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2005年05月08日
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今日は母の日。皆さんはどういう風に過ごされただろうか。
私は今朝も毎週の日曜のように、師匠の寺に、檀家の方々と一緒にお経をあげに行った。読経を始めようとしたら、見知らぬ夫人が仲間になった。般若心経・大悲心陀羅尼・修証義と型どおりに読み終えて、最後の回向文になったところで、師匠が知らぬ人の名前を読み上げた。
どんな事情のある方だろう。今日の珍客にゆかりの方に違いないとは想像できたが、深く詮索すべきものでもないし、そのまま終わるものと思っていた。

ところが、案に相違して、和尚が説明を始めた。
いま回向したのは○○君と言って、家庭内暴力の行き着く果てとして、逆にお母さんの手にかかって亡くなられた方です、という。
そして、今日の珍客はそのお子さんと同級の子供さんを持たれたお母さんだった。
葬儀らしい葬儀も挙げられなかったその子のために、冥福を祈って欲しいという趣旨であった。胸ふさがる思いがした。

で、いまの読経は冥福を祈るものであったとしても良いが、私たちはそれだけで良いのだろうか。ふとそんな気がしてならなかった。
亡くなられたお子さんはもう手の届かない世界に行ってしまったし、もう苦しみの無い世界でもあろうから、生きながら地獄にいるお母さんのために何をして差し上げられるだろうか、と和尚に聞いてみた。

私とて安直な慰めが役に立つとは思っていないが、和尚の言葉が意外で、すんなりとは合点がいかなかった。

私は昔から、仏教は生きて苦しんでいる人のための救済を目指すものだと思ってきた。お釈迦様は輪廻を抜け出て、二度と生まれ変わらないために解脱したのではなかったのか。悟りはそのためではなかったのか。
和尚だってそんなことは百も承知、二百も合点の筈ではなかったか。
寺院経営上の問題は脇において、こんな場合はもっと真剣に本音で話しても良いではないか。しかし和尚の口調はいつになく厳しい。
和尚も私もそこで口をつぐんでしまったのだが、互いにムッとするものがあった。

その空気を察して、近所の内科のお医者さん=越島先生が、良寛の歌を披露された。
越島先生は八十歳をとうに超えておられるが、いつも頭脳明晰で、彼の博識には舌を巻くのだが、今日は本当に救われた。それがタイトルの和歌である。
越島先生はこの和歌の背景を説明された。
或る年、不作のために畑荒らしが横行した。乏しい食料は奪う側にも奪われる側にも、互いに抜き差しならぬ死活問題を抱えてのことであった。
夜道を良寛が通りかかると、畑荒らしと間違えられて、散々なぐられ小突き回された。やがてそれが良寛であると村人が気がついて、今度は平謝りに謝った。
もとより、良寛は許したが、そのとき詠んだのがこの歌であったという。



読経を終えてその足で仙台に講演に出かけた。五十人の方々と一緒に禅の典籍を一緒に読むのだが、今日で二十一回めだという。長く続いたものだなと思う。
二月ぶりの仙台であったが、この間、会員の方々は話したいことを溜め込んでおられたのであろう。帰りの新幹線ぎりぎりまで次々とそれぞれの話を持ち込まれた。最後に老婦人が追いかけてこられた。お孫さんが高校の教師からセクハラを受けて、その母親も精神的な衝撃を受け、三代の女性たちがいま家庭内で苦しんでいるという。でも今日の話を聴き、きっといつか救われる日があると確信できたと喜んで私の手を握られた。少しはお役に立ったのかな、と安堵しながら、大変な母の日だったな、この一日を帰りの車中で振り返った。

帰宅して母に電話した。すでに自分の母と、家内の母にそれぞれちょっとしたものを贈ってあったが、手紙を添えていなかったので子供たちと一緒に電話をした。まあ、どこにでもある平凡な、平凡ななりに幸せな母の日であった。
そしてこのつつましい幸せに深い感謝を覚えた。





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最終更新日  2005年05月09日 00時02分50秒
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