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2005年02月24日
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今夜の東京は、春先によくあるように、雪が霏々と舞っている。こんな静かな夜に思い出すのは『碧巌録(へきがんろく)』第六十九則の冒頭に置かれたこの言葉だ。
喰らいつこうにも歯の立ちようがない仏法の真髄を目指て、茨の道をも突き進んでいく雲水にとっては、襲い掛かる困難など、真っ赤に燃え盛る炉の上に、立った一ひらの雪が舞い落ちたようなもの、一瞬にして解けてしまう、というのである。
小生も身に覚えがあるが、こちらの心や体の状態管理さえしっかり出来ていれば、大抵の困難は乗り越えられるし、逆に落ち込んでいれば小石ほどの躓きも大事に至る。
史実ではあるまいが、この語にまつわるエピソードをご紹介しておこう。川中島の戦いで、単身武田信玄の陣営に切り込んだ上杉謙信が、「いかなるか是れ剣刃上の事(けんにんじょうのじ=絶体絶命のいま、貴公の心境はどうだ)」と問いかけると、信玄は「紅炉上一点の雪」と答えたという。
おそらく禅に詳しい人々が、二人の武人の逸話としてこしらえたものであろうが、『碧巌録』の緊迫感をよく伝えている。この雪は邪念の象徴だろう。

それにしても今夜は久しぶりの大雪だ。

あらたまの年のはじめの初春の今日降る雪のいやしけよごと

大伴家持の歌だったろうか。今日の初雪のごとくよごと(吉事)が「いやしけ(いよいよ重なれ)」と祈るとき、この雪もまた煩悩の代名詞だろう。
煩悩を瞬時に消し去れたらどんなに楽だろうと、若い頃は思っていた。この頃は煩悩こそ命の証かもしれないと思うようになってきている。






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最終更新日  2005年02月25日 00時53分29秒
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