引用)

これに対して私の感想を述べてみたい。
水谷先生は、観念的に考えた目的のために働くということは問題があるといわれている。
理屈ではなくただ働きたいという欲望に基づいて行動することが大切だといわれている。
「生活のために仕事をする」というのは、邪道であるということになる。
森田理論を厳密に解釈すれば、「生の欲望」に基づかない行動は弊害があるということなのだろう。

しかし私はあえて最初の行動のとっかかりはそれでもよいと思っている。
理屈があってもよいと思う。イヤイヤ仕方なしの行動であっても全く問題はない。

しかし、水谷先生が言われるように、その行動が、いつまでも目的達成の域から離れられないと、むしろ弊害のほうが大きくなってくる。例えば、神経症を治すという目的を持ち、その達成のために日常茶飯事に取り組んでいると、神経症は治らない。それどころか、ますます悪化してくる。
それは、行動するたびに神経症がどう変化しているか、絶えず比較検討をしているからである。
それはあたかも野菜の苗を植えて、しばらくたって根付いたかどうか、引っこ抜いて調べているようなものだ。これではいつまでたっても野菜は根を張ることができない。終いには枯れてしまう。
神経症を治すために働くというか、動き回ることはハツカネズミが糸車を回し続けているようなものだ。
傍から見ているとせわしなく見えるし、神経症が治らないので本人も最後には根を上げてしまう。


やっていることに意識が向いていないと、気づきや発見、アイデアが湧いてくるはずもなく、いつまでも意欲ややる気が高まってくることはない。それはただお使い根性の仕事になってしまう。
つまり行動によって感情が生まれ、高まり、どんどん流れていくということがないのが問題なのだ。
目の前の日常茶飯事に「ものそのものになりきる」ことで、症状のことは一時的に忘れていたという状態に持っていくことが大切になる。ここが森田理論のポイントである。

こういうからくりを学習して、最初はイヤイヤ仕方なしにでも手を出していく。
気分が苦しいながらも、我慢して行動してある程度時間が経つと、行動には弾みがついてくるはずだ。
月曜日の朝、足を引きずるようにしてでも会社に行って、仕方なしにボツボツ仕事をしていると、昼過ぎにはいつの間にか仕事モードに転換していたという経験をお持ちの方は多いと思う。
そうなれば、水谷先生の言われるように、症状のことはすっかり忘れていたという瞬間が訪れるはずだ。
そんな体験が数多く増えてくることによって、次第に神経症は完治していくのだ。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2017.10.09 18:06:11
コメント(0) | コメントを書く
[「かくあるべし」の発生] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Favorite Blog

巨人軍4年ぶりの優… New! 楽天星no1さん

彼岸のお墓参りで体… New! メルトスライム25さん

石上神宮 禁足地へ へこきもとさん

神経症を克服します♪ ROSE33333さん
「私」がいる幸せ えみこた2さん

Profile

森田生涯

森田生涯

Comments

森田生涯 @ Re[3]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ 今の生活は日中のほとんどが…
stst@ Re[2]:強情と盲従の弊害について(02/27) 森田生涯様、返信アドバイスをしていただ…
森田生涯 @ Re[1]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ コメントありがとうございま…
stst@ Re:強情と盲従の弊害について(02/27) 森田生涯様、こんばんは。 過去に何度かコ…
軸受国富論@ Re:森田の正道を歩むとはどういうことか(06/05) かの有名なドクターDXの理論ですね。ほか…

Calendar


© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: