《今日の論点(2)》国連総会の演説において中国外相が尖閣問題をめぐって使った「盗んだ」という表現の意味を感情的にではなく、理性的に考えるべし/『毎日新聞』専門編集委員/金子秀敏氏の「木語」(10月4日朝刊)を読む
「春秋の筆法」(日本の諺)
国連総会の演説において中国外相が尖閣問題をめぐって使った「盗んだ」という表現に感情的に反発する日本人は少なくないが、腹を立てる前にこの言葉の意味についての金子秀敏氏(『毎日新聞』専門編集委員)の解説に耳を傾けていただきたと思う。
金子秀敏氏はこう書いている(『毎日新聞』10月4日朝刊「木語」)。
《「盗んだ」という表現は、中国外相の独創ではない。1943年の「カイロ宣言」に使われた文言である。原文の英語は「ストール」、中国語では「窃取(せっしゅ)」、日本外務省訳文には「盗取」の文字が使われている。
カイロ会談の当事者は、米国大統領のルーズベルト、英国首相のチャーチル、中華民国主席の蒋介石ら、「3大連合国」の首脳だった。宣言には、「日本が清国から盗んだ領土」として、「満州、台湾、澎湖島」が例示されている。
中国外相が「盗んだ」という表現を使ったのは日本向けというより、国連加盟国の外交官に「ルーズベルトやチャーチルも中国と同じ立場だ」と支持を求めたのだろう。
問題はその品格ではない。カイロ宣言(ひいてはその履行を命じたポツダム宣言)という、第二次大戦中に3国が取り決めた領土の線引きを、冷戦も終わった21世紀の今、領土要求の根拠として持ち出したことだ。》
われわれ日本国民は、金子秀敏氏に従って、中国外相の「盗んだ」という言葉の意味を理性的かつ正確に理解すべきである。中国は米国政府に向かってカイロ宣言とポツダム宣言を尊重せよ!と、強く主張しているのである。中国外相が言った「盗んだ」の言葉には、第二次大戦後、カイロ宣言とポツダム宣言を無視して勝手なことを行ってきた米国政府への批判が含まれているのである。同時に、「虎の威を藉る狐」の日本への批判を含んでいるのだ。大新聞社は、金子秀敏氏のような本質問題をとらえた政治解説を行うべきである。いたずらに国民の反中国感情を煽るような報道は百害あって一利なし、である。
・2012.10.6(その1) 森田実の言わねばならぬ/平和・自立・調和の日本をつくるために【893】
《今日の論点(1)》[絶望している真面目な若き民主党員の友・X君への手紙〈2〉]このままでは、日本はおかしくなることを自覚し、まず、平和の破壊者である野田首相と戦ってください/野田首相は玄葉外相の奸計に乗せられて日中紛争を起こした/野田首相、玄葉外相の平和外交否定、武力衝突を前提としているかのような過激な対中政策を正して平和を守り抜くために戦わねばならぬ
「国に諫むる臣あればその国必ず安し」(『平家物語』)
X君。野田首相と玄葉外相は、とうてい許すことのできない大きな過ちを犯しました。9月11日の尖閣国有化の閣議決定です。この結果、日本と中国との関係は、従来の平和友好関係から対立と紛争の関係になってしまいました。これは野田首相、玄葉外相の責任です。
野田首相と玄葉外相は、粘り強い対話を通じて外交による解決をめざしていた山口壯外務副大臣(当時)の進言を切り捨て、中国との対立に踏み切りました。野田首相、玄葉外相は、外交上の対話による解決でなく、中国に対して力づくの強制の方向をとったのです。こんな乱暴なことをすれば、領土紛争が起きます。紛争が激化すれば武力衝突が起きます。戦争になります。こんな乱暴な道を、平和憲法をもつ日本の野田首相と玄葉外相がとったのです。 X君。これでいいのでしょうか。よくないことは明白です。戦争をしてはいけないのです。平和を守らなければなりません。
野田首相と玄葉外相は、中国との対話を拒否しています。これでは平和的解決はできません。玄葉外相は、中国との直接対話を逃げ続けています。こんなだらしのない外相を、野田首相は内閣改造で再任するという驚くべき間違いをしたのです。野田首相、玄葉外相の松下政経塾出身者コンビを糾弾すべきです。X君。起ち上がってください。X君。絶望に悩むのは一日だけにしなさい。政治家は「不屈の楽天主義者」でなければなりません。
・2012.10.5(その3)森田実の言わねばならぬ/平和・自立・調和の日本をつくるために【891】
《新・森田実の政治日誌》「野田首相は人気回復のために国際緊張激化を利用した」という趣旨のドイツ通信社の取材に対する私の談話について、中国に留学中の65歳の方から「記事は取材内容に間違いないでしょうか?」との質問をいただきました/お答えします/「間違いはありません」
「歴史は繰り返す」(ツキジデス)
ドイツ通信社東京支社の9月25日の報道は次のとおりです(中国在住の方の通信からの引用です)。
《ドイツ通信社東京支社が25日に伝えたところによると、評論家は野田佳彦首相が東シナ海の領土問題を利用して政治上の支持を取り付けようとしていると見ている。中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。
野田首相は民主党党首再選のために、中国の反対にもかかわらず尖閣諸島(中国名:釣魚島)の国有化を決定し、先週の党内選挙で勝利を収めた。政治アナリストの森田実氏は、野田首相と内閣顧問が「突然、今回の中国カード利用を決定したのは、彼らがこの決定で内閣支持率上昇が狙えると見たためだ」という。
尖閣諸島の国有化問題で国民の視線をそらせることができた。森田氏は、低迷する支持率とイライラしている有権者に対して、野田首相は尖閣諸島の国有化問題という「禁じ手」を打つことを決めたのだと語る。
6年間で6人目となる野田首相と、10年間で10人目の外務大臣にあたる玄葉光一郎外相は2009年、民主党が与党になるまで外交の舞台に関係なく、在外経験もない人物だった。アナリストは、頻繁(ひんぱん)に変わる内閣に領土問題の解決は難しいと指摘している。
森田氏は、野田首相の国内政治問題をめぐって「おそらく日本と中国は武力衝突すれすれになるだろう」と推測した。「野田首相と玄葉外相のもとで、日本の外交は素人同然だ。政府が重大な誤りを犯したことで両国関係に計り知れない損害をもたらした。野田首相在任中は、傷ついた両国関係の修復は無理だろう」と分析した。(編集担当:米原裕子)》
中国在住の方から「この記事に間違いはないか」との質問をいただきました。お答えします。この記事に間違いはありません。野田首相は、人気回復のために竹島問題と天皇訪韓に言及して日本国民を挑発して人気回復をはかった韓国の李明博大統領と同じことをしたのです。これによって野田首相は民主党内における人気回復に成功し、民主党代表選に勝利しました。野田首相側近の中に、尖閣国有化の閣議決定を利用し、野田首相の人気回復をはかろうと考えた戦略戦術の持ち主がいて、中国を最大限怒らせる形でこれを強行したと、私はドイツ通信社の記者に述べたのです。
政治権力者が、不人気になり、無理に人気回復をするために考えるのは、国際緊張を激化させ、時には戦争することです。政治権力者は、つねにこの手を使います。国際緊張激化は政治権力者の人気回復の常套手段なのです。野田首相も例外ではありません。野田首相は1930年代の日本の首相と同じことをしたのです。
首相官邸は、「石原都知事が買うより野田政権が買ったほうが、中国が安心すると考えた」と言っていますが、これは詭弁です。中国が最も強く反対していたのは政府による国有化であることは、首相官邸は知っていたはずです。
日本政府の中に、中国共産党の人事を決める共産党大会前の日本政府による尖閣国有化の閣議決定はやめるべきだと強く主張した人がいましたが、野田首相と玄葉外相はこれを無視して、9月11日に閣議決定を強行しました。「いまの時期に閣議決定したら大変なことになりますよ。閣議決定は延期すべきです」との側近の進言も野田首相は無視しました。その側近は、内閣改造でパージされました。野田首相はゴマすりだけを集め、直言する真面目な人物を排除したのです。これが、10月1日の内閣改造の本質です。野田首相は開き直ったのです。
野田首相は、国際緊張を激化させたことによって、民主党代表選に勝利しました。国民の人気も少しだけ回復しました。だが、日本国民が失ったものは、計り知れないほど大きいものです。まず、世界中の信用を失いました。「日本はおかしい国だ」と考える人々が急増しました。中国のなかの真の友人も、数多く失いました。野田首相が首相の地位にいる期間は、ほんの一時期です。ほんの一時期の首相の地位を得るために、野田首相は日本の信用を破壊したのです。その罪浅からず、です。
しかし、この"無理"の代償は非常に大きいものです。中国で生活したり、会社を経営している人々は困っています。これらの人々を不幸にした責任は野田首相にあります。外交は忍耐です。政治権力者が、外交を利用し、国際緊張をつくることによって人気回復をはかろうとすることは、絶対にしてはいけないことだと私は思っています。これは「禁じ手」です。使ってはいけないことなのです。
日本の大新聞は、政府が公式に発表したことしか報道しません。日本の大新聞の記者は、政府から与えられた情報だけを報道していますが、ここに問題があるのです。少し調べただけで野田首相の二面性、暗さはわかるはずです。野田内閣の強引な尖閣国有化の閣議決定は、日中紛争を起こし、それによって日本人の偏狭はナショナリズムを刺激し、自らの人気回復をはかろうとしたことは、少し調べればわかることです。
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