だからもっともっと演劇が好き

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モーリス・ルブランの「強盗紳士」

モーリス・ルブランの「強盗紳士」


1900年代前半のフランスのパリを舞台に暴れまわる「怪盗ルパン」シリーズ第一作。
 もし小学校の図書室にコナン・ドイルの「名探偵ホームズ」シリーズがあるのなら、必ずその隣にモーリス・ルブランの「怪盗ルパン」シリーズもある筈です。(私の学校ではそうでした。)

 ただ小学高学年の頃の私にとっては、ホームズは大変面白かったけれどもルパンは(ホームズがゲスト出演する話以外は)あまり面白いと思えませんでした。ところが高校生になって堀口大學訳版の「強盗紳士」を読んだ時はその面白さに熱中しました。

 なぜ子供の時にはルパンの面白さが理解出来なかったのでしょうか?
 それはルパンが美しい女性を助けるヒーローだからです。
 つまり名推理で真犯人を暴くホームズは子供に受け入れられるのですが、ロマンスのために戦うルパンは高校生以上の人にしか受け入れられない、という事なのでしょうか?少なくとも私にとっては・・・。

 さて第一作の「強盗紳士」には九つの話が載っていますが、それら九つの短編は連続している続き物です。

 第一話では、アメリカからフランスに帰る客船の中に変装したルパンが紛れ込んでいるという情報が入り船内は大パニックになるが、フランスの港でガニマール警部が見事に見破り御用となるまでが描かれています。

 この話のラストシーンはすごく切なくて印象的です。ルパンは普通の青年に成りすましていて、ミス・ネリーという女性と恋人同士になりかけるのですが、逮捕された直後、ミス・ネリーは静かに人込みの中に消えていく。その風景の描写が実に上手い。実に切ない。映像化してほしい。

 第五話は、トリックを使って脱獄したルパンが、自分の母を苦しめた人々の屋敷に現れ、かつて六歳の子供だった自分こそが彼らの宝を盗んだ犯人である事を示唆する絵解きをする、復讐編。
 第六話ではこの物語の記録者・モーリス・ルブランと出会う。ここでもある夫人を救うためにルブランと共に活躍します。

 そして運命の最終話「遅かりしシャーロック・ホームズ」では、忍び込んだ屋敷であのミス・ネリーと再会してしまう!そこでネリーに約束した通りに翌日盗んだ物をすべて屋敷に戻したルパンだったが、やはりネリーは無言で彼の元から去るのです。この描写がまた切ない。

 ドラマ化したら絶対ウケると思うんですけどねえ。ルパンは日本人との混血という事にして、日本を舞台にしたら・・・。

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