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『離盃』 6
「すぐに戻ります!」
ミコトが声をかけStojikovic達の下へと足を進めた。
言葉は返ってこなかったが背中越しに伝わるガラテアの闘気が何よりの返事だった。
ミコトが去り残った5人の内にゃるらを除いた4人が相対する。
「けけけ・・・3対2だったものをわざわざ3対1にしてどうすんだ?」
キラーボーイズが嘲笑うかの様な口調でガラテアを問い詰める。
「別にどうもさせんよ。俺が何も考えずにこんな行動とるとでも思ったんか?」
他の3人にも気を配りつつキラーボーイズの問いに答えた。
「これでやりやすくなりましたね。あくまで今すべき事は援軍が来てしまう前に撤退する事。よろしくお願いしますよ。」
にゃるらはそう言い残しその場を離れまたも静観し始めた。
「出来れば1対1でやりたいところだがこっちにも時間制限あるんでね。今度こそ終わりにしようか、兄弟!」
「・・・・・・・・。」
キラーボーイズの言葉に対しガラテアは無言で剣を構え直し答えた。
「ふんっ。」
一番最初に動き出したのはキラーボーズでもガラテアでもなく無言で構えていたベルだった。
ガラテアがベルと闘気を同調させようと試みるもその心に迷いはなく思う様に出来ない。
「くっ。」
後方に下がりベルの突きをかわす。
かわしたところにキラーボーイズの斧が牙を剥いた。
「っ!!」
ベルと同様に気を同調させようとしたが難しくギリギリのところで反応し攻撃をかわした。
―少し狙いをずらす位で精一杯か・・・
ガラテアがさっきまでと違う手応えに顔をしかめた。
「けけけ・・・さっきまでの威勢はどうした?何か策があるんじゃないのか!?早く見せてみろよっ!」
キラーボーイズの声が段々と調子付く。
「そんなに焦らんでも時が来れば見せるさ。」
「強がりなんかいらないぞ、兄弟。」
「強がりかどうかはその斧で試してみたらいい。来いよ、キラ。」
「あぁ、試させてもらうさ。」
ガラテアが剣をかまえると同時にキラーボーイズがガラテアめがけ走り出した。
ベルと艶夜も先程までの雪辱を晴らすべくキラーボーイズに続く。
「・・・ったく来いよとは言ったけど・・・そんなに焦ってくるなよ。ジリ貧だな。」
受け構えるガラテアが小さく小さく呟いた。
『真説RS:
赤石
物語』
第4章 『離盃』-6
「はぁはぁ・・・・っはぁ。」
戦闘で傷付いた体をおしてガラテアたちの姿が見えなくなるところまで走ったところでミコトは足を止めた。
そして懐から一冊の本を取り出し小さな声で何かを呟いた。
しばらくすると天空より一頭のドラゴンがミコトのもとへと舞い降りた。
「頼む・・・。」
別れる前にガラテアから受け取った召還書により召還されたドラゴンの背に乗りさらに移動速度を上げる。
背後からはしばらく止まっていた気がまた大きく動き出すのを感じた。
それと共にかすかに大気が振動するのを肌で感じた。
―くそっ、もっと早く・・・
気のぶつかり合いを感じとるも何も出来ない自分への歯痒さと苛立ちを感じ焦り気持ちばかりが先行してしまう。
“ガガッ・・・・ミコト?”
ガラテアのもとを出て5分程が経過した頃ミコトの装着していたチャットからStojikovicの声がした。
“ストさんですか?実は・・・”
ミコトはStojikovicに戦闘に入った事、何故一人で移動しているかを簡単に伝えた。
“わかった!ミコトの位置は掴んだ。今すぐ引き返してガラの援護に向かってくれ。俺らもすぐに追いつく!”
“はいっ。”
Stojikovicの言葉におされる様にミコトはすぐに方向転換しガラテアのもとへと向かった。
「ふー。」
チャットでの会話を終えたStojikovicがおもむろにため息をついた。
「どうした?ギルド壊滅の原因わかったのか?」
「ふむ・・・合流までまだ10分以上はかかるからそれまでにわかった事を説明する。」
そう言いStojikovicはミコトから聞いた情報をPTメンバーへと伝えた。
「まじか・・・・。にゃるらって言ったらあの天才軍師だろ?一体何が目的で・・・」
驚いた様子でkioraが話す。
「ただの反乱かしら、スト?」
心配そうな顔でakariが続く。
「いや・・・ただの反乱にしては引っかかる事が多すぎる。何か嫌な予感がするんだが・・・。」
akariの問いかけにStojikovicは難しい顔で応えた。
「まぁ、とにかく早く合流して動きを止めましょう。」
周りの空気を察したkikouteiが一際明るい声をかけた。
「だな。」
「ですね。」
kioraとakariが笑顔で応える。
「・・・・・間に合ってくれ。」
ただ一人、Stojikovicだけは胸のもやもやがとれず険しい顔をしていた。
“ストさん”
不意にチャットからミコトの声がした。
“ん、どうした?”
“ガラさん達の気を感じ取れる位置まで戻りました。まだ戦闘中なのか目まぐるしく動いています。ひょっとしたらチャットで会話出来ないかもしれないので。”
“了解した。俺達も全速力で向かっている。無理だけはするなよ。”
“了解!”
―・・・・・。
チャットでの会話を終えたミコトの頭に何故か一抹の不安がよぎる。
ドォーーン
キラーボーイズの攻撃を防ぎきれずガラテアがその勢いに押され後方へと吹き飛ばされる。
「はっはっはぁ。どうした?こんなものか!?」
「はぁ・・・・はぁ・・・・。」
ガラテアは体のあちこちに傷を負いもはや立っているのがやっとの状態だった。
かたやキラーボーイズは優位に立った事により気持ちが高揚し疲れ、痛み等はどこかへと飛びハイの状態になっていた。
「はぁ・・・はぁ・・・・・!」
Stojikovic達を迎えに入っていたミコトが引き返しこちらへと帰ってくる事とそれを追う様にこちらに向かってくるStojikovic達の気を感じ取り疲労困憊のガラテアの顔色がかすかに変わった。
「そろそろ策とやらを出してみろよ。そんな状態で何が出来るかわからんがな。」
「はぁ・・はぁ・・ふっ、策か。」
キラーボーイズの挑発に対し微笑を浮かべる。
「まさか・・・そうか・・・・そういう事だったのか。もう終わりにしよう。」
ガラテアの表情、言葉にいぶかしげな表情を見せたが何かを理解したのか落胆したかの様な表情に変えガラテアを見つめた。
「次で決める。援護頼むぞ。」
そう言いだしキラーボーイズがガラテアめがけ走り出した。
「はぁ・・・・はぁ・・・・もう少し時間稼げると思ったんやけどな。策って言葉だけやとこんな物か。」
ガラテアが小さく呟いく。
その声は恐怖に震える事もなくどこか初めからその事を覚悟していた様でもあった。
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