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たそがれのカツドウヤ 8



ナシコダとは、このあと腐れ縁がつづく。

家に着くと、ネクタイをゆるめ、大の字になり、翌日まで寝入ってしまった。

きがつくと窓からは太陽がさしこみ、郵便受けには朝刊が夕刊を押し出すように、夕刊が靴の上におちていた。

テレビもつけっぱなしで寝たので、あさ5時。放送開始まえのテスパタンの絵がうつっていて、ピーという信号音を発していた。

冷蔵庫から、牛乳をだし、グラスにそそぎ、ぐっとひとのみした。顔は、当然といえば当然だが、無精髭で顎から口まわりはおおわれていた。

そろうとしたが、電気カミソリのバッテリ切れだ。そりだしたところで、モーターの回転がとまった。

このころはコンビニなんてなかったから、近所の薬局なんぞにいかざるをえないが、8時くらいにならないとあかない。

あきらめるしかない。

途方にくれつつも、下着を着替え、また、スーツにそでをとおした。台所で、水をじゃぶじゃぶ流して顔を洗った。


二日めは、会社につくとすぐに車に乗せられ、調布にある撮影所につれていかれた。

いわゆる、時代劇につかわれる町並みがあったり、あと昭和30年代の飲み屋があって、驚いたことに実際、商売をしていたりするのだが、太秦のように映画村で公開すれば、儲かるのではと思ったが、当時の幹部はそういう発送はなかったようだ。

そのすぐそばにそそり立つようにマンションが見えた。

「あれはね、むかしは撮影所だったんだけど、切り売りしちゃってね、撮影所はいまの広さになったんだよ」

撮影所で案内してくれた人の話だ。でも、これじゃ、映画が衰退していくのも無理はない。広さは半分だと。

そういえば、松竹だって、大船の撮影所を、うっちゃった。

映画会社が、映画を作らないなんて、料理人が、庖丁を質にいれるようなもんだ。

江戸の町並みに流れている川が淀んでどす黒かったのがやけに印象にのこった。

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