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『出会い』 3
「akariさん、人数も揃った事ですしそろそろ・・・」
「そうね、始めましょうか」
パンパン
先ほどの“天然ボケ”の余韻がさめない中、akariの手をたたく音が響いた。
「さっきは少し恥ずかしいところを見せてごめんなさい」
「全員揃ったんでこれからの事を説明しますね。」
akariは先ほどまでとは違った真面目な顔で話を進めた。
『真説RS:
赤石
物語』
第1章 『出会い』-3
「今日から一ヶ月の間ここにいるメンバーでパーティーを組んで一緒に行動してもらいます。」
「一ヶ月の期間が終わってから隣にいるAndrsenと2人でギルド加入権を与えるにふさわしいか判断します」
「その後の事はその時にまた説明しますね」
「あの・・・・akariさん・・・・みんなちょっと驚いてますよ・・・」
Andrsenは周りの様子を確認し耳うちをした。
「あら、ごめんなさい。少し堅く話しすぎたかしら・・・」
「あまり難しく考えないでくださいね。」
「リラックス!リラックス!」
言葉自体に説得力はなかったが、akariの言い方、表情で場の雰囲気が少し和らいだ。
「うん、じゃあこれから自己紹介始めます!」
「まずは私から、akariって言います。職はこれやってます。よろしく」
笑顔で剣を上から下に振り下ろす真似をした。
普段着の彼女は一見ただのか細い女性にしか見えないが、たまに服の合間から見える彼女の腕は細いながらもしっかりと引き締まっており無駄な脂肪がある様子はない。
さらに何よりも一つ一つの動作に隙がない事が彼女が一流の剣士である事を証明していた。
「じゃあ、アンちゃんどうぞ」
「あ、はい。Andrsenです。ビショップなので攻撃は苦手ですが回復等の支援は任せてください。よろしく」
akariと違い筋肉質の体だったが彼の口調から伝わる優しさ、そして周りの状況を把握するすばやさから彼も一流の支援職である事を窺わせていた。
「私とアンちゃんの2人でPTの指揮をとっていきますのでよろしくお願いします。それじゃあ・・・・君から順に自己紹介してもらえるかな?」
「あっ、はい。」
窓際にいた男が応えた。
「バシパーです。支援WIZARDなんで、まっ支援は任せてください」
「以上です。よろしく」
「あっ、え~グレイツと申します。」
隣にいた男が続いた。
「アーチャですがまだまだ未熟者です。ご迷惑おかけしますがよろしくお願いします。」
「次は、俺かな」
周りを見回しながらバアルが続いた。
「バアル・T・ブルです。今は俺より強い人は山の様にいますがこいつと一緒に暴れて全員追い抜くつもりです。」
バアルが手にもつ“こいつ”は自分の身長より少し長く、布に包まれた槍だった。
akariやAndrsenには少し及ばないが彼の隙のなさは前の2人のそれとは全く違ったもので、少年の様な笑顔からは想像もつかない強さを感じさせる。
「って何か偉そうになりましたね。まぁよろしくです」
「天乃ミコトです。」
バアルが終わった事を確認して続いた。
「akariさんと同じで剣士です。自分の可能性を信じてここまで来ました。」
「まだまだ弱いですが頑張ります!よろしくお願いします!」
そう言うミコトの目は不安などを感じさせない力強い光を宿していた。
―パチパチパチ
akariは一通り自己紹介が終わった事を確認し拍手を贈った。
「みんな自己紹介ありがとう。改めてこれから一ヶ月よろしく。」
「アンちゃん、さっそくあれをみんなに」
そう言うとAndrsenが全員に小さな袋を渡した。
小さな袋の中にはマイクのついた小型イヤホンが入っている。
「これはチャットっていうアイテムです。これで少々離れていてもPTのメンバーと会話する事出来ます。」
「これはPT専用だけど、色んなタイプがあってギルドでは周波数を変えるとギルド・PT・個人で会話する事が出来る様になってるのが多く使われてるかな、使い方は・・・」
そう言ってakariはチャットと呼ばれているアイテムを手にしながら説明を続けた。
「・・・・チャットの使い方はこれで終了。なんでこれを渡したかって言うと、早速だけどすでに依頼を受けてるので旅支度だけしてもらってすぐに出発します。」
依頼と出発の言葉から部屋に一瞬緊張が走る。
「とりあえずこれで解散するけど、これは遊びでもなんでもなく仕事で下手すると命さえ落としかねないからよく考えてそれでもギルドに入りたい人は30分後に建物の前に集合してください。」
akariの言葉にさらに緊張が走った。
「それじゃあ解散しましょう。」
そう言ってakariとAndrsenが部屋を後にし、それに続いてグレイツ、バシパーが部屋を後にした。
「おっしゃ、なんかワクワクしてきた。ミコトももちろん行くよな?」
部屋に残っていたバアルが口を開く。
先ほどまでの緊張は何処吹く風と言った様子だ。
「うん、もちろん行くよ。でもバアルさんワクワクってすごいね。」
ミコトは笑顔で答えた。
「まぁね、ってかバアルさんって何か嫌かな。バアルでいいよ。」
「うん、わかった。バアルだね」
初対面の2人だったが不思議とお互いに親近感を覚えていた。
普段なら決して初対面の相手を呼び捨てやあだ名で呼ばないミコトだったがその親近感のせいかバアルには素直に言えた。
――30分後
「ひょっとして誰もいてなかったりして。アハハ」
「ははは。でもそれはないと思いますよ。」
akariとAndrsenはそんな冗談を交わしながら集合場所へと向かっていた。
「おー!」
ギルド協会の前にいる4人の人影を確認したakariが喜びの声を上げた。
「全員来てくれたんだ!いよーし、行くぞー!」
右手を頭上に上げ無邪気にakariが言った。
「akariさん・・・・まだどこに行くか言ってませんよ。」
後ろではまたの天然ボケにAndrsenが笑いを堪えられない様子だ。
「あははははは」
ミコトとバアルが目を見合わせて笑い出す。
そんな皆を暖かい太陽の光と心地よい風が旅の門出を祝うように包んでいた。
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