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2005年03月19日
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心友がこのところ疲労困憊している模様である。
私が今までの人生のなかで、最も困難な局面に立たされたとき、彼は私のことをほとんどまだ何も知らないにもかかわらず、持っているものの最上のものを、一瞬のためらいも無く、私に与えてくれた。
あの日の感激があるから、どうにか今、私は生きていられるようなものである。

では私は彼に何を与えることができるだろうか。
考えても考えても、何も浮かばない。

考えることを一度放棄したら、本当に求めることが得られるかも知れない。
そう思って、前から疑問に思いながら、きちんと読めなかった道元の『正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)』の中から第二十八巻の「菩提薩た四摂法(ぼだいさったししょうほう)」を開いた。(「菩提薩た」の「た」は土偏に垂と書くが、文字化けするので、ここでは残念ながらこういう表記になってしまった。)

これは菩薩が衆生をいかにして救うか、その実践方法を説いたもので、『正法眼蔵』の他の巻が哲学的な思索の展開であるのと比べると、驚くほど具体的で端的な記述である。

具体的に記述されたのには訳があって、この巻は道元がふだん接している修行僧のために説いたのではなく、当時の天皇のために書いたものだからである。

それは権力というものを嫌いながらも、権力の座につかねばならなかった人間個々の中には、信を置くに足るものがあると信じていたからであろう。

で、その具体的な方法として、道元は「布施」「愛語」「利行」「同事」の四つを提示する。具体的とは言いながら、そのどれもなかなか手ごわい。

冒頭の「布施」に取り組んでみて、のっけからパンチを受けた。
道元の言葉は
その布施といふは、不貪(ふとん)なり。不貪といふはむさぼらざるなり。
むさぼらずといふは、よのなかにいふ、へつらはざるなり。
たとひ四洲(ししゅう)を頭領(とうりょう)すれども、正道(しょうどう)の教化(きょうけ)をほどこすには、かならず不貪なるのみなり。
たとへば、すつるたからを、しらぬひとにほどこさんがごとし。
遠山(えんざん)の華を如来に供(くう)じ、前生(ぜんしょう)のたからを、衆生にほどこさん、法におきても、物におきても、面々に布施に相応する功徳を本具せり。
我物にあらざれども、布施をさへざる道理あり。
そのもののかろきをきらわず、その功の実なるべきなり。


ことに『修証義』に省かれている「すつるたからを、しらぬひとにほどこさんがごとし」の一句は衝撃的だった。

道元の言う「すつるたから」は要らなくなったゴミなどではない。いや最終的には同じ事かも知れないが、自分の最も大切な命そのもののことなのである。

私たちは「目に見えぬ大きな力」によって、この命を授けられた。その「目に見えぬ大きな力」は「人類を平和で幸せなものとし、永遠に栄えるものとしたい」という願いをもって、次々と人間の命を生み出した。

この「目に見えぬ大きな力」は慈悲と智慧であり、如来と言い換えても良い。

その如来によって今生の命を与えられた事を自覚するものは、最も有意義な命の使い方を模索する。

お任せすると覚悟したからには、その最も大切な「たから」=命を知らない人に与える事さえある。
遠くの山でやっと手に入れた貴重な花でも、それを惜しげもなく「目に見えぬ大きな力」に捧げ、前世で得た尊い宝を施すように「すつるたからをしらぬひとに」さげることは、理屈で解っても実践は困難だ。

しかしそれをいとも軽やかにやってのけてくれた心友がいる。
その彼が疲れきっている今、私にできることは・・・・・
静かに彼の回復を見守るしかないのか・・・・

むかし、山でよく歌った歌を想いだした

静かな夜更けに いつもいつも
想いだすのは おまえのこと
お休み やすらかに
たどれ 夢路
お休み 楽しく
今宵も また

きみのお蔭で、今夜は「菩提薩た四摂法」を読むことができた。
これから私は師匠の寺に行く。日曜ごとに檀家の方々と共に行っている読経の会に出かける。そのバスの中で一時間、私も眠ろう。
きみもまた、お休み やすらかに、そして楽しく。きみの人生の本当の目的を実現するために、疲れた体をいたわってやれ。





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最終更新日  2005年03月20日 04時48分56秒
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