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SHEEPS QUIET~羊の章~ 4

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方法も分かったし,村長の許可もおりたけれど,そのまますぐ出発という訳にはいかなかった。リウスロ達が村長の家から出ると,外で様子をうかがっていた子供達にとりかこまれて質問攻めにあったし,子供達にトファスのことをきいて心配していたらしい親たちにまで行く道々で捕まって,トファスの容態やら何やらを説明しなければならなかった。
そんなこんなで家についた頃にはもう日が傾きはじめていたので,出発は明日ということになった。

 次の日の早朝,リウスロはトファスの入ったバスケットを抱えて家を出た。
今日のことを一応トファスに話したら,羊の状態で意味が分かったかどうかは別としてひどくぐずったからだ。
リウスロは気が進まなかったけれど,クリーフの言った,家に置いていったらいつ家畜にまぎれこんで食べられてしまうか分からないぞという言葉に,しかたなく連れて行くことに決めた。
 集合場所の村の北門には,まだ朝の五時だというのに黒山の人だかりができていた。
クリーフがみんなにしゃべりまくったに違いない,とリウスロは思った。
「お…来たな,リウスロ」
人だかりの真ん中で演説していたクリーフが,こっちに気付いて手をふった。
同時に,集まっていた人たちも一気にこっちを向いたので,リウスロは少し顔が熱くなった。
「クリーフ…何やってるの?」
「何って…みんなにあいさつしてるに決まってんだろ?
 帰ってこれるかどうか分かんねえんだからさ」
「………。」
あきれているリウスロに,クリーフはいたずらっぽく笑いかけた。
「心配してもしょーがねえだろ?
 今のうちやることやっとかねえと。万が一の時後悔したくねえしさ。
 ま,そんなことにはならねえから大丈夫だって」
「だといいけどさ…」
(メルダのことをみんなに話したの,絶対にクリーフだ…)
「もう日が昇りそうだし…そろそろ行くか,リウスロ」
「……うん」
リウスロとクリーフは小さなそりに乗り込んだ。
前には二頭の真っ黒な狼がつながれていて,二頭とも早く走り出したそうにこっちを見ている。リウスロは,クリーフってば狼なんか飼ってて羊は大丈夫なのかなぁと思って,そっと狼たちを観察してみた。すると,二頭は羊を食べるのはおろか肉食にさえ見えないほど穏やかな目をしているのに気付いた。
「じゃ,よろしく頼むぞハル,カイ」
リウスロがそっと伸ばそうとした手を追い越してクリーフが二頭の頭をなでた。リウスロは狼をなでる機会を失ってすこし不満だったけれど,そんな場合じゃないと思い直した。
スパン!クリーフが大きな音を立てて地面に鞭を振り下ろすと,ハルとカイはゆっくり走り出した。
後ろでは,たくさんの村人が見守っている。クリーフが,ぽつんと立っている自分の母親を名残惜しそうに目で追ったのを,リウスロはぽーっと見ていた。そうしながら,自分に見送ってくれる人がいないことが急にさびしくなって,きょろきょろしている羊トファスの右耳を引っ張ってみたりもした。トファスはびくっとして,余計にいそがしくくるくる周りを見回した。
しばらくして後ろを振り返ってみると,もう村ははるか遠くにあった。
昇ってきたばかりの太陽の光を浴びて,家々の屋根がまぶしいくらいに光っているのが見えた。



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