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『離盃』 3
ドォーーーン
轟音がしたと思えばあたりが砂煙で覆われた。
「おじけづいたかぁ!?」
キラーボーイズが戦士の遠距離スキルの一つソニックブレードを放ちながら叫ぶ。
「・・・・・」
対するガラテアは冷静に状況を見極めつつキラーボーイズの攻撃をかわした。
この数分間パワーで相手を圧倒する典型的な物理戦士のキラーボーイズが本来ならあまり使用しない遠距離攻撃でしか攻撃していない。
ガラテアもまた相手の懐に入るべく算段を練るも今だ攻めあぐねる状態が続き、戦いの主導権はどちらも掴む事が出来ずにいた。
「やっぱ近づかないとあかんよなぁ・・・。2・・・いや1の差か。」
ガラテアが一人呟いた。
「ふぅー、よしっ!」
意を決したガラテアがキラーボーイズめがけ一直線に進みだす。
この時を待ちわびていたキラーボーイズも反撃を繰り出す為、斧を振り上げ構える。
そしてガラテアとキラーボーイズとの距離が0になりぶつかり合った。
衝突は複数の金属がぶつかり合う音を残した。
2人は2撃目を放つ事なく距離を置きお互いを睨む形で対峙していた。
「くっ・・・。」
ガラテアの着用していた鎧の肩当部がキラーボーイズの攻撃によって変形していた。
「けけ・・・・戦士と剣士とじゃあ速度云々よりも攻撃回数が違うんだよ。」
「ハリケーンショックの3発同時攻撃に対しサザンはたったの1回しか攻撃しない。盾で攻撃を防いだとしても1撃分戦士の方が攻撃回数で勝つ。」
「ディレイクラッシングとパラレルスティングを比べても結果は同じだ!」
キラーボーイズが得意気に語った。
「確かに・・・・・1回の差やな。」
ガラテアが肩を押さえながらキラーボーイズを睨んだ。
「ちっ。」
キラボーイズが舌打ちをした。
よく見るとわき腹あたりの鎧の隙間部分から血が滲み出していた。
「その剣は・・・・・そうか。」
「そう、速度重視の剣や。いくら1発の攻撃回数で戦士が優れていても1回の攻撃に対し複数回攻撃を加えれば対等、いや今の様に1回分俺の方が攻撃回数で優位にたてる!」
「何回も言ったやろ?戦士は強い。けど他職をなめていたら痛い目に会うと。」
「けけ・・・ならこの勝負に勝って戦士が剣士なんかに負けないとこを証明してやるよ。」
そういい終わるといつでも攻撃出来る様にキラが斧を振りかぶった。
―とは言ったものの1発の威力は比べ物にならない・・・。キラもそんな事わかっているはず・・・・
―あまり時間かけられないな
ガラテアも次の一手を考えながら構えた。
またも2人の気によって周りの空気が歪み出した。
タッ!
2度目の衝突はどちらからともなくほぼ同時に動き出した。
『真説RS:
赤石
物語』
第4章 『離盃』-3
幾度か交戦した後、ミコトとベルは一定の距離を置きずっと睨みあっていた。
先手、主導権を取るためにお互い目線をそらさずに相手の隙を探り合っていた。
1分2分が彼らの中では何十分にも感じられ、時間が経つにつれ気力が除々に削られていく。
しかしこの状態が長い事続いている事が現時点で2人に戦力の差がない事を表していた。
ドォォン
遠方でガラテアとキラーボーイズが交戦する音が時折聞こえた。
ドォォォン
一際大きい音が響いたのをミコトとベルが耳にした。
その際に生じた衝撃でこぶし程の大きさの石が2人の方へと飛来していた。
その石が丁度ミコトをベルの視線が交差するあたりを通る。
その事により一瞬だが2人の視線が外れた。
タッ
視線が外れたのを合図にした様に今まで動かずにいた2人が同時にお互いの距離を詰めるべく進みよった。
カンッ カッ カンッ
再度2人が衝突すると先程からは想像出来ないくらいの攻防が展開された。
ベルの放った突きをミコトがかわし懐に入り込み一撃を与える。
サイドステップでその一撃をかわすと今度は逆にミコトに一撃を返す。
シマーによりミコトの周りを浮遊していた盾がベルの攻撃を防ぐ。
続け様にベルが攻撃を加えるもミコトの剣により阻まれる。
それでも続くベルの高速連突き、ミコトもこれに負けじと剣と盾を駆使して応戦した。
カンッ
たまたま盾で防いだつもりが結果ベルの槍を弾く形となりその隙をつき今度はミコトが攻め立てる。
上段から振り下ろし、刀身を180度回転させると今度は斜め上方へと振り上げる。
そのまま勢いを殺さずに右から左、左から右とまるで刃先が円を描くかの様なきれいな流れで攻める。
しかしベルもまた槍の穂先や柄、ランサー独特のステップで応戦した。
ほんの小さなきっかけでミコトからベルへ、ベルからミコトへと主導権はどちらの物ともなく攻め手、受け手のみが変わる戦いが続いた。
「互角ですね。」
「・・・・・・」
「ん?にゃるら様?」
「そろそろ動く準備をしてくれ。」
ミコトとベルの戦いを見ていたにゃるらが付き人に指示を与えた。
「まだベル様は覚醒し始めたばかりでまだ戦いに体がついてきていない。今は互角でももう少し時間が経てば差が出てくる。」
「はっ!」
しばらくするとにゃるらの言う通り少しずつ主導権がミコトの方へと傾き始めた。
「バアル、勝負は見えはじめてきた!槍を置くんだ!」
ミコトがベルに話しかける。
「ちぃ、うるさい!だまれぇ!」
しかしベルは槍を置く気配を見せる事はなかった。
「目をさませっ!!」
ミコトが叫ぶと同時にベルの槍を地面に弾き落とした。
「もう悪い夢は終わりだ。一緒に古都に帰ろう・・・。」
バシッ
不意にミコトの背中に激痛を伴う衝撃が走った。
背後を振り返ったミコトを再度激痛が襲う。
「くっ・・・・」
ミコトは咄嗟にその場を離れ距離をとった。
そこには先程まで様子を見ていたはずの赤髪の女性が立ち構えていた。
その手には髪や目と同じ様に燃えるような赤色を帯びた鞭が携えられていた。
「ベル様、これを。」
地面に転がっていた槍を拾いベルに手渡した。
「ふん、体が馴染むまでは仕方ないか。」
ベルが首を鳴らしながらペン回しの様に槍を回しだした。
「追手がこちらに向かっているそうです。早くけりをつけて行きましょう。」
「ふん、1対1でもどうにかなったがまぁよい。遅れをとるなよ?」
ベルが振り回していた槍を止め構える。
「はっ。」
「ミコト・・とか言ったわね?」
女性がミコトの方を向き話しかけた。
「私は“艶夜”、地獄の業火に焼かれ踊り狂いなさい。」
艶夜が舌で口を舐めまわす素振りを見せ妖艶な微笑みを浮かべた。
欲求を満たすための獲物を見定めたかの様に・・・・
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