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2005年04月09日
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若杉賢さん、有難うございました。

この場を借りて御礼申し上げます。

昨日は心友一家や、心友のお兄さんの恋人もまじえて、我が家も全員で花見をしました。爛漫の花のもとに、弁当をひろげ、たあいも無い話やゲームに興じただけですが、心通う人々がいるという幸せをしみじみ感じました。

今日のタイトルは『碧巌録』第三十六則の一節からです。
長沙景岑(ちょうさけいしん)という唐の時代の禅僧の言葉です。

長沙の生まれた年はわかりませんが、亡くなったのは西暦868年です。
長沙は、放浪の好きな人物でした。住職となってたくさんの雲水を預かる身となっても、なかなか寺の中にじっとしている事ができません。
うららかな春の一日、誰にも告げずに遊山に出かけました。

首座というのは、寺を学校にたとえると学級委員長みたいな役割です。担任にあたる住職がいなくなれば、首座はクラスの全員にあたる雲水たちに自習を命じながら、担任が帰るまであれこれ気を配っていた事でしょう。
で、首座が万策尽きて門前で放心しているところへ、長沙が帰ってきます。

首座は長沙に「どこへ行ってたんですか」と声をかけます。おそらくほっとして出た自然な言葉だったでしょう。ところが、長沙は首座がやきもきしながら過ごした一日を、知ってか知らずか、のんびりと「遊山じゃ」と答えます。
その答えに拍子抜けし、またちょっと批難の気持ちも籠めて首座は「どこへですって?」と重ねて問います。
すると長沙は「始めは芳草に随って去き(はじめは ほうそうに したがって ゆき)、又落花を逐って回る(また らっかを おって かえる)」つまり、萌え出した草花の香りに誘われて出かけたのだが、帰りは散る花に追いつ追われつしながらだったよ、と答えました。
首座は「大いに春意に似たり」いいご機嫌ですな、と精一杯の皮肉で応じます。
長沙は動ずることなく「又秋露の芙渠に滴るに勝れり(また しゅうろの ふきょに したたるに まされり)」と答えます。(芙渠の渠は正しくは草冠が付きますが、文字化けするので使えません)長沙の言葉は、枯れた蓮に露が滴っているわびしい秋の景色より、やっぱり春の楽しさはずっと良いものだ、という意味です。

二人の会話はこれしか記録されていませんが、この長沙の言葉の裏側に秘められた思いを、のちに雪竇(せっちょう)という禅僧が偈(げ)にします。偈というのはあまり厳密な約束にしばられない詩の一種と思ってくだされば結構です。
その偈はこうです。

大地 繊埃を絶す(だいち せんあいを ぜっす)
何人か眼を開かざる(なんぴとか めを ひらかざる)

また落花を逐って回る
るい鶴 寒木に はねやすめ(るいかく かんぼくに はねやすめ)
狂猿 古臺に嘯く(きょうえん こだいに うそぶく)
長沙 限りなきの意(ちょうさ かぎりなき の い)
咄(とつ)


そして、眼の開けた人物なら、うきうきした気分の春を存分に味わえるばかりでなく、秋にはやせ衰えて飛ぶ力も無くなった鶴が、葉のすっかり落ちた木の枝にしょぼんととまっていたり、えさが乏しくて廃墟の上で狂ったように鳴く猿の声にも、仏の世界を見て取ることができるよ、と敷衍します。
長沙の春のうきうきした言葉の裏側には、うら寂しい秋の風情をしっかりと見据えた世界がある事を伝えています。

秋の思いを胸に秘めながら、春の美しさを愛でる事ができれば、人生の意義は何倍にも増して深く味わう事ができるよ、と古人は教えてくれているのでしょう。
いえ、古人ばかりではありません。水谷修先生も若杉賢さんも、長沙の心と通い合うものがあると思います。

急に変われる訳ではありませんが、私ももう少し人生を深めながら、また禅の言葉に取り組んでいきたいと思います。
皆様のお励ましに心より感謝申し上げます。





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最終更新日  2005年04月10日 05時43分19秒
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