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2006年08月04日
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"編集手帳"(8月4日付)

小説「坊っちゃん」の最終章に、
「その夜おれと山嵐はこの不浄な地を離れた」とある。
小説の舞台は「四国辺」とぼやかしてあるものの、作家も口が悪い

作品名を冠した列車があり、文学賞があり、菓子があり、
松山市はいま、“坊っちゃんの町”で知られている。
文芸誌「ホトトギス」に小説が発表されて満100年にあたる今年は多彩な催しが用意され、地元の意気込みは格別と聞く

悪口を書いて、こんなに大事にされて
「漱石先生、もって瞑(めい)すべし」

風光に似て、人の心も穏やかな土地ならではだろう

松山中学の英語科教師として赴任した1895年(明治28年)の4月から、
熊本県の旧制五高に転出する翌年の4月まで、
夏目漱石が松山に暮らしたのはわずか1年に過ぎない

思えば、
小泉八雲が松江市に住んだのも1年余り、
石川啄木が北海道釧路市に滞在したのは数か月であった。
人と土地とのえにしの深さは時間の長短では計れぬらしい

旅行かばんに文庫本を携えて、松山を訪ねる方もおられよう。
「親譲りの無鉄砲で小供(こども)の時から損ばかりしている」の書き出しから、
最後の一行

全編流れるような名文は心軽やかな夏の旅によく似合う。

(2006年8月4日 読売新聞)




「夢十夜」by (夏目漱石)

"第十夜"



庄太郎は町内一の好男子で、至極善良な正直者である。
只一つの道楽がある。
パナマの帽子を被(かぶ)って、夕方になると水菓子屋の店先へ腰をかけて、往来(おうらい)の女の顔を眺めている。
そうして頻(しきり)に感心している。
そのほかにはこれと云う程の特色もない。

あまり女が通らない時は、往来を見ないで水菓子を見ている。
水菓子には色々ある。
水蜜桃や、林檎(りんご)や、枇杷(びわ)や、バナナを綺麗に籠に盛って、すぐ見舞物(みやげもの)に持って行ける様に二列に並べてある。
庄太郎はこの籠を見ては綺麗だと云っている。
商売をするなら水菓子屋に限ると云っている。
そのくせ自分はパナマの帽子を被ってぶらぶら遊んでいる。

この色がいいと云って、夏蜜柑などを品評する事もある。
けれども、曾(かつ)て銭を出して水菓子を買った事がない。
只では無論食わない。
色ばかり賞めている。

ある夕方一人の女が、不意に店先に立った。
身分のある人と見えて立派な服装をしている。
その着物の色がひどく庄太郎の気に入った。
その上庄太郎は大変女の顔に感心してしまった。
そこで大事なパナマの帽子を脱(と)って丁寧に挨拶をしたら、女は籠詰の一番大きいのを指して、これを下さいと云うんで、庄太郎はすぐその籠を取って渡した。
すると女はそれを一寸提げて見て、大変重い事と云った。

庄太郎は元来閑人(ひまじん)の上に、頗(すこぶ)る気作(きさく)な男だから、
ではお宅まで持って参りましょうと云って、女といっしょに水菓子屋を出た。
それぎり帰って来なかった。

如何(いか)な庄太郎でも、余(あん)まり呑気(のんき)過ぎる。
只事じゃ無かろうと云って、親類や友達が騒ぎ出していると、
七日目の晩になって、ふらりと帰って来た。

そこで大勢寄ってたかって、庄さん何処へ行っていたんだいと聞くと、
庄太郎は電車へ乗って山へ行ったんだと答えた。

何でも余程長い電車に違いない。
庄太郎の云う所によると、電車を下りるとすぐと原へ出たそうである。
非常に広い原で、何処を見廻しても青い
草ばかり生えていた。
女と一緒に草の上を歩いて行くと、急に絶壁(きりぎし)の天辺(てっぺん)へ出た。
その時女が庄太郎に、此処(ここ)から飛び込んで御覧なさいと云った。

底を覗(のぞ)いて見ると、切岸(きりぎし)は見えるが底は見えない。
庄太郎は又パナマの帽子を脱いで再三辞退した。
すると女が、もし思い切って飛び込まなければ、 豚に舐(な)められますが好う御座んすかと聞いた。庄太郎は豚と雲右衛門が大嫌(だいきらい)だった。
けれども命には易(か)えられないと思って、やっぱり飛び込むのを見合せていた。
ところへ豚が一匹鼻を鳴らして来た。

庄太郎は仕方なしに、持っていた細い檳榔樹(びんろうじゅ)の洋杖(ステッキ)で、
豚の鼻頭(はなづら)を打った。
豚はぐうと云いながら、ころりと引っ繰り返って、絶壁(きりぎし)の下へ落ちて行った。
庄太郎はほっと一と息接(つ)いでいると
又一匹の豚が大きな鼻を庄太郎に擦(す)り附けに来た。
庄太郎は已(やむ)をえず又洋杖(ステッキ)を振り上げた。
豚はぐうと鳴いて又真逆様(まっさかさま)に穴の底へ転げ込んだ。
すると又一匹あらわれた。
この時庄太郎は不図(ふと)気がついて、向うを見ると、
遥(はるか)の青草原(あおくさばら)の尽きる辺(あたり)から幾万匹か数え切れぬ豚が、
群(むれ)をなして一直線に、
この絶壁(きりぎし)の上に立っている庄太郎を目懸(めが)けて鼻を鳴らしてくる。
庄太郎は心(しん)から恐縮した。
けれども仕方がないから、近寄ってくる豚の鼻頭(はなづら)を、
一つ一つ丁寧に檳榔樹の洋杖で打(ぶ)っていた。
不思議な事に洋杖が鼻へ触りさえすれば豚はころりと谷の底へ落ちて行く。
覗いて見ると底の見えない絶壁(きりぎし)を、逆さになった豚が行列して落ちて行く。
自分がこの位多くの豚を谷へ落したかと思うと、庄太郎は我ながら怖(こわ)くなった。

けれども豚は続々くる。

黒雲に足が生えて、青草を踏み分ける様な勢いで無(む)尽蔵に鼻を鳴らしてくる。

庄太郎は必死の勇 を振って、豚の鼻頭(はなづら)を七日六晩(ばん)叩いた。
けれども、とうとう精根が尽きて、手が蒟蒻(こんにゃく)の様に弱って、
仕舞(しまい)に豚に舐められてしまった。
そうして絶壁(きりぎし)の上へ倒れた。
健さんは、庄太郎の話を此処までして、だから余(あま)り女を見るのは善くないよと云った。
自分も尤(もっと)もだと思った。
けれども健さんは庄太郎のパナマの帽子が貰いたいと云っていた。

庄太郎は助かるまい。
パナマは健さんのものだろう。




"心 凍らせて"
by ( 高山 厳)

作詞 荒木とよひさ/作曲 浜 圭介

♪~

あなたの愛だけは
今度の愛だけは
他の男とはちがうと
思っていたけど

抱かれるその度に
背中が悲しくて
いつか切り出す別れの
言葉が恐くて


心 凍らせて愛を凍らせて
今がどこへも 行かないように

心 凍らせて 夢を凍らせて
涙の終わりに ならにように



奇麗な愛じゃなく
子供の愛じゃなく
生命すててもいいほど
慕っていたけど

あなたのその胸は
いつでも遠すぎて
きっと理想の誰かを
宿して生きてる



心 凍らせて 愛に流されて
今も想い出 つかまりながら

心 流されて 夢に流されて
あなたの右手と はぐれぬように

心 凍らせて 愛を凍らせて
今がどこへも 行かないように

心 凍らせて 夢を凍らせて
涙の終わりに ならないように




How was today's one ???

(*^夢^*)





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最終更新日  2006年08月04日 06時56分05秒
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