第二章


「今何処ですか?」
電話で話している人を目で探した。
目の前を歩く、白髪頭で眼鏡をかけてニヤニヤしたおじさんが電話をしているのが目にとまった。
「あ、手ぶらの子?」
そう言われた時、目の前のおじさんと口の動きが違うのでホっとした。
「そうです。」
どこだろうっとキョロキョロしていると、金髪で黒いジャンパーを着た人に声をかけられた
頭の中は真っ白で、目を合わせたまま動けなかったが静寝は笑っていた。
そして、何も言わず一人でバス停まで行ってしまい、私は必死で付いていく事しか出来なかった。
バスが来るまでは20分近くあったが、続かない会話で時間はとりあえず潰せた。
「本当に14歳?」
少し笑みを浮かべて聞かれ、その笑みで少し緊張がとけた。
「幾つに見えますか?」
今私は、どんな顔をしているのだろうか。顔が引きつっている感じがした。
「ん~、単品で見ると18歳かな。」
単品という言葉が引っ掛かった。別に、相手は意識して言ったわけではないだろう。
しかし、自分は品物として考えられているんだと思ってしまい、目線を合わせられなくなった。
「え~!?18歳ですか?」
無理矢理、テンションを高くして聞いた。そんな話をしているとバスがきた。
座ったのは一番後ろの席だった。静寝に千円札の両替えを頼まれて揺れるバスの中、
運転席の近くの両替機に向かった。席に戻ると、静寝はメールを打っていた。
静寝は携帯電話を二つも持っていて、その携帯電話の着信音が鳴る度に、バスに乗っている
おばさんがコチラを向き恥ずかしい思いをした。バス代は静寝が払ってくれた。
入れられなかった整理券を道端に捨て、後ろを歩いた。
くだらない話をしながら、静寝の家に着いた。家には誰も居なかった。
散らかった部屋に入り、とりあえず名前をきかれ戸惑った私は「勝手につけてください」というと
近くにあった本をペラペラめくり「ん~、じゃあユキ。」そうして私の名前は決まった。
その後、援助交際についての話を聞いた。
初めての客には、私と客の間に静寝の存在があると伝えるという事、
やり逃げ防止の為に客の車のナンバーを全部覚えて来る事、お金は前払いという事・・・。
生々しい現実を、今は受け止める事が出来なかった。
話を一通り聞いた後、私は静寝とねた。これも面接の一つ。
最低限のテクニックがなければ、お客さんにも失礼だという静寝の考えであった。
太腿に消えかかった福という入墨があった。おそらく自分で肉をえぐって消そうとしたのだ。
そんな事を考えていると静寝は尽きた。中出しされ心配になり静寝に聞くと
パイプカットをしているから平気だと答えた。静寝とねて、緊張しないで話せるようになり
「皆、いつも普通にタメ語なんだけど、最後まで敬語で社長って呼んでたの一人しか居ないよ。」
と、静寝に言われるまで、この人は社長なんだなっと思わなかった。
「じゃあ、うちも社長ってよびまぁす」
そう答えて、普通に笑いあっていた。その後、寒いとベッドに潜り込み、また静寝とねた。
暑いと言いぐったりしている社長を見て話しかけた。
「何で最初、うちだって分かったんですか?」
駅で、先に見つけてやるっと思っていたのに先に見つけられて少しがっかりしたのを思い出し
聞いてみた。社長は少しして答えた。
「無理矢理笑ってた。」
何も言えなかった。胸が苦しくなって喉が詰まった。
「彼女とかっていないんですか?」
頑張って言葉を口に出したが、少し声が詰まっていた。
「俺、人の事好きになれないから。でも、ヒモやってるんだけど、付き合わないとお金くれない子とは、
とりあえず、付き合ってる事になってるかな。」
何のためらいも無く、スラスラと言葉を口にした社長の横顔を見つめ悲しくなった。
熱を持った社長の身体。心だけは冷え切っているんだと確信し
いつか暖めてあげられたらいいなと思ったが、口にする事が出来ずに頬を胸にあてた。
涙が出そうだったが、必死に堪えた。社長は今、何を考えているのだろう。
孤独でたまらなかった今までの自分が馬鹿らしく思えて仕方なかった。


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