囚人  ‐花弁の化石‐制作中


                 第Ⅱ章
               ‐花弁の化石‐

 失明した目で仙人界のすばらしい風景を見てみようとしても無理だ。
 いくら目を開いても,見えるのは黒一色。
 それ以外に私の目は何も見せてくれない。
 ただ,歩くことにも全神経を集中させて一歩一歩,恐る恐る踏み出す。
 時々,下に落ちそうになる。
 勿論落ちれば命が助かることはない。
 それは承知している。
 しかし,四つん這いになって這って歩くわけにも行かない。
 だから,仙人界にいて,太上老君様の所から動くことはなかった。
 仙人や道士達の間で,珠狐のことが話題になることはなかった。
 無論,幾人かの仙人によって秘密にされている。
 何故,秘密にしてあるのか。
 それは分からない。

 元始天尊「珠狐。御前は,太上老君から仙人になることについて聞いたか?」
 珠狐「いえ。特に何も・・・」
 元始天尊「そうか・・・」
 御前の仙力のオーラには,正直吃驚しておる。
 まだ修行経験も何もないし,こんなにも幼い御前からは溢れんばかりの力が感じられる。それも,相当の力だ。
 例えてみれば・・・。
 う~む。
 少なくともわしや通天教主よりは上であろう。
 そして,御前の驚くほどの力があれば,わしらは簡単に倒せるのではないかと言うと,そうではない。確かに,力はあるが,御前には技術が足らん。相手を倒すための技がなければ,いくら強くとも勝つことはできない。
 元始天尊「その,「技術」と言うものを此処で鍛えてみないか?」
 珠狐「・ ・ ・ ・ ・」
 今,強くなってなんの意味があるのだろう。
 別に私は強くなんてなりたくない。強くなって,何か良いことでもあるのだろうか・・・。
 そう考えると,「仙人にならなくても良い」と考えられる。決して,無駄なことを省きたい訳じゃない。この先,本当にそれで良いのかが心配だった。
 仙人になれば,不老不死が手に入る。神業が自分にも出来るようになる。人間から尊まれるようになる・・・かもしれないが。
 私にはどうでも良かった。
 長生きしようが,強くなろうが,敬れようが,どうでも良いことだった。
 ただ生きていれば,それで良い。
 自然に老いていって,自然に死を迎え,そして時がたって,誰も御参りに来てくれない墓の下で永遠に眠るだけで良い。特別なことはいらない。
 譬え,一輪の花も添えてなかったとしても・・・。
 それで良い・・・。
 それで・・・。


 ―――――――― だ が ―――――――――

 私は仙人になることにした。
 私は,私が死んだであろう時代のあとの時代。そのあとの時代が見たい。そのあとの時代が知りたい。一体,どんな文明になるのか,どんな権力者が現れるのか,私は知りたかった。その,夢のために仙人になった。他にはこれと言った理由もなく・・・。
 珠狐「はい。私,頑張ります(^^)」
 私の師は,私を助けてくれた太上老君様。
 彼の修行と言うものは,全く先がよめない。いくら修行をしたとしても分からなかった。だが,修行の度に,何かが変わっていくのを感じた。
 しかし,この失明した目を,私は恨んだ。失明させた猟犬を恨んだ。私を捨てた家族を恨んだ。
 ・・・・・・・・・そう言えば,杞梟はどうしているだろう・・・。
 いや。どうしているだろうではない。あのあと,どうなっただろう。
 置き去りにしてしまった妹は,どうなってしまったのだろう・・・。

 杞梟

 ごめんなさい。


 太上老君「妹がどうなったのか知りたい?」
 珠狐「はい」
 それは,私からもちかけた話。

 制作中


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