ガロの剣士道!

~心に宿りし者~



           ラーディは進軍を止める。
        モンスターの軍勢が確認できたからだ。

           『・・・・・・・・・・』
         誰一人として声を発する者は居ない。
   モンスターの軍はきれいに陣形を取っており、微動だにしない。
        簡単に言えば圧倒されてしまったのだ。

          『ん・・・剣を貸してくれ。』
  ラーディは近くに居た兵士の剣を受け取り、それに魔力を付加した。
      そして、その剣をモンスター目掛けて投げつけた。

 投げられた剣は彼の魔力によって風を帯びてものすごい勢いで命中した。
不幸にも彼の攻撃を受けたモンスターは頭部を剣が貫通しており、瞬時に絶命したのだろう。
        間抜けな面を見せながらその場に倒れた。

            (ぁ、崩れた・・・)
             レルドは思った。
   相手の陣形が完璧すぎて圧倒されたなら、その陣形を崩せばいい。

             『ぐぉぉぉぉぉ』
  いままで張り詰めていた空気がモンスターの叫びと共に振動する。

               戦闘開始
       その場にいる全ての生き物がそう思っただろう。

皆が緊迫した顔つきの中、ラーディはレルドのほうを見てニヤッっと笑って見せた。
           並みの胆力ではないのだ。
笑いかけられたレルドも戦闘が待ちどうしかったといわんばかりに笑みを見せる。
           『さぁ~て、暴れるか。』
   そんなセリフを残してレルドはモンスターに突っ込んでいった。


アクドが腰を上げて戦地へ向かおうとしたとき、空間が捻じ曲がり、蒼翠の炎を纏った男が姿を現した。

            『あんたは・・・』
  いきなりの出来事にも関わらず、アクドに焦った様子は見られない。


           『よぉ、久しぶりだな。』
         男は軽く挨拶をして笑いかける。

       『まったく、「よぉ」じゃないッスよ。』
       アクドはやれやれ、といった表情を見せる。
          『それで、なにか用ッスか?』
  ― 時間・・・無いんすけど。っと、やや凄みのある表情で言う。


     『ここは異空間で時間は流れてないから大丈夫さ。』
          『ちょっと話があってな。』
         彼はリラックスした様子で座り込む。                   お互いに敵意は見られない。


       『はぁ、あんたはいつも唐突っすね。』
『ローさん、あんたの目的がなんであろうと、協力はしますけど・・・』
『あんたがロードギルドを攻めるように命じたモンスターを俺に倒せっていうのは・・・・結構奇天烈な発想っすよ?』


         それに対し、ローは軽く答える。
         『うん、そのうちわかるさ。』
『それで、話なんだけどな、万が一お前らがやられるようなことが無いように、ギルダーツにあいつら連れてくるように言っといた。』
      『呼んだのはお前ってことになってるけどな。』

           そういってローは笑う。


    『ギルダーツって・・・どれだけ情報もってるんすか。』
          アクドは苦笑いしながら言う。
         『・・・話はそれだけっすか?』
       『それだけなら俺、戦場もどりたいんすけど。』


           『まぁ、これだけかな。』
       『じゃあ、あいつらを助けてやってくれよ?』
   ローがそういって姿を消すと同時にアクドは元居た場所に転移した。


(・・・体は転移前の状態のままか。だとすると、今のは精神のみの異空間転移。・・・・・・ハハッ、ローさん、あんたは危険すぎますよ。)

 アクドがそんなことを考えていると、数匹のモンスターが向かってきた。
           しかしアクドは動かない。

              ヒュン!
風を切る音と共に銀色に光る手斧がアクドの隣を通り過ぎ、モンスターを絶命させた。

    『・・・こんな戦場に呼び出さないでほしいですね。』
     影から1人の男がでてきてアクドに文句を言った。

          『ん、不可抗力ってやつだよ。』
   アクドは座りっぱなしの状態で向かってくる敵を倒している。
そのへんに転がっているモンスターの頭部に1本ずつ真紅の手斧が突き刺さっている。

   そんな中、見たことの無いモンスターが1体こちらに向かってきた。
        さすがにアクドも危険を感じ、腰を上げる。


         『アクドさん、座ってていいですよ。』
           『俺達で片付けますから。』

  そういってギルダーツは異形のモンスターへ向かって間合いをつめる。

       ゾゾゾゾ・・ゾッ・・ゾゾゾ・・・・ゾゾゾ
       ギルダーツの歩く後に無数の影が見え始める。

ズル     ズル        ズル   ズル    ズル
     ズル  ズル         ズル    ズル ズル

    その影の中から、合計20人程度のシーフが姿を現し始める。
    そんな異常な光景にモンスターも足を止めてしまっている。

『ギルダーツの不気味な笑みと共にシーフたちの姿が再び影へと消える。』
そして・・・影からは何本もの手斧が飛び出してモンスターを襲いだした。

     『まったく・・・頼りになりすぎる後輩達だよ。』
         アクドはそういって煙草をふかす。



一方、モンスターの軍勢の中に突っ込んで戦っているラーディとレルドは互いに背を向けてモンスターと戦っていた。

         ラーディの首筋を剣が掠めた。

       『・・・っとぉ、あぶねぇなコラ!!』
  ラーディはモンスターに対して文句をいいながら斬撃を浴びせる。

      『おぃレルド、お前いま何体倒したよ?』
       あくまでも戦闘を楽しんでいるようだ。

     しかし、それに対してレルドからの返事は無い。
       彼の中では何かか息づき始めていた。

       ラーディはふとレルドのほうを見た。
            左手を負傷している。
        『おぃ、レルド・・・大丈夫か!?』
      『一度戦線から退け!治療受けて来いよ。』

   しかし、そんなラーディの声はレルドに届いてはいなかった。
 次第にモンスターの波に飲まれ、2人はお互いの姿を確認できなくなった。

  ドクンっ    ドクン   ドクン      ドクンっ
     ドクン     ドクンッ   ドクン     ドクン

             心音が早くなる。
        レルドの集中は極限まで達していた。
 左手を負傷しているがそれが心地良い感覚となって彼の心を歓喜させる。

         (力を解放しろ・・・解き放て。)
           頭のなかでそんな声がした。
  (奪え・・殺せ・・・・嘆きを・・絶望を・・・恐怖を与えろ。)
       (受け入れろ・・・死を・・痛みを・・・)

             『うるせぇ・・・』
     頭の中から聞こえる声を必死で振り払おうとする。

     (叫べ・・憎め・・・怨め・・絶対的な力を望め!!!)

     しかし、声は徐々に大きくなり、彼の意識を飲み込んだ。

         『・・・クク・・・・・ククククククッ』
レルドの瞳は真紅に染まり、表情はいつもの彼ではなく死神のような笑みを浮かべていた。
          『ヤット・・やっと出てこれたゼ。』
     『・・いい感じだ、憎しみが心を支配してやがる。』

              ブゥゥゥゥゥン
        彼の槍の先端に湾曲した光の刃が現れる。
     しかし、この前とは違い、禍々しい真紅の光を放っている。
           『しっかり見ておけよ!?』
      『俺が・・力の使い方ってやつを教えてやるよ!!』
そういってレルドは・・・いや、レルドの形をした死神は再びモンスターを薙ぎ倒し始めた。それも、人ではありえない程の力で。



                ~end~


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