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昭和 32 年( 1957 年)製作、翌昭和 33 年にお正月映画として公開された松竹の『張込み』、この映画では随所に当時の世相を垣間見ることが出来ます。
その一場面、佐賀市内の旅館『肥前屋』に泊ることにした刑事役の宮口精二さんが女将さん役の浦辺粂子さんに値段交渉を持ち掛けます。
「そりゃ高いよ、そりゃあ」
「だって二階の一番良か部屋ですし、それに三食付きですからね」「都合で 4 ~ 5 日から一週間ばかりの滞在になるんだがね、もちっと勉強してくれよ」
「そうですねえ、そんなら 50 円ばっかしお負けして 650 円位に」
佐賀市と言えば鍋島 36 万石で九州屈指の城下町、その格式有る町で一泊三食付きが 650 円 !? 、昭和 30 年代は良か時代ですねえ。
この映画、画面にタイトルが流れるまでの導入部が 10 分以上も有ることで知られていますが、そてと同じくらいに惹かれるのがエンディングのシーンです。佐賀駅で登り急行列車『西海号』を待つ主人公 大木実さん達乗客に、ベテラン駅員のアナウンスが響きます。
「お待たせいたしました。只今より 22 時 40 分発、上り東京行き急行列車、西海号の改札を致します。」そしてここからが凄い、う~んと唸らせる脚色です。
「この列車の途中の停車駅は鳥栖、博多、遠賀川、折尾、小倉、門司、下関、西宇部(現 宇部)、小郡(現 新山口)、三田尻(現 防府)、徳山、岩国、広島、糸崎、尾道、福山、倉敷、岡山、姫路、神戸、三ノ宮、大阪、京都、大津、米原、大垣、岐阜、尾張一宮、名古屋、蒲郡、豊橋、浜松、静岡、清水、沼津、熱海、小田原、大船、横浜、品川、新橋、東京でございます。」
何と観客が全ての停車駅名を聞き取れる脚色、映画の最後で観る者の郷愁を誘うとは、実に素晴らしいの一言です。
そして入線して来る西海号、駅員の「佐賀~佐賀~佐賀~」の連呼、タイトルバックゆっくり流れて。
監督 野村芳太郎、氏はこの後『砂の器』始め数多くの清張作品を手掛けることになります。
そして私は 26 日定休日、時間を費やし全ての駅名を聞き取りました。「何度も何度も聞き返す煩雑な作業に耐え、良く頑張った。感動した!」、小泉元首相、褒めてくれるかなあ?![]()